第13話 水の都
今回の話は第二章最初の話です。物語の舞台は次の場所へと移り、新たに幕が開ける……。
アステルダム国を出て先の見えない一本道を歩いていると葉月から質問があった。
「てか、聞き忘れてたんだけど、私たち今どこに向かってるの?」
俺は次の目的地を葉月とサヤラに言い忘れていた。俺は足を止めて葉月の方へ振り向く。
「よくぞ聞いてくれた。デルン言ってやれ」
「わかりました。私たちが現在向かっているのは、水の都リキッドです」
そう、俺たちが次に集める星剣の属性は『水』である。そのために、水の都と言われているリキッドに向かっている。
「水属性の星剣を集めるのが次の目標だ。遺跡がどこにあるのかはわからないが、まぁ現地に行ったらわかるだろう」
その番神がいる遺跡がどこにあるかまではわからなかった。
「その水の都リキッドってどんな街なの?まさか、ヴェネツィアみたいな水路が張り巡らされていて船が移動手段みたいな所なのかしら!?」
「そのヴェネツィア?って言うところは知りませんが、私は一回そこに行ったことがありますよ。リキッドははっちゃんが言った通り街の至る所に水路が張り巡らされていて綺麗ですよ!」
俺はその話よりもサヤラが葉月のことを「はっちゃん」とあだ名で呼んでいることに少し驚いた。
サヤラの話を聞いて葉月は飛び跳ねてウキウキしているようだった。サヤラはヴェネツィアみたいな美しい街が好きなようだ。
「ちなみに、リキッドってここからどれくらいかかるのかしら?」
「大体、一日程かかりますね」
「一日もかかるの。早く行きたいわー。そうだ!デルン、テレポートしてよ!」
俺はその言葉を聞いてデルンが話し出す前に話し始めた。
「葉月わかってないなぁ〜。こういうのはな、歩いて行くのがいいんだよ」
「え〜いいじゃーん。渡のケチ!」
葉月はぷくっと頬を膨らませて怒っているようだった。俺はそんな葉月を横目見ながら歩き始めた。
☆★☆
「その星剣をよこすんだ!」
「ダメだと言っているだろ!お前は星剣保持者にふさわしくない七魔族だろ!」
双方とも身体中に怪我を負っており、至る所から出血していた。血が風のようになびき残像を赤くする。
やがて、空からは雨が降ってきてあたりには霧が発生した。
「くそ!この中ではあいつがどこにいるのかわからない!」
「なによそ見してんだよっ!」
「……!?」
霧を利用した攻撃で頭に致命傷を負ってしまった。そいつの周りには漆黒の闇が漂っていた。斧を肩に担ぎ、近づいてくる。
「死ねーー!!」
「ーーーーまだだ」
「!!?」
そいつが斧を勢いよく振り下ろした瞬間、どこからきたかわからない爆風にそいつは押し除けられた。
「まだ足掻くのか……。さっさとくたばれっ!」
「……」
雨粒を切る斧をトライデントの先端で食い止める。持っていたトライデントからは赤色の炎のようなものが出ていた。
「ほぉ、まだそんな力が残っていたのか……。でも俺の方がお前よりも力が残っている。お前が覚醒したなら俺も全開で行かせてもらう……!はぁぁぁぁぁー!」
そいつの周りに漂っていた漆黒の闇が吸収され、天高く放たれた。その後、天から舞い降りるようにそいつに闇が降り注いだ。その瞬間漆黒の爆風が襲った。
「待たせたな。これが俺の全力、『ダークネスフルパッケージ』だ」
「……『デストロイアクアストリーム』」
「こっちだって!『ダークネスフルライザー』!!」
フルパワーの攻撃は雨粒を跳ね除けるかのような威力を持ち、その二つがぶつかり合い白い光が双方を襲った。
☆★☆
俺たちは一日後無事に水の都リキッドに到着することができた。
「すごい!ここが水の都リキッドなのね!まるでヴェネツィアみたい」
「久しぶりにきましたけど、相変わらずここは綺麗な場所ですね!」
葉月とサヤラはリキッドの街を見て興奮している様子だった。街の中央には大きな川がありそこから派生する感じで水路が伸びていた。水路を見ると船で移動する商人や観光客で賑わっていた。水路の水面には空の雲が反射して眩しく写っている。
「よぉしこれから番神の遺跡調査と行こうか……」
「え〜、そんなことよりせっかくこんな綺麗な街にきたんだから観光くらいしようよ!サヤラっちもしたいよね!?ね!?」
「う、うん」
半ば無理やりサヤラを合意させた感じはしたが……。
俺はデルンの方を見る。デルンは笑顔で縦に頷きOKサインを送る。俺はそれを見て葉月の主張を認めることにした。
「確かに、葉月の言っていることもわからんでもないな。よし、なら今日は観光するとしようか。そんなに急いでいるわけでもないしな!」
俺が観光の許可を出すと葉月は飛び跳ねて喜んだ。ギルドメンバーの中でリキッドの街を知っているのはサヤラくらいしかいない。
「サヤラってリキッドの街にきたことがあると言っていたが、この街の観光とかってできるのか?」
「いえ、小さい頃に来たのであまり覚えていないですね。私がきた時よりもだいぶ変わってると思いますけどね」
唯一知ってそうなサヤラに聞いてみたが本人も覚えていないそう。俺はこの世界のことを何も知らないため、この街の有名なものが全くわからない。
「くそー。リキッドの街を堪能できないのか……」
「あ!大丈夫ですよ!街の中央の方に行ったら役場があるのでそこで聞けば有名なものとかわかるかもしれないです」
俺たちはさっそく街の中央にある役場を目指して歩き出した。葉月は先頭をルンルンと軽快に歩く。よっぽど楽しみなんだろう。
歩いて行く道中に気付いたのだが、どの建物も窓が開いていなかった。違和感を感じながらも俺たちは役場に向かい歩く。
「あ!あれじゃない?役場」
葉月が指を指した方向を見てみると立派な白色と水色がうまく混ざり合った建物が見えてきた。役場の前には水の流れを再現したモニュメントが立てられていた。
建物の中に入ってみると天井が高く三階まで筒抜け構造になっていた。開放感ある空間を進んでいくと観光案内所と書かれた旗が見えてきた。俺たちが受付カウンターに着くと奥から若い女性が向かってきた。
「すいません、私たちここに来るのが初めてで何か観光できる有名なものとかありますか?」
「たくさんありますよ。おすすめなのが、この街一番の水門ですね!あそこは水が流れる音が直に感じられるのでいいですよ!」
役場の女性は元気よく語る。俺は話を聞いていてその水門に行ってみることにした。
「ちなみに、食べ物で有名なものってありますかね?」
葉月は女性に観光名所だけでなく食べ物の情報までも聞いていた。
「あー!それなら、この近くにすごく美味しいスイーツを売っているお店がありますよ!」
「え〜!!本当ですか!?他にはありますか!?」
「他にはですね〜……」
その後の会話で二人は盛り上がっていた。どちらも食べ物が好きなのだろう。俺は二人が熱烈に話している間、役場の椅子で待っていた。
話が終わると満足げな顔をして葉月が俺たちのほうに向かってくる。
「俺は水門を見に行きたい。ちょっと興味がある」
「私はリキッドの食べ物巡りをしたいです!サヤラっちもどう!?」
「いいよ」
サヤラは笑顔で返す。葉月はサヤラの返事に喜んでいた。
「デルンはどうするんだ?」
「私は渡に着いていきます。主人なので」
デルンの顔はニチャァとしていた。
話し合いの結果、俺とデルンで水門へ。葉月とサヤラはスイーツ巡りをすることになった。約束として日没ごろに役場前集合ということにした。
「渡とデルンまたあとでね~!」
葉月が後ろを向きながら俺とデルンの方へ手を振る。俺とデルンも手を振って返した。手を振り終えると葉月たちはダッシュでスイーツ店へ向かった。
「俺たちはのんびり行こうなー。今までで色々あったからな。一回ここで息抜きでもしよう」
「そうですね!私も疲れたのでこの観光で息抜きします!」
歩いているとデルンは俺の方に少し肩を寄せてきた。そして上目遣いで笑ってきた。デルンって可愛いんだ。改めて思った。
水門に着くと俺はその規模の大きさから度肝を抜かれた。水門には大量な水が貯水されてあり、太陽が反射されている水面はもう絶景だった。
「三時になりました。これより、水門を開き放水を行います」
という、アナウンスがあり、辺りには人が増えた。リキッドは観光の名所と言うことがわかった。
放水が始まると下の方から聞こえるどぉぉんという音が臨場感を高めてくれる。
「こんなところに落ちたら俺死んじゃうかもな」
「大丈夫です!落ちても私が助けます!」
冗談で言った発言に対しデルンはしっかりとした返事をしてきた。デルンのこう言う部分もいいと思った。
放水が終わると空は赤くなっていて日没が近づいていた。赤くなった空が貯水池の水面に反射して美しい情景を醸し出している。
「放水も終わったことだし、そろそろ役場に戻ろうか」
その瞬間、後ろから爆発音とともに爆風が俺たちを襲った。何事かと思い、後ろを振り返るとそこには黒い雲があり、黒い煙が立ち込めているのが見えた。俺とデルンは顔を見合わせこくりと頷く。俺たちは急いでその場所へ向かった。
黒い煙が立ち込めている場所に向かうと、あたりが霧に覆われていて何が起こったのかわからなかった。霧の中を進んでいくと、目の前に血だらけの黒い服を着た少女が倒れていた。倒れている少女を見ると、デルンが驚いた反応をする。
「この子番神です……」
「!!?」
なぜここに番神が倒れているんだ?一体何があったのか……。俺たちは理解が追いつかなかった。
お読みいただきありがとうございます。次の街を描くのが大変でしたけど、色々楽しかったです。次の話も楽しみに待っていてください!




