VS.春都 2
男子大学生二人の弱小チームが悪の秘密結社に対抗する。そのためには何が必要となるかを考える。
「第二ヒーローの現在の装備はこれだけだ」
夕飯として味わったスーパーの弁当(二割引)を机からどかしつつ、第二ヒーローの装備を置いていく。
数は言う程に多くない。
戦闘服と催眠動画。以上。
「まずは戦闘服だが、うん、全身を包むタイプの服だ。特徴としては生地の薄さに反して耐久性が高い。ライターで炙って耐火性能があるのも確かめた」
合コンの時に戦闘員から奪い、そのまま既に数度お世話になっている。
戦闘服は色が黒い。服とグローブと靴、それとベルトがセットになっている。エヴォルン・コールの戦闘員は更に頭全体を隠す覆面を付けているが、第二ヒーローは都度、別の物で顔を隠していた。
「更に外骨格的なパワーアシスト機能まで有しているから侮れない。地味に命を救われている」
「……二郎、この戦闘服は一体何でできているんだ?」
「分からない。大学生の科学力では、この服の素材が綿で出来ているのか合成繊維で出来ているのかさえ分からなかった」
パワーアシストの動力源さえも見つかっていない。人体表面の微弱な生体電流を糧にしているのだろうか。そうだとしても電力が圧倒的に足りないはずだが。戦闘服を着ると腹の減りが早くなるといった自覚症状もない。
謎は多いものの着るだけで効果を得られるので重宝している。
「戦闘員の物をそのまま使っているから仕方ないにせよ、戦闘員と区別できないのはその内問題になると思うぞ、二郎。ヒーロー活動に参加するなら戦闘員と一目で見分けがつかないと。染色し直したらどうだ?」
「俺としては色よりも顔か」
「顔?」
「ああ、顔は絶対に隠しておきたい。だからと言って目出し帽は銀行強盗っぽくてヒーローらしさがないからアウトだ。悪を威嚇する感じなのが欲しい」
ヘルメットでは駄目なのかと春都は言ってくるが、俺は難色を示す。
「いつ怪人と遭遇するのか分からないから携帯したいが、ヘルメットは持ち運びに難がある」
「なるほど」
「欲を言えば、息苦しくなくて、格好良くて、頑丈で、臭くなくて、小さく畳めて、格好良いのが欲しい」
「強欲なこった」
春都は天井を見上げて思案するが、結論を保留にして次を促した。
「次の装備は春都の方が詳しい。怪人コピーキャットの催眠動画だ」
これのお陰でスケーリーフットから逃れる事ができた。動画を見せた相手に、猛烈なサメ映画視聴欲求を植えつける恐るべきブレインウォッシュ兵器である。
「動画を見せる事さえできれば、サメ動画がない間は対象を完全に無力化できる。これがあれば大都会征服だって――」
「二郎はヒーロー志望であって、怪人志望ではないはずだよな?」
「――よく考えたらサメ映画へ誘引するだけだからな。大都会征服なんて無理無理」
とはいえ、やはり効果が限定的なので使い所が難しいかもしれない。どうやって動画を見せるのかが一番の問題点となるだろう。
戦闘服に催眠動画。
学生が持つにしては十分驚異的な装備であるが、正直、怪人と戦える程ではなさそうだ。
「なあ、春都。この装備で本来、勝てる相手はせいぜい戦闘員が限界じゃないのか」
「戦闘員が一人だけなら、という前提条件も忘れてくれるな」
「第二ヒーローの道は険しい」
だが、俺は最初から装備で怪人を凌駕しようと思っていない。第二ヒーローには第二ヒーローにしかできない事を探せばよい。
「で、二郎。具体的に第二ヒーローは何を目標とする?」
「それは、これから考える」
「おい!」
なお、第二ヒーローを始動させる事が今日の目標だったので、第二ヒーローの目標は未定である。
築五十年の昭和臭さえも風化してしまいそうなアパートの一室で蠢く影あり。
「――こちら、怪人シッター。拠点確保に成功しましたオポ。準備を整え次第、怪人ホールベアーを倒したと思われる第二ヒーローの捜索を開始いたします」
狭い室内に多数の戦闘員を従えた新たな怪人が暗躍を開始する。




