第14話 再び
今回はまた新しい展開になっていきます。水の都にきてからどうなっていくのか楽しみながら読んでいただけると幸いです。
俺たちは霧の中倒れていた番神を拾い、宿のベッドに寝かせていた。番神は特に頭の傷が酷かったらしい。葉月が治癒魔法をかけたおかげで怪我していた部分の傷は塞がっていた。水色の髪の上にはアホ毛がピンと立っていた。少女(番神)の服はボロボロで穴だらけになっていた。
「この子番神って聞いたけど本当なの?」
「はい。この子は水属性の番神でしょう。水色の髪が特徴的でしたのでわかりました」
「なんであの森の中で倒れていたんだ?」
「わからないですね。本人に聞くしかないかと」
俺がベッドで寝ている番神の顔を見ていると、急に瞼が開き、ベッドから飛び起きた。俺は突然のことでしりもちをついてしまった。飛び起きた番神は片手にトライデントを持ち、赤い瞳でこちらを威嚇している。
「お前たちは誰だ!ここは一体どこなんだ!」
「おい、落ち着け!俺たちはお前に何も害を与えるつもりはない!」
番神の声は震えていて怯えているようだった。番神はトライデントを持っている手に力を入れる。
「そうだよ!まだ怪我は完治してないし、傷が広がってしまうよ!」
「うるさい!」
慌てる番神は俺の方にトライデントを持って襲いかかってきた。俺が顔を手で覆ったとき、勢いよく飛びかかってきた番神はパタリと倒れた。俺は倒れた番神のところへ行き様子を見る。
「デルン、これ大丈夫なのか?相当疲れているのか倒れたけど……」
デルンは倒れた番神の手に触れなにやら考えているようだった。少しして、デルンが口を開く。
「大丈夫です。軽い気絶ですね。そのうち目を覚ますでしょう」
気絶かとホッとした瞬間、外が人の声で騒がしくなってきた。外では鐘がカンカンと激しく鳴っていた。葉月が急いで黄昏の空が見える窓の方へ行く。
「ーー!な、なにこれ……」
葉月は窓を開けて、外の光景を見た瞬間絶句していた。俺たちはすぐに葉月がいる窓の方へ向かった。
下の方を見ると人々が走って逃げていた。走っている人々の顔をみると沈んだ表情だった。
俺たちもすぐに行こうと思ったとき、外からドタドタと階段を走って上がってくるような音が聞こえた。俺がドアノブに手をかけた瞬間、外からドアが勢いよく開いた。
「お客さん!今すぐに逃げてください!」
それは、ここの宿の主人だった。主人は走ってきたせいか、ハアハアと息を切らしていた。
「一体何があったんですか!?」
俺が主人に問いかけると主人は暗い表情で話す。
「また来たんだよ……。あいつが……七魔族が!」
俺たちは主人の発言に衝撃を受ける。
なぜ今ここに七魔族がいるのか……。なんのために来たのか。今、主人は『また』と言ったが複数回きているのか?街に出た時に建物の窓が閉まっていたのはそれが理由なのか。
「主人さん、今『また』と言いましたが、七魔族が複数回襲来しているのですか?」
「あぁ、先月から高頻度できているよ。いつも、街に現れては『星剣をよこせ!』って言ってるよ。僕にはその星剣がどこにあるのかわからないけどね」
七魔族が襲来している理由は星剣を奪うため……。まさか!この子がボロボロに倒れていたのは七魔族と戦ったからなのか?
俺はこの番神が倒れていた理由を推測した。まだ、番神に話を聞いてみないと真相はわからないけど、それまでには七魔族を追い返す。
ドオォォォン!
けたたましい轟音とともに爆風が襲い、部屋の窓ガラスが割れた。
「今のは一体なんなの!?」
「サヤラっち窓から離れて!」
ドオォォォン!
さっきと同じような音と爆風が聞こえる。二度の爆風により、宿が揺れた。葉月は窓付近にいたが、サヤラの呼びかけによって爆風を喰らわなくて済んだ。
「お客さん!もう逃げないと手遅れになります!はやく避難所へ!」
「主人さん、このベッドにいる少女を避難所まで運んであげてください。俺たちはその襲来している七魔族と戦ってきます」
「無茶です!いくらお客さんが強かろうと、相手は七魔族……!無理ですよ!」
「大丈夫です。俺たち、七魔族を倒しているので。よしみんな行くぞっ!」
俺は主人と番神を宿において急いでその七魔族がいる場所へ向かった。主人はポカンとした表情で、立っていた。
俺たちはリキッドの中心地にある役場の方に向かった。役場に着くと、そこには大勢の人々がいた。その人々は全員武装していた。おそらく、ギルドだろう。
「ギルドみなさん、今回もご集まりいただきありがとうございます。本日、また七魔族率いる魔族たちがリキッドに襲来したということで、これより緊急クエストを行いたいと思います。魔族の討伐数により報酬がかわりますので頑張ってください!軍の増援が来るまで魔族を引き止めてください!よろしくお願いします!」
台の上から俺たちが観光案内所で教えてくれた女性がギルダーに向かって必死に話している。ギルドがたくさんいるのは、この非常事態に緊急クエストが行われるからだろう。軍の増援が来るまで耐えてくれということか。
「渡、私たちもこのクエスト受けてみようよ。報酬結構いいかもしれないよ!」
「みんなもこのクエスト受けても大丈夫か?」
全員が首を縦に振り満場一致で決まった。ギルドを組んでからクエストを受けたことがなかったため、俺は少しワクワクしていた。
遠くの東の空が闇に包まれるように暗くなってくる。夜が迫っている。夜になると魔族は活発になる。一番討伐するのが難しい時間帯に七魔族も襲来したものだ。
カンカンカンカン!
役場から鐘がなり誰かが大声で言う。
「魔族があっちの方向からきているぞっ!!」
俺はどこからきているかわからなかった。
「どこから来ているんだ!?」
「渡あっち!空が暗くなっている方!」
葉月が指さす方は目を向けると俺は驚きで心臓が激しく動悸するのを感じた。あまりにも数が多すぎる。王都で戦った時よりも多いように見えた。
「は……!?多すぎるだろ!」
「こんな数討伐できるのか!?」
「早く軍の増援来てよ!」
ここに集まったギルダーもその桁違いの数に不安がっていた。役場前は不安の空気に包まれた。そんなとき一人の男が台の上に上がった。
「ワイの名はカイや。一つ申したいことがある。みんななんでそんな暗い顔してるんや!ワイたちはなんのためにここに集まったんや?このリキッドを守るためやろ!こんな数に怯えてたらなんもできひんで!みんなで力を合わせて討伐するんや」
見ると、カイの頬には特徴的な傷がついていた。カイは台上から集まっているギルダーに向かって励ましの言葉をかける。この重い空気を打破するために自分から行動した。俺はそんな彼を少し尊敬した。
「力を合わせるって……。そんなことしてもあの数じゃ無理だろ!俺たちでは軍の増援が来るまで耐えれるかわからないんだぞ……」
そのカイの言葉に対して一人が反論する。その者から広がるように反論の声が聞こえていく。やっぱりこの空気を変えるなら無理なのではないか?そう思った時
「そんなん……やってみぃひんとわからんやろ!なんで、できるかもしれないことを不可能っていうんや!そんなことはな、やってから言えよ!これはな、できるできないじゃない、できるんだよ!無理っていう暗示をかけるな!できると思うことが大切なんや!だから、ここにいるみんなもそう思ってどうか、どうか本当に頼みます」
カイはギルダーに深く頭を下げた。その姿は、本当に素晴らしいものだった。その男の意思が伝わったのか、ギルダー内でポジティブな声が聞こえてくるようになった。
「そうだな、もうやるしかないよな!」
「俺たちがこの街を守ってやる!」
俺も不安だったが、カイの言葉を聞いてポジティブになれた。
「みんな、聞いたか……?あんな桁違いの魔族の数初めて見るが、カイの演説を聞いて俺、少し勇気を持てたよ」
「私もです。あの男性の方の言葉に勇気をもらったのは皆さんも同じはずです!戦いましょう!この街もう王都のようなことにはしたくない……」
サヤラは真剣な眼差しで俺を見つめる。俺も真剣な眼差しでサヤラを見る。
「デルンも大丈夫か?もし不安なら行かなくても……」
「はぁ?何をいっているんですか!?私はあなたの配下です。あなたが行くなら私も着いていきますよ。あと、私はこれっぽっちも不安だと思ったことはないです」
デルンは強がった態度を俺に示す。でも、それくらいがデルンにはちょうどいいのかもしれない。
「みんなの不安も取れたようやし、いざ出陣やーー!」
男の辺りに響くような大声でギルダーが一斉に魔族の方へ向かっていく。
「俺たちの目標は七魔族の討伐だ。もしかしたら、あの番神と関係があるかもしれない」
「そうだね。とりあえず、七魔族の場所がわかるまでは魔族の討伐をしておくよ」
「みんな、くれぐれも気をつけて。死なないでくれ」
俺がそう言うとみんな曇りなく笑い、その中には勇ましい気持ちが見え隠れしていた。
俺たちはギルダーの後を追う形で戦場に向かった。駆けつけるとすでにギルダーと魔族の激しい戦いが始まっていた。俺たちもすぐに加勢して戦った。基本的に二人一組で戦うようにした。俺はデルンとで、サヤラは葉月と組んだ。
魔族は結構手強かった。魔族は色々な武器を持っているためその武器の特徴を知って攻撃しないと効かない。また、数があまりにも多いため、一つの敵に集中しすぎると別の魔族に背後を取られやすい。
「デルン、これじゃキリがないな」
「そうですね。それなら、あれを使いましょう」
「あれ?」
「渡、少し時間を稼いでください。なるべく、魔族が私の周辺に来ないように」
「わ、わかった」
俺は少し戸惑いながらもデルンの言う通りにする。
デルンが今から何をするのかわからないが、何か策があるのだろう。
「サヤラ、葉月!なるべく、デルンに魔族を近寄らせないようにしてくれ!」
「何か策でもあるのね。了解よ!」
デルンの周りには青い魔術陣が出来上がっていき、少しするとそれは巨大になっていた。
「お待たせしました!準備ができたのでいきます!
ーー『リアライズ』!!」
デルンが声高く叫ぶと、戦場には複数の青い魔術陣が出現した。そして次の瞬間、その魔術陣が光を発して爆発した。黒煙が立ちこめる中、俺はデルンの元へ向かった。
「デルン!大丈夫なのか?」
「はい。でも、先程の技で魔力を結構消費してしまい、もう私は戦えないです」
「わかった。ありがとな、デルン」
俺はデルンに礼を言ってからまた戦場に戻る。立ち込めていた黒煙が晴れてくると、ギルダーたちは目を白黒させていた。
「おい、さっきの魔法陣みたいなのはなんだ?」
「魔族が消えた……?」
ギルダーは急に目の前で戦っていた魔族が消え、驚いていた。ギルダーは戸惑いつつもみんなで拳をあげて喜んでいた。
「まぁええわ!奥の奴らも倒しに行くで!」
「そうはさせん!」
カイがギルダーたちを先導する形で歩こうとすると、どこからか荒々しい声が聞こえた。そして、上から黒く闇のような得体の知れないものが猛スピードでギルダーに突っ込む。
ギルダーたちに突っ込むとそれは黒い光を発しながら爆発した。突っ込んだ場所からは恐怖による何かが裂けるような叫びが聞こえてくる。断末魔やもがき苦しむ者の声も広がるように聞こえる。喜びから一変して、底知れぬ絶望と悲しみがギルダーたちを襲う。
「みんな大丈夫なのか!?」
「えぇ、なんとかみんな無事そうよ。でも、先に行ったギルダーたちが……」
俺は何が起こったのかもわからなかった。
「渡!私とサヤラっちはあっちの方で苦しんでいる人たちを救護しに行ってくるから!」
葉月はそういってサヤラを連れて被害地に向かって行った。救護しに行くサヤラと葉月の背中をみて、俺も何か行動しないといけないと思った。
「結構やれたか?今のは爽快だったなーはっはっは!」
俺は頭上で被害地を見て高笑いしているやつを見つけた。俺は見つけた瞬間に、考えるよりも先に身体が動いていた。
「……お前は誰だ?俺に文句でも言いにきたのか?」
「俺の名前は渡、時野渡だ。俺はお前に文句を言いにきた」
「お前まさか、星剣使いか?お前の名前聞いたことあるんだよ。魔王様からだったかな?まぁいい、なら『同じ剣』で語り合おうか。あー、名乗り忘れていたが、俺の名前は闇の七魔族ダリスだ」
ダリスが腰にかけている鞘から剣を抜くと俺はその剣をみて目を見開いた。それは星剣だったのだ。
「お前その剣まさか!」
「ああそうさ、これは水の番神が持っていた星剣だ。奪ってやったのさ」
俺はこの瞬間これまで起こってきた出来事の辻褄が合うことに気づく。
「お前だったのか!あのとき、水の番神をボロボロにしたのは!」
「あーそうさ!あいつは結構手強かったけど、面白いやつだったぜ」
俺はさっき起こったことも含めて、怒りが込み上げてくるのを感じた。
「俺は今ここでお前を倒さないといけないようだ。はあぁぁぁー!」
「最初から全力か!面白い!」
俺は真正面からダリスにぶつかるような勢いで向かった。
「『ビルドスターストライク』!!」
「こっちの星剣も同じの使えるんだよ!『アクアスターストリーム』!!」
お互いの攻撃が闇夜の空を照らすような光を醸し出しながらぶつかる。攻撃がぶつかったあと、ダリスの方を見るともうそこにはダリスはいなかった。
「どこだ!?」
「ここだよ!!はあぁぁ!」
背後に回り込んだダリスから重い一撃を背中に食らう。攻撃を受けた場所は熱く感じ、みると血が出ていた。俺はこの攻撃を受け全身に力が入らなくなり、動けなくなってしまう。
(だめだ……。動けないのか……俺はここで死ぬのか)
「もう終わりか!残念だが、俺にはむかったことは褒めてやるよ!じゃあなっ!」
俺は覚悟を決め目を閉じた。
「『アクアストリーム』!!」
俺はその声が聞こえたと同時に誰かに抱えられていることに気づいた。目を開けると、横には助けた番神がいた。番神の頭には包帯が巻かれていて、包帯の上にピンと立っているアホ毛が夜風になびいていた。
「ーー!君は!大丈夫なのか!?」
「大丈夫だよ!君たちには助けられたらしいしね!これからはこの水の番神がお相手だ!」
番神の目がだんだん充血していくのが見えた。まるで、俺が襲われた時のように。
お読みいただきありがとうございます!展開を考えるのに苦労しましたが、面白いと思っていただけると嬉しいです!これからもよろしくお願いします。




