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VS.怪人マヨイガ3

 シルクの糸をき分けると、急の浮遊感。

 頭から地面を転がって見上げた先にいるのは、巨大な蛾の胴体と白い羽毛に覆われた女の上半身を有する大型怪人だ。


「くっ、完全にmtHとの接続が途切れてしまった。体が重い。頭痛もする。強制切断されたから? イライラする! どこの誰とも知らないパチモンが、よくも、私の計画を無駄に邪魔してくれたマヨ。釜茹での刑では済まされないと知れ!!」


 怪人が巨大な足を振り上げた。

 落下予想地点にいるのは、俺とよく似た姿の戦闘服だ。見覚えのある個所に傷と手縫いの修繕跡があり、俺が着ていた戦闘服だとすぐにさっする。中の人物も見当が付いた。


「潰れろマヨッ」


 怪人の足の合間を駆け抜けて、俺と類似した姿を突き飛ばす。

 落ちてきた怪人の足底が地面を叩き、近場のマンホールが三十センチぐらい浮き上がる中、俺は逆手に構えたプラスチック製フォークを一閃する。


蜻蛉切ドラゴン・スレイヤー!」

「第二ヒーローっ?! 起きたばかりで、もう動けるのかマヨ」

「俺に対しては様付けではなかったのか。怪人マヨイガ」

「大人しくmtHとなって眠り続けて、エネルギー製造機となっていればいいものをマヨ」


 夢を見る直前に目撃した怪人マヨイガと若干姿が異なるが、本人で間違いないようだ。

 足の表層を傷つけられた怪人マヨイガは半身ほど後退していく。そのわずかな間に、俺は助けた人物に状況説明を求めた。


「スプリンガー、状況を」

「第二.五ヒーローと呼んでくれ。……第二ヒーローチーム総出で敗北寸前から劣勢まで立て直したが、正直に言ってお前を起こしてからの計画はない。スケーリーフットは後ろでダウン。敵は未だ複数」

「あそこで倒れたスケーリーフットを守っている帽子の女は?」

「味方だ。間違っても攻撃してくれるなよ」


 仮面の内壁に全方位の映像を映し出して戦場全体を目視で確認する。春都の説明と合わせて大雑把おおざっぱに状況を把握した。

 夢を見ている間に色々起きたようだ。春都が前線に現れているのだから、かなり追い込まれているのは間違いない。

 だが、手遅れではない。


「第二ヒーロー。目の前の怪人マヨイガを、倒せるか?」

「相変わらず無茶を言う。……が、引き受けよう」


 俺は、もう倒れたままの人間ではない。どんな相手にも背を向ける事はない。

 怪人マヨイガに向けて、両手を構えてみせる。



「来い、怪人マヨイガ。第二ヒーローがお前の相手をしてやる!」

「一度、敗れた分際で生意気を言ったマヨ。A級怪人と戦う愚を想い知りなさいな!」


==========

 ▼第二ヒーロー(戦闘型V3)

==========

“戦闘力:18”

==========


==========

 ▼怪人マヨイガ

==========

“戦闘力:100(mtH未接続)”

==========



 体の調子は悪くない。負傷していたはずの足も痛みはなく、全力で戦える。

 だから、複数の足を振り上げて襲いかかってくる怪人マヨイガの一本目の足に対処できた。体を仰けって回避する。

 ただし……戦闘力の差はいかんともしがたく、二本目の足を肩に受けて大きく吹き飛ぶ。


「ぐふぇっ」

「……あっけないマヨ」

「ちょっと待てよ。威勢のいい事を言っておいて、どうした第二ヒーロー」


 恐ろしい打撃を受けてしまった。攻撃された方の腕はもう上がりそうにない。



「あ、安心しろ。誰も、勝てるとは一言も、言っていない」

「お前っ、どうするんだよ。どうするんだよ!?」



 慌てる春都が実に滑稽こっけいだ。同じチームであっても戦闘要員ではない春都は、まだまだ第二ヒーローの戦い方が分かっていない。

 擦り傷だらけの体で立ち上がって、怪人マヨイガへと向けて走り出す。

 怪人マヨイガは迎撃のために腕を振るってきて、衝突。クルクルと体が回転してから地面と激突した。


「うげァっ。……ゲフォ。けほ。怪人マヨイガ、お前は分かっているのか?」

「第二ヒーローが弱いのは十分に分かったマヨ」

「いいや、分かっていない……。お前は戦闘に関してはかなりの素人しろうとだな。今の一撃、当たり所がければ俺は死んでいたぞ。お前の計画にとって、それは問題ないのか?」

「は? ……あっ、マヨ??」

「この腕をみろよ。糸の切れたマリオネットみたいだろ。言っておくが、滅茶苦茶痛い。次の一撃で死んでもおかしくはない。そんな俺を、お前は攻撃できるかな? 繭玉には、死体を押し込んでも大丈夫なものなのかな?」


 言う事は言ったので、あらためて走り出す。

 怪人の足は反射で動いたものの、理性によって急制動がかかる。その隙にふところまで跳んで、プラスチック製フォークで長く垂れ下がった眉を一本、カットしてやった。


「おまっ、お前マヨォォ!」

「高い戦闘力があだとなったな、怪人マヨイガ! これからは一方的な試合だぞ」

「自分を人質にした?! それでも自称ヒーローかマヨ」


 怪人マヨイガは勘違いをしているので訂正してやる。



「俺はヒーローではなく、第二ヒーローだ。弱くて上等、負けて当然。だからこそ本物のヒーロー以上の勇気が必要なんだぞっ!」



 弱い第二ヒーローの勇気の源は、後悔だ。ただ手を握って満足した自分に対する反骨心だ。

 仇敵を倒したいだけの復讐心では、絶対に勝てない相手を前にした際にはただ負けるのみだが、今の俺は一味ひとあじ違うぞ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 百話到達おめでとうございます これからの連載も応援しています [一言] 根っこにあるのが後悔からくる反骨心でも、自分のような後悔をする人を出したくないという思いもあるところが第二ヒーローら…
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