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3アイドル

誠が眠い目を擦りながらキッチンに座ると、テレビでは芸能ニュースが流れていた。


十五歳の少女の歌が、ヒットしているのだ、という。


ツカサが消えても芸能界は動くんだな、とぼんやりパンを齧っていると映画の主演に、やはり十五の少年が抜擢された、という。


CMで話題のモデルが男が女か、話題なのだという。


支度を整え自宅を出ると、霧峰静香と落ち合う。

新聞部が何の朝練をするのか誠は知らないが、いつものルーティーンだった。


「KIIL♡の歌、聞いた?」


静香の問に、


「今朝、テレビでちょっと」


誠は幽霊たちに、手も握れない、と言われたのが頭から離れない。


手を握る!


それは、しかし、誠にとっては強敵との戦いよりも肝が冷える一歩だった。


「とっても良いのよ」


静香がヘッドホンの片方を誠の耳に刺した。


聞き慣れない音楽だ。

独特のメロディーと耳慣れない歌詞が飛び込んでくる。


「なんか凄いね。

同い年なんだよね」


静香はふと誠を見て、


「誠君って、綺麗な二重だよね」


顔の手入れは真子がしていて、今、絶賛、誠をバッチリ二重にする、作戦を展開中なのだ。

これには小百合も加わっているので、誠に拒否権は全く無かった。


ツルチンばらすぞ、とまで脅されており、誠は芯から小百合に恐れをなしていた。


「あ、これは違うんだ……!」


慌てた誠に、すっ、と真子がでてきて、


「アイプチを入れたんだ、ほら、分かる?」


とアッサリ静香にバラした。


だが、静香はかえって盛り上がり、


「あ、ホントだ。

凄く良いよ!」


誠は、事の成り行きに呆然としていた。


女の子って、こういうの喜ぶのか?




朝のトレーニングは基礎練中心で、終わった誠はシャワーを浴びるが、最近はすぐに真子が出てきて、顔を作る。


颯太や偽警官にも、あまり裸の時に出てくるな、と言えなくなっている。


プライバシーも保てないのだが、あれが欲しい、これが良い、と各自の趣味を語るようになっていた。

誠は、強くならねば、と心に誓った。


「あ、いいね誠。

やる気になってるじゃん」


平気でシャワールームの扉を開けるのはカブトだ。


「もう、睫毛とか付けたら」


真子に体を乗っ取られながら、誠は、


「絶対嫌!」


と言い返した。





その頃、渡辺龍はまたしても長安に呼び出され、駅前の喫茶店で、


「え、スナップムービー?

そんなの出回ってんのかよ?」


渡辺龍や長安の学生時代は、まだ特撮の残酷映画などが本物という触れ込みで宣伝されたりしていたが、今やインターネットの時代であり、探せばリアルな写真ぐらいは出てくる。


この時代に本物のスナップムービーなどありうるのだろうか?


「結構需要はあるらしいぜ。

主にアジア、ヨーロッパ辺りで作られるようだ。

この闇取引ルートは、ネット通販で行われるようだ」


家族持ちの長安には難しい、という事か、と渡辺は思うが。


「これを喜んでコレクションしてるのが美形俳優のライトらしいんだよ」


ツカサの次の長安の標的が、このライトのようだった。


「また忍び込むのかよ」


ツカサは内調で正体が既に分かっていたから潜入もしたが、さすがに渡辺も、


「犯罪はごめんだぜ」


と、早めに釘を刺しておいた。


「だがな」


と、長安は声を潜め、


「ライトの事務所は、名前は違うが、ツカサの事務所と社長が同じなんだ」


つまりラオスマフィアって訳か。


としても、もう少し情報がなければ危ない橋も渡れない。


しかしこの事務所にはまともな奴はいないのだろうか?





「誠、オーディションよ」


不意に美鳥がやってくると、エレキギターを手渡した。


真自身は触ったこともないものだ。

だが、誠には幽霊がいた。


裕次はアマチュアバンドのギタリストだった。

ふん、とばかりに、軽く弾きこなした。


「中々やるわね」


美鳥も感心した。


「それで、何のオーディションなんですか?」


「歌手のkiil♡のボディガードよ、嬉しいでしょ」


「いや、名前は聞いたことあるけど顔も知りませんよ。

何故、影繰りがボディガードなんてするんですか?」


「彼女がツカサの後輩で、ツカサの死後、急に売れたからよ」


不意にシリアスな話になった。


「相手はマフィアですよね?

僕の顔ぐらい知ってますよね?」


「だから潜入捜査なのよ。

変装は一から教えるから任せなさい!」


こんなハイテンションな美鳥を見るのは初めてだった。





誠はまるまる眉毛を剃られてしまい、髪もチャラくセットされた。

カラーコンタクトを入れられ、ピアスを付けた。


少し唇を薄くすると、チャラめのイケメン高校生に変身していた。


「えー、これで学校行くんですか?」


「馬鹿ね。

学校でバレるじゃない。

違う高校に転入するわよ。

芸能科よ、芸能科」





その日の内に誠は、芸能科のある高校に転入した。


と、言っても、あまりテレビも見ない誠には、知ってる顔は無い。

ただアサミやハルは、あれはテレビCMに出ていた子役、とか、アイドルグループの一員、とか全員の名前やプロフィールを教えてくれた。


そして授業時間なのに誠は別室に向かい、ギターを持たされた。


部屋にはオールバックのおじさんやkiil♡もいた。


譜面を渡され、裕次は読めなかったが、真子はピアノを習っていたため、誠は初見で演奏してみせた。


「なかなかいいね」


とオールバック。


「ルックスもいいわ」


とは、入り口に立っていた女性。


kiil♡も、


「うん、気に入ったよ」


初めて見るkiil♡は、ユニセックスな、少年のような女の子だった。


しばらくは事務的な話があり、kiil♡は今まで配信でファンを掴んだこと、これからテレビに出るに当たって、kiil♡と並んで違和感のない、ユニセックスな少年ギタリストを探していたことが話される。


それから誠とkiil♡は、ヒットしている曲を何度か合わせ、合格すると、衣装を作った。


なんと、今夜のテレビに出るのだという。


そして誠は、kiil♡と共にテレビ曲に向かった。

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