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VS.怪人レッド・ドラゴン 1


「オレ様が空にいる限り、祭りをドローンで無断空撮させないドラ。通販のドローン宅配事業もすべて無期限に休業。仕事を機械からオレ様の奴隷となった人間へと戻して、雇用を復活させるドラよ!」


 誰かのドローンを破壊した空飛ぶトンボ型怪人が大学から飛び去っていく。距離感を考えればかなりの移動速度だ。赤いTの字がどんどん小さくなって、雲に隠れた。

 怪人が消えると同時に、机を叩くように手を打ちつけて立ち上がったのは五十鈴いすず響子である。まだ、定食は残っているのにどこに向かうつもりだ。


「警戒ドローンが落とされるなんて!」

「待って、五十鈴さん。まだかき混ぜていた納豆が残っているから」

「私の代わりに食べておいてっ!」


 食べておいてって言われても、人が食べていた納豆を食うのは家族でも難度が高くなかろうか。

 まあ、五十鈴が席を立ったのは有難い。俺も現れた怪人を追いたかったので渡りに船だ。

 戦いが待っているので最低限の栄養補給をしてから、俺も食堂を後にする。目指す場所など、春都のいる研究室しかない。


「春都っ、怪人が現れたぞ!」

「二郎! ……納豆臭いな、お前」

「し、失礼なっ。人を変態みたいに。俺も同じ定食だっただけだ」

「どうして納豆からそこまで発想が飛ぶ?」


 飛んでいるのは怪人の方である。

 これまで現れた怪人はすべて歩行していたから油断していた。まさか空を飛べる怪人が登場するとは予想外だ。せっかく第二ヒーローの装備を強化したというのに、このままだと一切役立たないぞ。


「だからってスルーするのはなしだ」

「空を飛ぶ相手にどう挑む、二郎?」

「おびき寄せるしかないだろうな。工学部なら、どこかの研究室にドローンの一機や二機あるだろう。買い取って怪人の餌にする」


 怪人がドローンを噛み砕いていた光景を思い出して、ドローンを飛ばせばおびき寄せられるのではないかと考えた。トンボの捕獲方法に糸を付けた小石を空に投げるものがある。トンボ型怪人に対しても可能性はあるだろう。 

 三部屋隣の研究室に、丁度、ドローン実験――ドローンを頭頂部につけて屋上から空を飛ぶもの。実験結果、被験者は両足骨折――をしていた学生から一機を接収する。


「トンボの飛行性能はスズメバチにも勝る。空にいる限り無敵に近い。だから、このドローンを使って怪人を地上へと落とすのが戦いの最低条件だ」


 研究室に舞い戻る。ドローンへと改造をほどこすためだ。飛ばして怪人が噛みついたら、怪人を地面に落下させるようなトラップを仕掛けたい。


「王水とかシュールストレミングの缶はないのか、春都?」

「そんな劇物、普通の研究室にはない。冷蔵庫にデスソースならあるが」


 仕方がないのでデスソースで妥協した。ビンのままドローンの腹にテープで巻きつけて固定する。即席にしては上出来だろう。

 改造したドローンをたずさえて、怪人の追跡を開始する。


「おっと、忘れ物」


 研究室の隅においてあるキャスター付きの旅行カバンを持参しなければ。

 中身は第二ヒーロー変身セットである。どこまで使うかは分からないが、作成した強化パーツをフルセットで持っていく。

 これで忘れ物はなくなった。春都と二人、横並びで研究室から出動していく。


「……そういえば、春都は車を持っているのか?」

「まだ免許も取っていない。電車で追うぞ」


 そんな俺達の背中を心配そうに眺めていたのは、室内に残った眼鏡先輩であった。





 都心上空を飛行している怪人レッド・ドラゴン。二対の翅で飛び回り、広大な大都会をたった一体で支配している。セスナよりも小さくて、戦闘ヘリよりも運動性能が高い。地上から目で追うだけでも困難である。

 空において、レッド・ドラゴンをはばむものは何もない。


「高層ビルが邪魔でまっすぐ跳べないドラ! まったくっ」


 しかし、空とは常に挑戦されるもの。ライト兄弟が登場する以前にも多くの無謀者が挑んだ場所。

 空飛ぶ怪人へと、ブースト音が急速に近づいている。空を自由にと形容するには強引が過ぎるが、推進力によって無理やり浮かび上がって怪人の高度へとせまっている。

 その者の正体は、黄色いパワードスーツのヒーロー。

 スケーリーフットが怪人を強襲した。


「くらえ、ガジェットパンチ!」

「きたか、スケーリーフット。そんな直線的な攻撃が、複眼のオレ様に通じると思うドラ!」


 翅を細かく動かしてスライド移動して、レッド・ドラゴンは鉄拳を回避する。と、同時に尾を振り下ろしてスケーリーフットの背中へとカウンターを叩き込む。衝撃が、外殻のみならず内側に対しても多く伝った。


「くっ。うっ」

「遅いドラ。遅いドラ!」


 やはり、跳躍の延長上の動きしかできない陸戦型のスケーリーフットでは分が悪い。加速力を失って落下を開始したヒーローへと、レッド・ドラゴンの執拗な追撃が加わり防戦一方になっている。

 貝の殻に似た小さな欠片が舞った。黄色い色合いからして、スケーリーフットの外殻だろう。怪人の打撃力がそれだけ強いという証拠だ。


「これが完成された新人類だドラ? なさけない限りだ」

「黙れッ、勝手に改造したお前達が勝手に言うな!」

「どうして我等をうらむ? それだけの力は、望んでも得られない旧人類は多いドラ」

「それが勝手だというッ」


 スケーリーフットから有線式ガントレッドが射出された。

 悪足掻(あが)きの一撃もレッド・ドラゴンは悠然とした飛行で避ける。無敵を誇るヒーローも空ではこの怪人に勝てない。


「空でドラゴンに敵う者はいないドラ」

「いや、お前はドラゴンではなくトンボ……」

「大都会の空をオレ様は支配する。祭りのたびに空からドローンが落ちてこないように警備を行い、その費用を祭り参加者全員から徴収してやるドラっ! ヒーローは大人しく地上からオレ様を眺めているとよい!!」


 怪人レッド・ドラゴンはしたたかだ。自ら高度という優位性を捨てる事はしない。地上に落ちたスケーリーフットを放置して、遠くへと飛んでいく。

 スケーリーフットにとっては厳しい状況だった。

 ヒーローを補助する警報ドローンは怪人によって次々と排除されてしまっており、都会の警備網には大穴が開いてしまっている。怪人通報アプリに仕掛けたバックドアもあるが、一つの場所にとどまらないレッド・ドラゴンが相手だと有効性が疑問視される。

 そうこうしている間にも、もう怪人の姿は雲の向こうに消え去っている。再発見は至難だ。

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― 新着の感想 ―
[一言] トンボのくせして『ドラ』とは変な語尾ザウルスねぇ
2020/03/24 23:32 退会済み
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