第2話 知らない世界
2話目です。
「知らない天井だ」
「目が覚めたんだ!」
ベッドで横たわる俺の手を握っていた葉月は泣きながら喜んでいた。周りを見るとベッドがいくつかあり、病院みたいなところにいるらしい。
「葉月ここは一体……!」
「無理に起きあがろうとしちゃダメだよ。傷口が開いちゃうかもだよ」
葉月が心配そうに言ってくる。
「お、目が覚めたらしいな。一応治癒魔法はかけてあるが、安静にしておくほうがいい」
そう言って部屋に入ってきたのは、長い赤の髪で背は高くも小さくもない、綺麗な青の瞳をやどし、鎧をまとった騎士のような少女だった。俺は異世界の言葉が分かることに気づく。
「この人が渡を助けてくれたんだよ!あの時魔法?のようなもので私たちを助けてくれたんだよ!」
「え、魔法があるんですか!?」
俺は少し興奮した。現実世界では魔法があるなどあり得ないことだからだ。
「え、あぁ、私は『エターナル』という種類の魔法で君たちを助けたんだ」
終始興奮と焦りが入り混じる気持ちの俺とは反対に葉月は異様に落ち着いていた。おそらく、エターナル?や治癒魔法というのを生で見たからだろう。
「とりあえず、自己紹介をする。多分知らなさそうだからな。私の名前はララ アスタ。ここステラ国の騎士団団長を勤めている剣士だ」
騎士、剣士!そんなの初めて聞いた単語だ!
「俺の名前は時野 渡(これ以外言えることがない。異世界から来ました〜なんて絶対に言えないな)」
「私の名前は笠野 葉月(うわーなんて言えばいいんだ!何も紹介できるものがないよ!)」
おそらく、俺と葉月は同じことを思っているのだろう。前を見るとララさんは何か不思議そうな顔をしていた。
「なんだ、ララ アスタさんや」
「ララでいいぞ。あと、あまり聞き慣れのない名前だな。ステラでそのような名前聞いたことがない。それに、その服も見たことがないな」
俺たちは制服のまま転生してきたのだ。おいまて、もし、ここで転生してきたことがバレると厄介なことになる!だからここは一回はぐらかそう。
「いやぁー俺たちの地域ではあるんだけどなぁー?あはは」
はぐらかした?のかはわからないが、ララは急に目つきが変わり鋭い目でこちらを見つめてくる。
「一つ君たちに質問してもいいか?なぜ、君たちはあそこで武器を持たず番神と戦っていたんだ?」
番神?番神ってまさかあの俺を殺そうとしてきたやつのことか?
「番神って一体なんなんだ?急に攻撃してきて死ぬかと思ったぞ。いや、死にかけたな」
そういうと、ララは驚いた表情をしていた。
「番神を知らないのか!?子供でも知ってる話だぞ!」
「ごめん、本当に俺知らないんだ。だから教えてくれないか?なぜ、突然攻撃してきたのかやあの遺跡について!」
あれは600年前、この世界は魔王が支配していた。魔王は強力で誰も歯が立たなかった。そんな時、神は一人の勇者に『星剣』という魔王を討伐できるほど強大な力を持った1つの剣を授けた。星剣をもって魔王を討伐した勇者はこの剣が使われないようにと、剣を7等分して各地に剣を封印した。その7等分された剣を守るために勇者は遺跡を作り魔術を持った番神を配置した。封印ぎわに勇者は「来る日までこの剣使うべからず」と言い残した。
「その遺跡の一つが君たちが立ち寄った遺跡ということだよ」
「じゃあ俺たちはその『番神』というのに殺されかけたのか。番神が使う魔術って魔法と何が違うんだ?」
「魔族である番神は7つの属性を持った魔術を使う。炎、水、土、風、雷、時、想、どれも我々人間には使えるものではない。魔法は人間が魔術を参考に作り出したものである。魔術と魔法の大きな違いは『使える者』だ」
続きを聞こうとした時、葉月がララに問いかける。
「でも、魔王は討伐されたんでしょ。ならなんであなたは遺跡に来たの?」
黙り込むララ。何か険しい顔をしている
「状況が......変わったんだ……」
「状況が変わった?それは一体どういう……」
まさか……
「魔王が復活したんだ」
「「………!」」
魔王が復活したのか!ならあの剣を使ってまた倒せばいいのでは……
「魔王が復活したから我々は早急にあの剣を回収する必要があるのだ」
「どうやったらその剣を回収することができるんだ?」
ララ曰く、番神に認められないと星剣は使えないようだ。認められる方法などそこから先はまだわかっていない。
「番神はそれぞれ違う魔術を使う。君たちが倒されかけた番神は7つのうちの『想』という想像したものを作り出せる魔術を使っていた」
「その番神はどうやったら倒せるの!?」
葉月は少し怖がった口調で言う。
「それは……」
ララが話そうとした時、ドアが勢いよく開いた。
「大変です!王都が魔王率いる魔族の軍団に襲撃されています!」
そう言って入ってきたのは、ララと同じような鎧を着て懐には剣を備えた屈強な男だった。
「何!?それは本当か?今すぐに編成を組み、王都へ加勢に行く!」
「わかりました!」
ララは焦った表情でこちらを見る。
「すまない、急用ができた。我々は王都は向かわなければならなくなった。君たちはまだここにいておきなさい。横に置いてある袋はお金だ。好きなように使ってくれて構わない」
そう言って颯爽と部屋を出ていくララ。それを見て葉月は心配そうな目を向けていた。
「渡、ララさん大丈夫かな?」
「大丈夫だろ。あの番神から俺たちを救ってくれた人だぞ。そうすぐにやられはしないと思うが」
「そうだといいんだけど……。まだ私たちララさんに恩返しできてないし……」
怯えている葉月を見てそっと俺は手を握る。
「大丈夫だ。信じてみようぜ」
そう言うと、葉月は少し明るい表情になった。
「ところで、葉月さんや。俺ここから出られる方法?みたいなのを思いついたんだが……」
「その方法ってなんなの?」
葉月の方に指をさして話す。
「そう、その方法とは!この世界の魔王を倒す!」
「根拠は?」
「ゲームとかでやってきた経験だ」
「……は?」
葉月は少し呆れ顔で俺を見てくる。
「でも、その説を信じるくらいしかなさそうね」
俺も驚くほどあっさり信じてしまった。
「あれ、そんな時は『そんはわけないじゃない!』とか言いそうだけど」
「この世界に来た以上何が起きても驚かないし、それしか考えられる方法がないならそれを信じるわ」
葉月は強気にそう言った。
(なんでこんなに冷静なんだよ)
俺はそう思った。
「もし、魔王を倒したら出られるという説が本当なら魔王を倒さないといけないわね」
「あぁ、そのためにも星剣は必要だ。星剣は全部で7つある。それを回収しなければ魔王は倒せないだろうな」
「でも、その星剣を回収するには番神に認められないといけないよね」
番神、俺が殺されかけたやつだ。俺は怖かった。また殺されるんじゃないかと思うと。でも、、、
「そうだ。そのためにも俺たちは番神に認められないといけない。だから、番神の元へ行き認められるようなやつになって見せる。7つの剣を回収しよう!そして、魔王を倒すんだ!」
少し心配そうな目をしてた葉月だったが安心したのか笑っていた。俺たちの異世界魔王討伐は幕を開けた。
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