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真夏の日の夕べ~学院生達の食事会(前編)

これは一度、本編に入れましたが、悩んで止めたものです。

学院生達の食事会の様子です

真夏の日の夕べ・・・昼の食事会はイヴとピュア達の

入籍を祝う会も兼ねてはいたが、イヴとミグシスは、

既に4月に婚約祝いの昼食会をトゥセェック国の学院で

開いてもらっていたし、ピュアとジェレミーの馴れ初めも

学院生達は、よくよく知っていたから、それについての

目新しい話題もないことから、学院生達は、祝いの言葉を

述べた後は、本来の真夏の日の夕べの食事会らしい

食事会を始め・・・ある程度の食事を済ませた、

二組の新婚夫婦が、それとなく食事会から姿を消しても

学院生達は、それを当然のこと・・・結婚したばかりの

新婚夫婦がどこに行って、何をするのかを詮索するのは

・・・とても無粋なこととわかりきっていたので、特に

気にすることもなく、食事会を賑やかに続けていた。


~~~~~


一年生の平民クラスの者達は、学院の上級生である

エルゴールから、劇という文化が誕生した経緯(いきさつ)

ついての話を聞いていた。


「・・・観劇や劇遊びと呼ばれる娯楽が出来たのは、

今から8年前くらいだったようですよ。当時の

バーケックの女王ルナティーヌ様が、考案されて

出来たものだと、私達は一年生の夏休みの、真夏の

日の夕べの三日目の、全学院生との親睦会を兼ねた

食事会で、先輩方から話を聞きました。


確か出来た当初は、観劇は観劇とは言わずに、

神に見せるための劇という意味で()()と呼んでいた

のだそうです。


それまでは、この国はへディック国と同じように、

自然災害が起きたときや、人々の間に疫病が流行った

ときなど、神の怒りを収めたいときや、五穀豊穣を

祈願する・・・もしくは何かを神に願いたいときに

教会の神子姫が、神楽舞を舞っていたのですが、

神の託宣により、この国を救う英雄に選ばれ、この

国を救ったルナティーヌ様が再び、神の声を夢の中で

聞き、・・・それが劇という文化の誕生のきっかけと

なったそうです」


「「「へぇ~、そうなんですね!」」」


エルゴールは、先輩から聞かされたという、当時の

ルナティーヌの話を続けた。


「ルナティーヌ様が受けた夢告げによると、

この世界を創造した神には、息子達がいて、

彼等は音楽や舞といった神楽舞よりも、人の書いた

物語を好み、生きている人間に物語を

求めるのだそうです」


平民クラスのクラスメイト達は、エルゴールの話の

内容に驚いた。


「「「っ!?ええ?生きている人間に、物語をですって?」」」


「「「それって、どんな物語なんですか?」」」


後輩達の当然の疑問に、エルゴールは、まるで

口の中に苦い物を含んでしまったかのような、

渋面となって答えた。


「聞いて楽しい話ではありませんよ。

楽しいどころか、むしろ、それをやらされる、我々

人間にとっては、堪ったものでは無い話です。


・・・神は英雄が出てくる物語を好むそうです。

主人公が活躍し、最後は幸せになる結末の物語が、

大好き・・・なんだそうです。


私は、それを聞いた時、神とは・・・何と残酷な

存在なのだろうと身震いしました。

我々の世界を創造した父神は、我々に命を

与えてくれた慈悲の神ですが、彼の息子達は残念ながら

・・・そうではなかったということなのですから」


エルゴールが、そう言うと一年生達は息を飲み、

エルゴールの話を聞いていた二年生三年生達も

エルゴールと同じように渋面となっている。


ここにいる学院生達は、優秀な頭脳を持つ者ばかり

なので、


「?どうしてですか?幸せな物語を好む

神様なのでしょう?それのどこが残酷なのですか?」


などと言った、愚かな質問は出てこない。・・・もしも、

そんな愚かな質問が出たとしても、エルゴールは

優しく、こう説明してくれるだろう。


「よく考えてみて下さい。

主人公が活躍し、()()()()()()()()ということは

・・・()()()()()()()()()ということなのですよ?

主人公が活躍しなければならないほど・・・

物語の舞台となる、この現実の世界が、不幸で

なければならないということなんです。


自然災害や疫病、飢餓、悪政、内乱、戦争等々

・・・人にとっては、ありがたくない不幸で、

もがき苦しむ人々の状況を打破すべく、主人公となる

英雄が立ち上がって、努力して、数々の苦難を

乗り越えて、・・・最後に幸せになる物語は、

嘘の・・・本当ではない話だからこそ、人々は

安心して楽しめるのです。


でも、それが現実で起こったら・・・人は、

どうなると思いますか?思案するまでもないでしょう?

そんなの・・・災厄以外の何物でも無いですよ。


神の息子達は、人間のことを顧みず、自分達が、

好む物語を、現実の世界で見たいと思い、二度、

我々の住む世界に、不幸を()()()引き起こしている

です。不敬なことでしょうが、私は神の息子達を

慈悲の神とは・・・言うことが出来ません」


・・・・・・と。


楽しいはずの食事会なのに、怪談話よりも怖い話を

聞かされて、一年生達は夏だというのに身震いが

止まらなかった。


「な、なんて・・・怖い話なんだ!」


「ホントだよ、学院の七不思議よりも、どんな怪談よりも怖い!」


「そんなに心配しなくても、大丈夫だよ」


「「「生徒会長!?」」」


怯える一年生達を、安心させようとエイルノンや

トリプソン、ベルベッサーは彼等の前に、イヴの

従姉妹が作ったというハーブショコラを持って現れた。


~~~~~


このハーブショコラは、片頭痛で苦しむイヴの大好物

・・・イヴが学院生の誰にも内緒にしていた大好物が、

実はショコラだと、今朝ある者から教えられた、

イヴの従姉妹のルナーベルという女性が、イヴを

内緒で喜ばせようと作ったデザートで、これは従来の

ミントショコラに、へディック国で取れる、ある薬草を

炭火で軽く炙った後、刻んで混ぜ入れたものだった。


世間一般的に、アクの強い野菜(野草や薬草を含む)と

いうものは、一度茹でるという下処理を行うのが、

正しい手順であり、アクを抜くために、炭火で炙ると

いう方法は、どの国の料理従事者や薬草医、薬師も

知らない下処理の方法であった。


この薬草を炭火で炙るという方法は、マクサルトの

息子のレルパックスの妻の母親が、昔、偶然にも、

マクサルトの領地でしばらく暮らしていたときに、

同僚から教えてもらった、二日酔いの()()に効く

薬湯を作るときの下処理の仕方で、そこに住む領民

だけに古くから言い伝えられていた下処理の方法だった。


イヴの従姉妹は一昨日出会ったミレーナから、その

下処理の方法を習っていたので、イヴがショコラを

食べた後に頭痛にならないようにするには、ショコラと

一緒に、頭痛の薬も摂ってみるのはどうだろうかと

発案した・・・一種の頭痛予防を兼ねた食べ物だった。


イヴの従姉妹は、結婚祝いに、それを作りたいと

カロン・・・ミグシスの保護者だという男に相談を

して、彼が、それなら丁度良い協力者がいる・・・と

言って、イヴと同じ片頭痛持ちの、イヴの父親である

グランと、グランの遠い血縁者で、同じ片頭痛持ちの

ライトを食堂に連れて来て、彼等に試食をさせて、

頭痛が起きないことが判明したのは、食事会が始まる

一時間前だった。


イヴは10年以上見ることも口にすることもなかった、

大好物のショコラの登場に、これ以上はないという程、

大きく目を見開いて驚き、同じ頭痛友達のライトの

勧めの言葉に従って、ミントショコラを口にし・・・、

いくら身構えても訪れない頭痛に、ミグシスに抱きついて

泣きながら大喜びしていたのは、つい先ほどの出来事だった。


~~~~~


エイルノンはミントショコラには鎮静作用がある

ハーブが入っていると説明を聞いていたので、

これを一年生達に配りながら言った。


「だってさ、神の怒りにしろ、神の見たい物語にしろ、

結局・・・、人々に災難が起こるという事実は

何も変わらないだろう?


それに気付いたルナティーヌ様やライト様

・・・神の物語に選ばれた英雄や、神の物語の

犠牲となった国の人々は、大昔と同じように

神楽舞でも神劇でもいいから、神にそれを見せつけて、

機嫌を取りつつ、次の物語が・・・次の災厄が

訪れる前に、()()()()()ことにしたんだよ。


治水工事や食料や資材の備蓄を国全体が大々的に

行うことで飢餓や天災に備え、定期的な国民調査を

行うことで、風土病や流行病の兆しに、いち早く

気付けるようにすることで、大きな疫病に広まる前に

対処することを三カ国は、8年前から協力して行っている。

だからね、不安にならなくても大丈夫なんだよ」


そう言った後、エイルノンは自らの口の中にもミントショコラを

放り込み、「これ、甘いのにスースーするね」と呟いた。

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