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VS.迷いの家の夢は潰されて

 だんだんと加減を誤っていく怪人マヨイガの攻撃。倒れても倒れても立ち上がる俺に苛立いらだちが積み重なり、とうとう、限界に達する。


「第二ヒーロー。お前は素材としては貴重だマヨ。百万人に一人の逸材、金の鉱脈よりも大事で尊いものであると認めよう――」


 俺の体が限界に達するよりも、怪人マヨイガがキレる方が早かったのだ。

 怪人が虫のように感情のない目で、虫を見るかのごとく俺を見下ろす。



「――だったら、追加で百万人を収穫してしまいましょうマヨ。百万人に一人の逸材なら、もう百万人を集めれば一人ぐらいは同じぐらいの性能を有する旧人類がいるはず」



 百万に一の希少種だろうと、何度も目の前を飛び回る目障めざわりな羽虫ならば潰す。


「よって、第二ヒーローは諦めるマヨ。……死になさいッ!」


 怪人マヨイガに戦闘センスはない。体格に頼った突進と打撃が主だ。重心を前方に傾けたところを見るに、俺の殺傷方法は突進による轢き潰しに決まったらしい。

 巨大な白い体が動き出す。


 ここまでか。


 理性ではそう理解しつつも、出来る事は残っているはずだと考えて、まだ足掻あがく。

 “模倣するは猫”で抵抗を試みて、多少の時間をかせいだ。足を引きずっているので退避は間に合わない。


「無駄な事マヨ!」


 逃げるという意味では俺の足掻きは無駄であった。

 ……けれども遅滞という意味では、これ以上ない戦果を得る。背後から響く燃焼音を聞いた時には「遅い!」と文句を言ってやった。



「ガジェット・ドリルッ!!」



 掘削用ドリルを構えたスケーリーフットが、道路スレスレの高度を一直線に飛ぶ。電信柱よりも太いドリルの先端部が、怪人マヨイガのど真ん中に突き立てられた。


「貫けぇえええエェエーーーッ」

「スケーリーフット?! いまさらお前ごときが、どうして立ち上がるマヨッ!!」


 体に埋まっていくドリルの柱を、怪人マヨイガは足で掴んで抵抗する。必死の形相であり、女の上半身も駆使してドリルにあらがっている。


「死に体なら、死に体らしく倒れていればいいものをマヨ。そこの第二ヒーローといい、スケーリーフットといい、どうしてこうも立ち上がる。立ち上がれるっ?! ヒーローだからとでも言ってみろ、蒸し殺しだ!!」

「ヒーローだからではないッ。ヒーローを信じてくれる人がいるからだ!」

「更にくだらない理由マヨッ!!」


 二人の攻防は、怪人マヨイガがやや優勢だ。

 スケーリーフットも傷が深いのだろう。いつも通りの馬鹿力を発揮できていない。

 ドリルはぶつかった際の勢いを失った。回転のみでは沈み込まず、スケーリーフットの背面ブースターで無理やり押し込もうとしているものの、怪人マヨイガのパワーに押し戻されつつある。

 これが怪人マヨイガを倒す最後の機会。こう悟った俺は、スケーリーフットと並んでドリルを押すのを手伝う。


「第二ヒーローっ」

「一緒に押し込むぞ、スケーリーフット!」

「お前ごときが加勢したところで、A級怪人たる私をどうにかできると思うなマヨ!!」


 片腕を添える程度の助力しかできない俺の力を加算しても、怪人マヨイガの力を上回れない。怪人が指摘した通りである。

 では、このまま敗北してやるのかというと、そういう訳にもいかない。

 仮面の通信機能が生きている。それが勝敗を分ける。



「――先輩。mtHを俺に接続してください!!」

「…………はっ、マヨ??」



 無線通信で呼びかけた先には眼鏡先輩がいる。そして、眼鏡先輩がmtHを操作可能なのは怪人アゲハの撃破で証明済み。怪人とmtHの接続を切れるのであれば、俺とmtHを接続する事もできると踏んだ。


「ちょ、ちょっと待てマヨ。mtHの接続を第二ヒーローが使えるのは百歩(ゆず)る。だが、できる事と、していい事には決定的な差がある。mtHに捕らわれていた第二ヒーローが、mtHを、接続??」

『――いいんだね、第二ヒーロー』

「使えるものは何でも使いましょう!」


==========

 ▼第二ヒーロー(戦闘型V3)

==========

“戦闘力:18 → 61(mtH10000接続中)”

==========


 別にmtHでパワーを引き出しても繭玉の中の人間が死ぬ事はない。倫理的にもセーフである。


「エヴォルン・コールの技術をヒーローが使うなマヨッ!?」

「怪人から色々拝借はいしゃくしている俺が、mtHの使用を躊躇ためらうかよ!」


 片手に全パワーを集中してドリルを押した。スケーリーフットも最後の力を投じる。



「ウォオオオおお!!」

「はぁああァァア!!」



 均衡が揺らいだ。

 ついに俺達の力が上回り、ドリルの先端が怪人マヨイガの体内へと食い込んでいく。


「馬鹿げている。馬鹿げている馬鹿げている馬鹿げているッ。この私が、新世界を統べるべき私が、ここで終わる? 馬鹿ナァアア!?」


 怪人マヨイガの中央に大穴が開いた。向こう側の景色まで見えている。

 白く大きな翅が神経反射で広げられた。窮地から逃れるため、地上から脱出しようと羽ばたくものの、それは無理である。カイコの怪人である怪人マヨイガは飛べないのだ。

 怪人の体が内側から膨れ上がっていく。

 巨体が生体爆発を起こした後、白い煙と白い毛が街に広がっていく。雪が積もったかのごとく、街が白く染まる。



「……これが私の終わりだなんて、ははっ、あっけない」



 怪人マヨイガの女の上半身が、千切れて白い地面に転がっていた。息絶える直前なのは明らかだ。


「これでも私、人類のためにくそうとしたのだけど。それを潰したヒーローに、私以上の代案はあって?」

「エヴォルン・コールが何をしでかそうとしているのか。まずはそれを教えてからだ」

「何も分からず私を潰したなんて……。きっと、新世界ではお前達を愚物として伝えていくのでしょうね」


 国王を玉座から引きずりおろしただけで満足し、今以上に国を荒廃させた馬鹿な革命家を見る目で、怪人マヨイガは俺を見上げている。mtHの材料にされかけた俺としては自衛のために戦ったようなものなので、そこまで重い責任を押し付けられても困るのだが。



「何も知らないのなら、たった一つだけ教えてあげる。どうでもいい事だけど、私が敗れたからには、エヴォルン・コール本部が動く。最終作戦が発令される。結果……大都会で生き残るのは一パーセント未満。ヒーローの活躍のお陰で、九百万人の人間が死ぬの。あははっ!!」


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― 新着の感想 ―
[一言] スケーリーフットとの共闘は熱いですね 二人の場合どちらかが苦戦しているともう一人が出てきて戦闘を引き継いだり奇策で苦戦要因を取り除いたりするパターンが多く、なんというか野球の代打のような印象…
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