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女子旅に出かけている間の男性陣のおでかけ(前編)

アンジュ達の『女子旅』で、スクイレル家に女性陣がいなくなり、

早速ロキとソニーが泣き始めた。


「「おねぇちゃま、いない・・・うわあぁぁん!!」」


ここは本来なら、母を恋しがって泣くのでは?と男性陣は思ったが、

よくよく考えれば、スクイレル家の大人達は、彼らを

入れ替わりで彼らを養育していたが、2年間ずっと朝から晩まで

彼らの傍にいたのは、イヴだけだと思い至った。

イヴは5才下の弟達の世話を喜んでしていたので、彼らは

愛情深い姉を母のように思っていたのかも知れない。

グランは両腕に、二人を抱き上げ、頬ずりした。


「グシュグシュ・・・あのね、とうしゃま。おねぇちゃまいないの」


「ふえぇぇぇん、とうしゃま、おねぇちゃま、どこでしゅか?」


「ロキ、ソニー。姉様は母様とマーサ達と旅に出かけたんだよ?

昨日一緒にお見送りしただろう?」


「「そうでしゅた・・・」」


グシュグシュ泣きながらも、それ以上会いたいと言わないのは、

旅立つ前に母や姉と交わした言葉を思い出したからかもしれない。

二人は彼女達に良い子で待っていると約束していたからだ。

そこへライトがやってきて、男性陣も城に泊まりに行かないかと

言い出した。


「城の子ども部屋は、玩具が一杯だし、庭園もあるから面白いぞ!

それに城にも薬草園があるから、グラン殿の仕事もそこで出来るし、

何よりも気晴らしになっていいぞ!!」


「せっかくのお言葉ですが、お城は遊びに行くところではないはずです。

そのようなお気遣いは「あっ!!やっぱり、ここにいやがりましたね、

ライト様!!」・・・」


グランの言葉が言い終わらぬうちに、ライトの侍従が部屋に入ってきた。

彼は毎度のことながら、城に行くのを嫌がるライトを引きずり出そうと、

ライトと押し問答を始める。


「嫌だ嫌だ!せっかく兄妹水入らずで過ごせる、絶好の機会なんだぞ!」


「何が兄妹ですか!グランさんはエース様よりも8才下でしょう!

親子ならわかりますが、兄弟などとあつかましいですよ!

それに何度言わせるんですか!グランさんは男性です!

いい加減妹扱いはおよし下さい!失礼でしょうが!」


「わ、わかったから襟首掴むな!」


「お城にグランさん達をお誘いしてもいいですが、ライト様は

エース様のお手伝いをよろしくお願いしますよ!エース様、

大量の書類で、溺れかけているそうですから!」


「いや、お忙しそうだし、私たちが遊びに行くのは・・・」


「ぜひ!来て下さいよ、グランさん!何、忙しいのはエース様と

ライト様にお任せして、あなた様達は、庭で散策も出来ますし、

お子様達は、エース様のお子様達と遊ばれたら、きっと

楽しいと思いますよ。何よりもあなたが城にいるだけで二人が、

キビキビと働きますから、執政官達が喜びます」


侍従の有無を言わさぬ表情に、グランはセデスに目線を送る。


「ここはお言葉に甘えるべきかと、グラン様。エチータンと

セドリーと女性達が不在ですし、我々も『男子旅』を楽しんでも

宜しいかと思います。ゴレー先生の送って下さった、

ハーブの『鎮痛剤』もグラン様に良く効いているようですし」


セデスの言葉に出てきたゴレーとは、グランが薬草医になる勉強を

セロトーニ医師の元で学ぶときに、国元に帰った兄弟弟子で、

彼は今へディック国の城の御殿医をやっていた。

彼は元々イヴのかかりつけ医だった男で、『侯爵位』を継ぐために、

国に戻る道中のある保養地で、面白い形のハーブを見つけたので、

これを調べて欲しいと種とドライフラワーをセロトーニに

送ってきた。

手紙では、保養地の男爵家にハーブの採集のことで、

屋敷を訪ねたときに、その家の男爵令嬢に、息子が

肥満をからかわれて傷つき、そのストレスでさらに

息子が太って困っているとも、書かれていた。


セロトーニの調査で、そのハーブが『鎮痛作用』があると、

わかり、グランが自身を実験台にして、その効果を

調べていた。


「そうだな、ふむ。では、ライト様の

お言葉に甘えさせてもらおうか」


「では、私は早速用意を。小一時間もあれば用意できますので、

グラン様はロキ様、ソニー様とここでお待ちください」


グラン達が城に来ると決まると、ライトは喜んだ。


「儂、先に行って、歓迎の宴の用意を!」


「ライト様!何はしゃいでいるんですか!そんなのは

我々がしますから、ライト様はエース様の補佐です!」


侍従に引きずられて行ったライト達から遅れて、

城に向かったグラン達は、そこで目の下に隈がくっきりと浮かぶ

エース王と執政官達に出迎えられた。


「一体何があったんですか?とりあえず、歓迎の宴はいらないので、

皆さん中に戻って、休まれては?」


「それが・・・」


彼らの語る内容はこうだった。

ここ2年ほどでバッファー国は、前年度の倍以上の好景気を

迎えていた。犯罪者が大量に捕獲され、子どもの死亡率も何故か

減少傾向にあったり、豊かな食料にそれらを斬新な調理法で

食す文化や、民の間で様々なお洒落な衣服などが広まったりと、

国全体が神の祝福を得たように良いことずくめだった。

するとそれらの税の徴収等の事務仕事が大量に城に回ってきたり、

バッファー国を囲む周辺諸国からの羨望を込めた問い合わせの

手紙などが押し寄せ、王と執政官達は多忙を極めて、

倒れる寸前まで追い詰められていた。

グランは彼らの現状を知ると、すばやく動いた。


「ノーイエ、アダム、リングル。ロキとソニーを頼む」


「「「はい」」」


「イレールとタイノーは応接室を開けてもらうよう、手筈を。

部屋を確保後は各部署の書類を集め、仕分けして置いておくように」


「「はい」」


「セデスは私の補佐を」


「はい、仰せのままに」


「グラン様?」


戸惑うエースに、グランは穏やかに微笑んだ。


「ライト様にもエース様にも普段からお世話になる身故、

少々お手伝いをさせていただきたい。とは言え、私は

2年前に事務次官を退職した身なので、大したことは

出来ませんが、書類仕事ならお任せを」


「「「「あ、ありがとうございます、神様!!」」」」


「嫌だなぁ、神様なんて・・・。では、応接室を

お借りしますよ」


そう言って応接室に入っていくグランは、彼らの目には

正しく神様に見えた。


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