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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

銃弾の呪い。目的は達せられた。

作者: 影津

 やつの名前はコードネーム、シナ。


 由来は「死なない」から来ているらしい。その名の通り腕利きの暗殺者だ。


 ボスからの命令で一般人から社会の重要なポジションの人間まで俺は幅広く暗殺を手掛ける。きっかけはささいなことだった。シナとターゲットがたまたまかぶったのだ。


 別の組織に属するシナに先を越されてからというもの、敵対心の強い俺は同業者であるシナを執拗に追った。勝負はいつもあいつが有利で、俺は相手にもされず嘲笑われた上、取り逃がしていた。


 決まってボスには叱られ、本来の任務の目的やターゲットのことを忘れてシナに没頭する俺は、仲間からも迫害されている。


 だが、三日前の不意打ち事件で終止符が打たれた。 盛大な宴会。今晩のボスのおごりには感謝しているが、俺はあの日以来、一夜で老いた気分だ。待ち伏せし、放った弾は間違いなく暗殺として見れば間違っていない。だが、あの時の興奮が呼び覚まされると胸が締めつけられる。


ペットぐらいの価値しかない俺は、窓辺から降りて庭で寝る。こんなホームレスみたいな俺がライバル組織のシナと張り合っていたのだから笑い者にされて当然だ。


 だが、それ以上に厄介なのは、不吉な影が俺を捕まえて離さないことだ。


 今夜も眠らせてくれないのか? 孤独な風が耳をくすぐり、不快感は消せない。俺は再び三日前の暗殺時の詳細を思い返す。




 スコープを覗いた先に、銃弾が命中してシナが膝を折るのを見る。あの細い体が人混みに沈んでいく様は素晴らしい。俺は白昼堂々と町の中でやり遂げたのだ。


 混乱する人々が円になって死体から散り散りに離れる。俺は惚れ惚れしながらシナの顔にピントを合わせた。虚ろに光った瞳の上にまぶたが降りてくる。俺は口の端を歪めずにはいられない。いいぞ!


 だが、俺の口が裂けかけて、そこで固まった。冷たい汗が背中を撫でる。

 死に際に映ったシナの顔は自分を見据え、嘲笑っていた。シナに胸倉をつかまれたような錯覚が息づかいを狂わせる。俺は飛び起きた。


 

 うっかり眠れたではないか。最悪な夢だが。


 まだ朝日も差さぬ夜更けだ。宴会が終わったようで、漂う静けさが不安を注ぐ。シナは死んだ。不意打ちとも知らずに。そう思い込んでいたが、実際は違っていたとしたら?


 シナは俺の存在に気づいていたのかもしれない。なら俺は一生卑怯者だ。シナに魅力さえ感じ、フェアにやり合うのが暗黙のルールだったのに。


 ますます俺は、いたたまれなくなって腕を見下ろす。二本の傷がある。


 三日前からつけ始めた傷だ。そこに今日もナイフが制裁を下す。血が飛び散っても、ナイフを刺し続けた。激しい痛みに呻くがやめられない。


 これは呪いに違いない。俺の心の痛みを消すには、腕の痛みでごまかすしかないのだ。こんな夜は今日で終わりにしたい。傷はこれからも増え続けるだろうと、分かっている。いや、それではもう、もたないかもしれない。



 俺は、胸の痛みを取り除くために、心臓にナイフを突き刺す。やっと楽になれる……。









「ようシナ。どうだった狩りは?」

 大柄な黒服の男が細身の男に札束を投げつける。


「成功してると分かってるから金を渡すんだろ?」

「で、どうやって殺したんだ? 例のストーカー野郎は?」 頬を緩めて、シナという男は金を数えながら答えた。


「昨日、自殺したらしい。俺が死んだと誤解してね。演技だったのに」

 手を止めて、シナは防弾ジョッキを見せる。




「勘違いもよしてほしいよな。あいつじゃ俺のライバルは務まらない」




連載ものの小説はファンタジーを多く書いてますので、是非そちらもよろしけれお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 成る程、そういう落ちでしたか。 いいですね、こういう話、好きです。 主人公はシナに夢中だったんでしょうね。 でも当人からは「ストーカー呼ばわり」、報われない話だ(苦笑)
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