第15話 水の番神
久しぶりです。最近出していなくてすいませんでした。15話はだいぶ濃くなっているので乞うご期待。
「またお前か……。あの時てっきり死んだのかと思ってたぜ」
「残念だけど、あなたの思い通りにはならなかったようね」
俺の視界には風に吹かれてなびく黒い布が見える。そして、俺の目の前にいるのは、あの時森で助けた番神だろう。
「あなたが、助けてくれたの人なのね?ありがとうっ!」
番神は後ろを振り返って俺に会心の笑顔を見せて礼を言う。その笑顔は曇りがなく澄み切っていた。
「でも、お前まだ頭の傷が……」
「大丈夫だよ!応急処置だけど、戦えるほどには回復したから」
番神は自信を持っていう。俺はその言葉を信じてみることにした。
「おい、そろそろいいか?俺は早くお前と再戦したいんだよ!」
「あぁ、そうだね。あなた……お前をぶっ倒すっ!」
番神がそう言った途端に、リキッド中の水がごおぉぉぉと音を立ててるのが聞こえた。そして、番神の目をみると瞳が赤くなっていた。
「おぉ!いきなりフルパワーかよ!いいぜ、嫌いじゃない。俺もフルパワーを出すぞ!」
ダリスもフルパワーを出して、気迫が高まっていくのを直に感じる。ダリスの真上には吸収した闇が漂っていて、やがてダリスめがけてぶつかる。ダリスと闇がぶつかると同時に爆風が襲う。
「待たせたなぁ。またこの姿でお前と戦えるとはな!さぁ始めようか!」
「ーー行く」
俺の目の前でダリスと番神が空気を切り裂きながら激しく衝突する。ダリスの星剣と番神のトライデントが残像を残しながら戦う。俺は戦闘している2人を目で追うのが精一杯だった。
「『デストロイアクアスティール』!!」
先に強襲を仕掛けたのは番神の方だった。番神の腕からは激しい水流が伸びていた。
「ふっ!なんだそれ!そんなもんこれで切ってやる!!『アクアスターライザー』!!」
ダリスが番神の水流を切ろうとした途端、虚空の空に剣戟が鳴り響いた。
星剣の先を見ると、先程まで流れていた水流は硬い氷に変わっていたのだ。
「な、なんだよこれ!俺は確かにお前の技を切ったはず……。なのにどうして氷になっているんだ!」
ダリスは驚きを隠さずにいた。
「『デストロイアイスカバー』……。お前をここで殺る……!」
俺はこの戦いをただ見ているだけではいけないと思った。殺された人々が報われない……。だから、これをチャンスだと感じ、俺はダリスのところへ向かおうとした時……。
「キャァァァァ!」
背後から女子の断末魔が聞こえた。俺は背後を見るとまたもや地獄絵図を見ることとなった。さっきの断末魔は葉月だとわかった。葉月とサヤラの周りには大勢の魔族が襲ってきていた。少数のギルダーが魔族と戦闘しているが、数の前には歯が立たない。
俺は番神とダリスの戦いに加わるのを諦めて、葉月、サヤラの元へと向かった。
「ーー!もうダメか……終わったわ……」
「ーー大丈夫だ!」
俺は葉月とサヤラに手を出そうとしている魔族を間一髪のところで倒した。
「葉月とサヤラも無事か!?」
「う、うん!2人とも無事です……。ただ、まだ負傷者が大勢いて……」
「ーーわかった。なら俺が時間を稼ぐから2人はみんなと協力して負傷者を応急処置するんだ!」
「わかったわ!やれるだけやるわ!」
「了解!あと、急で、すまないが、サヤラ手を出してくれないか?」
「……え?」
俺は出したサヤラの手に触れてサヤラの能力をコピーした。
(久しぶりに感じた……。この感じはやっぱり慣れないな)
俺はサヤラの持っている防御系の魔法を使い時間を稼ぐ作戦に出た。
☆★☆
「あぁ、俺のせいだ……。俺があの時みんなを……。俺がみんなを殺したんだ!」
サヤラと葉月たちが応急処置している隅でカイは頭を抱えてうずくまっていた。カイの目の前ではカイについて行ったギルダーたちが応急処置を受けている。その様子を見てカイは絶望してしまった。
「俺が死ねばよかった……。俺が俺が俺が!!!」
「そんなに頭をかくと髪が痛みますよ」
カイの隣には魔力を使い果たして休んでいたデルンが駆け寄った。デルンはカイに優しく微笑む。
「誰だよ……お前!俺を責めるつもりなんか!?責めるんなら責めろよ!」
「……」
「ーーなんで、なんで何にも言わへんのや!お前は俺を……」
カイはデルンの胸ぐらを掴んで必死に問いただす。それでもデルンは優しく接する。
「紹介が遅れましたが、私はデルンと申します。
私は別にあなたを責めるつもりで来たのではありませんよ。ただ、目の前が暗闇で閉ざされているあなたを助けたいと思っただけです」
「なんで、わざわざお前は俺を助けようとするねん!俺はお前に何もしてへん……助ける義理なんてないはずや!」
デルンは少し口を開けてそっと言う。
「似ていたんですよ」
「似ていた……?」
カイはデルンの胸ぐらから手を離し、地面に膝をつき、再度座り込む。デルンは静かに、カイの隣に座る。
「私も昔絶望したことがあって、自分を強く攻めたのですよ。あの時もっと自分に力があればってすごく思いました」
「でも、お前はどうやってそれを乗り越えたんだ……?」
デルンはカイの方に顔を向け、朗らかな笑顔で話す。
「あの人に私は助けられたんですよ。私が倒されそうになった時も助けてくれた……」
デルンが指を指す方向をカイは見ると目を見開いた。
デルンは少しして腕を下ろした。
「お前はあいつに助けられたのか……。俺がこうしている間にもあいつはみんなを守るために必死に戦っている。俺もあの時みたいなのは見たくない!」
カイは頬の傷を見た後立ち上がり、下げていた顔を上げて意を決したような面持ちで前へ進む。
「デルンって言ったか。ありがとうな。俺はお前に大切なものを教えてもらった。俺が忘れていたことを思い出せた。行ってくるわ、俺。みんなを守るために」
後ろを振り向くとデルンは壁に持たれて眠っていた。
カイはデルンを見ると少し笑って魔族とギルダーの交戦地帯へと走って行った。
「クソ!だめだ、キリがない!倒しても倒しても溢れてくる……」
俺は前の魔族を倒そうとした瞬間、剣をもつ手の力が抜け、バランスを崩してしまった。
(しまった!傷がまだ影響しているのか……。こんなところで終わってしまうのか……)
俺は魔族の目の前に倒れてしまい、魔族にやられそうになってしまう。
「はあぁぁぁぁぁ!」
俺が死を覚悟して目を閉じた。でもしばらくしても身体に痛みが走らなかった。俺は恐る恐る目を開けると目の前には金髪の男が鉄剣を持って魔族の攻撃を防いでいた。
「お前!なんで!」
「困っていたらお互い様やろ!俺にだって守りたいもんがあるんや!」
俺は頰の傷を見て目の前の男がカイだとわかった。カイは勇ましい顔で魔族と戦っていた。俺はそんなカイの姿を見てすぐに立ち上がった。
「俺も戦うよ。いや、戦わないといけない。お前の希望と同じだからな」
「そうか……。ならお前もさっさと立ち上がって戦うんや!みんなを守るために!」
「あぁ!いくぞ!『プロテクトスターバリア』!!」
剣の先から緑の光線が周りへ広がり広場全体を覆った。サヤラの防御を使ってできた技だが、想像以上に魔力を使ってしまった。
俺は星剣を地に突き刺した。俺は目の前で戦っているカイやギルダーたちを前に地に跪いてしまった。
「くそ、ここまでか……」
そう思った時横から足音がした。誰かと思い横を向くと、デルンが歩いてきていた。デルンは凛とした目をしていた。
「なんでデルンがここにいるんだ?」
「渡、じっとしていてください」
デルンは俺の質問に答えず、淡々と言った。
そして次の瞬間
「『スパークル』!!」
デルンは俺に向かって強化魔術であるスパークルを放った。そして、デルンはすっと倒れた。倒れたデルンの顔をみるとやり切ったような顔で笑っていた。
俺はデルンがなんのために俺にスパークルをかけたのかをすぐに理解し、俺は再び立ち上がった。
「デルンありがとう……」
俺はデルンを安全なところまで避難させてから、その辺に落ちていた鉄剣をもって前線へ復帰した。
☆★☆
「はあぁぁぁぁ!」
「どりゃぁぁぁぁ!」
番神とダリスはいまだに戦っていた。ただ、互いに魔力が消耗していてフルパワーで戦うのも厳しくなっていた。また、二人とも身体の至る所に怪我を負っていた。
「はぁはぁ、なかなかやるじゃねぇかよ、番神さんよぉ!でも、そろそろ決着をつけないといけないな」
番神の目に灯っていた赤色の瞳は消えつつあった。番神は魔力を激しく消耗し、今にも落ちそうであった。
「まだやれる、まだ……『デストロイアクアブレード』!!」
「これがフルパワーでの最後の攻撃になるな……なら!「『ダークネスフルバースト』!!」
互いの血が空気に流されていき、最初のように風切り音をたてながら衝突する。二人は互いに攻撃を当て、すれ違ったところで止まった。
「ーーぐはっ!」
どうやら、ダリスが番神に与えたダメージの方が大きかったらしく、番神は腹を抱えてダリスを睨んだ。
「この勝負俺の勝ちらしいな!じゃあな、番神、そして永遠に!」
「……!」
ダリスが斧を番神めがけて振り下ろそうとした瞬間、
「『アクアスターストライク』!!」
下の方から鋭い水の攻撃がダリスを襲う。ダリスは咄嗟の出来事に番神から距離をとった。
「『テレポート』!」
そして、俺はバランスを崩したダリスの背後に回り、星剣を背中に刺した。
「お、お前は!なんでこんなところに……」
ダリスはそのまま下に落ち、水中に沈んだ。
「な、なんとか間に合った。番神大丈夫だったか……」
俺が番神の方を向くとそこには番神はいなかった。俺が番神を目で探し始めた途端、急に背中に何か刺されたような感覚がした。そして下を向くと俺の腹に銀色の先の尖ったものが背中から貫通しているのが見えた。俺が腹を見て少しすると、何かを吸い取られる感覚が全身を襲った。だんだん視界が暗くなっていく……。色が失われていく。
(なんだ、この感覚は……)
「ふふふ……」
女性のような甲高い笑い声が聞こえた次の瞬間、俺は何が起きたかわからずに、意識を失ってしまった。
お読みいただきありがとうございます。またもや同じ展開!主人公がどうなっていくのか、考えながらみても面白いかも。




