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真夏の日の夕べ~学院生達の食事会(中編)

エイルノンが、そう言った後、トリプソンがエイルノンが

言わなかったことについての補足の説明を話し出した。


「バッファー国やトゥセェック国はバーケック国ほど、

信仰心が篤い国ではないから、神の物語の話を民に

知らせても・・・混乱を招くだけだろう?


だから両国では、この事実を知っているのは、

各国の首脳陣と、国立の学院に通う・・・国の

未来を支えるために働こうと決意して入学した、

俺やエイルノン達みたいな学院生だけなんだよ。


それで両国では、神劇を大衆劇と名を変えて、

民に広めて、皆の娯楽にしてしまい、

国中の教会で行うことにしたんだってさ。


だけど、バッファー国では大衆劇よりも先に

忍者ごっこが大流行していたから、皆、教会の

大衆劇よりも、自分達の体を鍛えることに、

楽しみを見出してしまったようで、あまり教会には

立ち寄らなくなってしまって・・・行くとしたら、

冠婚葬祭関係だけだったから、今イチ大衆劇が

広まらなかったんだってさ。


だからリン村から出たことがないイヴは大衆劇を

見たことがなかったんだよ。一年生の皆だって、

仮面の先生・・・セデス先生の試験に合格するために

スクイレル村を出るまで、大衆劇の存在を知らなかった

だろう?


大衆劇が流行らない代わりに、バッファー国は、

各国の情報を集め、いざという時の助力になるようにと、

備蓄や救助物資を大量に作ることに努めて、

いざという時のために、色々と備えているのだとも、

祖父は俺に教えてくれてたよ。


・・・ああ、皆は知らないだろうけど、俺の祖父は

イヴの母親のアンジュさんに昔、コテンパンに

されてから・・・彼女を一生の好敵手と定めて、

リン村に押しかけた先で、バッファー国の英雄

ライト様に出会って、彼を師と崇めてしまってね、

無理矢理、ライト様の押しかけ弟子になったんだ。

今は確か・・・、トゥセェック国のイミルと言う名の

将軍の元で、副官をしてると、この間、手紙をもらったよ」


一年生達はエイルノンやトリプソンの説明に、

少しだけ安堵したが、まだ不安は多く残っていた。


「「「でも、もしも、神の英雄に選ばれてしまったら、

どうしたらいいのでしょうか・・?」」」


ここにいるのは、小さな夢見る子どもではなく、

思慮深い考えが出来る・・・現実をキチンと理解

している、大人な考え方が出来る者ばかりだったので、

皆が考えることは、『英雄に選ばれたくない』という

思いだった。


英雄に選ばれる・・・ということは、どこかの国が

神の身勝手な物語のために犠牲となって、その国の

人々が不幸な目に遭っているということなのだ。

例え、自分が英雄に・・・主人公に選ばれたとしても、

喜ばしい話であるはずがない。・・・もしも、その

不幸な状況を喜ぶ者が神以外にいるとしたら、

それは自分の事しか考えないような、()()()()()

()()()だけだろう・・・。


それに英雄になってしまったら、神が起こした

不幸から、多くの人を一人で救わねばならないという

重責を抱えねばならないのだ。


一年生の平民クラスの者達は、未来のスクイレル

であり、将来はイヴの幸せを皆で守ると誓った者達

ばかりであったから、誰もが英雄になりたくないと

思ったのだ。それに・・・。


「「「もしも・・・万が一にも、イヴが英雄に

選ばれたら・・・心配でいてもたってもいられない!

それにそれに・・・もしも、ミグシスさんが英雄に

選ばれたら、その国は間違いなく終わるよ!!」」」


彼等の心の友であり、守るべき主君の姫君でもある

イヴは、心優しき女性であり、美しい女性であり、

聡明な女性でもあったが・・・、イヴは片頭痛という

持病があり、そして運動神経が・・・おっとりしていた。


一年生の心配げな声にエイルノンも頷いて言った。


「確かにイヴは片頭痛という持病があるし・・・、

お、女の子の日の不調も長い・・・らしいから、

寝込んでいることが多いって、学院長先生達も

心配していたからなぁ、英雄には向いていないよなぁ。


・・・でも、もしも英雄に選ばれてしまったら、

イヴは生真面目だから、きっと・・・すごく

頑張ってしまって、片頭痛になるに違いないな。

それに、もしも敵と戦うような状況になったら

イヴは、運動神経が鈍・・・、い、いや、イヴは

運動神経がおっとりしてるから、直ぐ捕まるよな!


そしたら・・・魔王化したミグシスが怒って・・・、

敵味方関係なく、イヴが倒れる原因となるものを

全て消し去ってしまうに違いないな、きっと!


うわっ!?ミグシスが、大地を血で染めてしまう

ような想像が頭に浮かび上がってきたぞ!

どうしたんだろう、僕は?・・・あれ?!何だ?

この妙に具体的な想像は!?ミグシスが国を滅ぼす

映像をまるで、どこかで見たような気さえ、してきたぞ!」


エイルノンが頭を抱えて、うぎゃ~!と声を上げた

横で、エルゴールがエイルノンを気遣うことなく言った。


「奇遇ですね、私も何だか、そんな気がするんですよね。

イヴさんではなく、ミグシスさんが英雄に選ばれたとしても

・・・、うん、彼は、イヴさんのことしか考えていないから、

その国は、間違いなく滅んでしまうでしょうね」


エルゴールの言葉に絶句し、顔色をさらに悪くさせた

一年生達を安心させようと、ベルベッサーが口を開いた。


「・・・多分だけどさ、大丈夫だと思うよ」


「「「何が大丈夫なんですか、ベルベッサー先輩?」」」


何を根拠に大丈夫だと言えるのか?と訝しむ

一年生達に、ベルベッサーはエルゴールに

視線を送りながら、言った。


「こんなこと言うのは、教会の関係者である

エルゴールの方が適任だとは、思うんだけどさ。

・・・結局、神様って、人間に乗り越えられない

試練は与えないって・・・、僕は思うんだよねぇ。


神様は、幸せな結末で終わる物語を好むのだから、

選ぶ英雄は、それを絶対に可能とする能力を

秘めた人間を選んでいるはずだよ。


例えば武芸に優れたライト様だからこそ、暗殺者から

逃れることが出来たわけだし、商才に長けていた

ルナティーヌ様だからこそ、自分の領地で採れる

栄養剤を元手にして、国を救ったわけだしさ!


それを考慮して言えば、私の姉弟子と彼女の夫は・・・、

こう言っちゃなんだけど、()()()()だよ。


私の姉弟子であるイヴさんは、心根も頭脳も良く

英雄としての気質は合格だけど、持病があるし、

運動神経が、まったりしてるから、体質的には

英雄には向いていないし、


彼女の夫に至っては・・・アレ、イヴさんさえ

無事なら、国がどうなっても構わないと思って

いるんじゃないかなぁ。・・。って、いうか、

やっと愛しい彼女と結婚出来たのに、英雄なんかに

選ぶなと、神様にケンカ売りそうだよね。


僕が神なら、彼だけは怒らさないようにする

だろうね・・・、アレ、冗談抜きで魔王化するしさ」


ベルベッサーの言葉に一年生達も、エイルノン達も、

そして、その場にいた他の学院生達も・・・皆が、

その脳裏に、魔王化したミグシスを想像し・・・。


『そうだよね。神様もそれほど愚かではないはずだから、

イヴとミグシスだけは、英雄に選ばないだろう』


と言う結論に達し、ひとまず胸をなで下ろした。

エルゴールは、皆が安堵しているのを見た後に、

こう言って、一年生達を励ました。


「私も、イヴさんやミグシスさんを、神は英雄には

しないと思いますが、・・・もしも二人や、ここに

いる誰かが選ばれても、私は大丈夫だと思いますよ」


「「「どうしてですか?」」」


「これまでに二度、神は英雄を選ぶために、

降臨していますが、その降臨は、周囲の者にも

はっきりとわかるものだったらしいです。


ライト様の時は、ライト様の周囲が真っ白に光り、

ルナティーヌ様の時は、教会に神の声が響いたと

記録が残っていますし、その両方共が、物語が

始まる前だったと言われています。


この二度の経験により、私達は、神が物語を

始める前には、必ず何らかの超常現象が起きる

という可能性が極めて高いということを

知っています。


私達人間は、例え自分の身に起きた出来事ではない

物事でも、言葉や文字を用いて、他者に・・・

後世の人間に、情報を伝達し、共有することが

出来る、高等な生き物です。


ですから、二度の経験を生かせばいいのです」


エルゴールは、一旦、言葉を切って、紅茶を

飲み、喉を潤わせてから、また話し始めた。

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