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15新たな力

潜入を諦め、誠は寺に戻った。


お風呂は温泉なのでいつでも入れるし、後は水を前にして瞑想をして、寝るだけだ。




誠はまたしても水の上に立っていた。


周りはぼんやりとした暗闇で、水分りの神がいた。


「よし、なかなかの進み具合だ。

お前が裸で滝に打たれているのもいいのだろう」


「え、そんなの関係あるんですか?」


流石に誠も驚いた。


「皮膚、肛門、尿道、鼻、耳、口、あらゆる穴が塞がっていなければ、それだけ水分りの神が入りやすくなるのじゃ」


「へぇ~」


なんとなく、これから常に裸でやれ、と言われているようで抵抗も感じる。


「さすれば、体から汗のように蒸気を昇らせるイメージをせよ」


汗をかくイメージ?


よく判らなかったが、とにかくイキんでみた。


「もっと口からも出すのじゃ」


誠の全身から白い霧のようなものが噴き出してきた。


「これは?」


「この霧に包まれたならば、相手を思うまま操り、相手の心も手に取るように判るだろう」


誠は、そのまま爆睡していた。





翌朝。


誠は丹田に入ってから、修行着に着替え、さっさと朝の勤行に行った。


「今日は剣の修行をする」


疾風の言葉に、誠は驚く。


「え、剣ですか?」


「剣もまた仏門に通じている。

日本最古の剣術は鹿島神宮、香取神宮から発している。

剣は、神の道に通じているのだ」


誠は剣には全く疎いが、鹿島神宮、香取神宮には、それぞれ古流の剣術があるのだという。


誠は武道場に場所を移し、竹刀で形を教わる。

剣を受ける形や、剣を持った受け身などもあり、形を教わってから、ゆっくりめの打ち合いなどをして動きを覚える。


ひとしきり形を覚えたら素振りだ。


上段下段など素振りをしてから、剣舞というものを覚える。


足さばき体さばきなどを含め、体に覚え込ませるのだという。


剣舞を何度も覚えている内に昼となった。


汗を流してから滝に打たれて、勤行の後瞑想、そして昼メシになった。


昼食後、再び素振りから剣舞を行い、さらに。


「次は木刀で同じように剣舞をしてもらう」


木刀は、ズシリと重かった。


「腕が下がってるぞ」


「もっと素早く」


何十回と剣舞を繰り返し、やがて、


「まあ形にはなってきた」


疾風に言われ。


「次は真剣で行う。

下手をしたら鞘から出すだけで指を落とすから注意するように」


一日でここまで詰め込むのか? とは思うが、一週間である程度形にしようと思えば仕方なかった。


真剣は更に重く、そしてデリケートだった。

刃先を鞘に当てたりすれば、欠ける恐れもある。

誠は注意深く剣を振った。


「もっと早く」


「もっと正確に」


「足が躍っているぞ」


何十回と繰り返し、今日はここまで、と言われた時には夕日が差していた。


汗を流し、滝に打たれる。


もはや、裸で普通に体を拭いていた。


それから勤行と瞑想。

夕食。

そして勤行と瞑想を繰り返し、

布団の上で、コップの水を前に座禅をする。


今日は、水分り神は誠の体に水の手で触り、


「うむ。

だいぶ力は入ってきた」


「入る、ですか?」


「そうじゃ。

お主の体に水が入るのじゃ。

水分りの水が体を巡る。

それがお前を強くする」


あまり意味は分からない。

誠の医学知識からすれば、体内水分量は水死体でもない限り、変わらないはずだ」


「今日はお前に剣を授ける」


腰骨に手を当てて、真剣を抜く動作をすると、確かに手にズシリと真剣の重みが伝わった。


サラリと抜くと、見事な剣が現れた。


翌朝。


誠は暗い内に目を覚ました。


なんとなく、今、蓬莱山へ行くべきだ、と思ったのだ。


ジャージを着て、星明かりの蓬莱山に向かう。

例の水の噴き出す洞窟に来たが、カッパはいなかった。


誠は水の中に入る。


丹田を通り抜けた体になっているせいか、水中でも呼吸が出来た。

と、言うよりは水から酸素を直接体に入れているようだ。


水中を進んでいくと、洞窟は広くなり、水は洞窟の中央を流れる川になった。


不思議な洞窟だ。


透明な草かキノコのようなものが、地面一面に生えている。


壁面と天井には、光る苔のようなものが少しムラを作りながらも奥まで光っていて、先はどんどん広くなっていくように感じる。


空を飛んで先に進む。


木が生えていた。

枝が大きく横に広がった木だ。

何か大きな実がたくさん付いている。


それが、逆さになったペナンガランと気が付き、誠は慌てて引き返した。


ペナンガランが集団で襲ってきたが、丹田を通った体のため、全く攻撃は通らない。


触れる感触も無かった。


(おい誠!

ヘタレなのは知ってるけど、痛くも痒くも無いのに、なぜ逃げる?)


颯太が聞いた。


「奴らは、どこか根っこで繋がっている気がする。

ペナンガランが気がついたら、皆、気がつく)


誠は水に潜り、外に出た。


まだ奥は広そうだった。

たぶん、まだまだ色々なものがいそうだった。


水中で、カッパが現れた。


溺れさそうとするが、誠には触れられない。

逆に誠が軽く殴ると、カッパは大げさなぐらいに吹き飛んだ。


(うんこ穴って凄げーんだな!)


裕次に、うんこ穴じゃない!


と、誠は否定するが、裕次や颯太は面白がっているだけなので、大喜びだった。


強くなっているのはいいが、どうもなり方が格好悪すぎた。


誠は、白い霧も使って、カッパの心を覗く。


「あの穴の奥には何があるんだ?」


「冥界があり、生命の樹がある」


話だけ聞いても、あまり意味は分からない。


もっと聞く時間があればよかったが、カッパはものすごい数になってきたので、誠は上空に逃げ、音速で去った。




「今日も、まずは剣舞だ」


勤行と座禅の後、誠は真剣で剣舞を行う。


踊りというか、剣道の摺り足で、しっかりと剣を振り、一通りの剣の動き、受ける動き、受け身などが織り込まれており、速く動くと実戦さながらに激しい。


三時間ミッチリと剣を振り、汗を流して、滝行を行う。


と、唐突に滝が止まった。


「え、水分り神?」


「お前の体には、影に馴染んでいない箇所がある。

それは、理を外れてお前が影を獲得したためだ。

お前の中に水を入れ、それらを調整する」


へ、と思う内に誠の肉体の、穴という穴から水が入り始め、誠は混乱する。


時間が止まっていなければ溺れた、と思われただろうが、時間は止まっているため、誠は滝の中でもがき、浮き上がり、失神した。


ふと気がつくと、誠は普通に滝の中で般若心経を唱えていた。


目が調整された。


今までは顕微鏡のように拡大は出来ても、遠くは見えなかったが、接写レンズが望遠としても使えるように、遠くも見えるようになった。


再生能力が上がり、影のオーラが強化された。


今までより自由に素早く、男と女に変われるようになった。


細胞レベルで、誠は自由に肉体をコントロール出来るようになった。


つまり真子が無理にアイプチをしなくても、二重になり、Uと誠に、一瞬で変わることも出来るようになった。


幽霊に体を預けなくとも常人離れした運動神経を持つようになった。


白い霧と影の手は融合し、幽霊とのやりとりも脳の機能に一元化された。


「ま、今はこんなところであろうよ」


言うと、滝は流れ出し、水分り神は消えた。


(なんか、誠、凄くなったな)


頭の中に颯太がいた。


(うん、体がジンジン熱い感じなんだ)


誠はスッキリ目覚めたような覚醒感を覚えていた。


(俺等、新しい身体を試してくるよ)


裕次は、影の体ではなく、裕次そのもののように森に飛んだ。


他の幽霊も、かなりのパワーアップがあったようで、山のあちこちに飛び回った。


そして、それは誠の頭にダイレクトに見えていた。


偽警官が誠をエロく見ているのさえ、分かった。


まずいな、変な趣味を共有しちゃ……。


しばらくは、誠や幽霊は新しい能力に振り回されそうだった。



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