真夏の日の夕べの劇遊び~観客席にて(前編)
本編に書こうか書かないか迷い・・・でも、書いてしまったので、ここに。
イヴ達が楽しんでいる姿を参観している気持ちでご覧下さい。
真夏の日の夕べの二日目の劇遊びを、初めはとても
緊張した面持ちで、見ていたセドリーやタイノーや
エチータン、アイビー、イレール・・・へディック国に
行っていて、イヴと会うのが約4ヶ月ぶりのスクイレル達は、
劇遊びが開演して、5分もしないうちに、イヴの楽しく
遊んでいる姿を見ているだけで、喜びの涙を流し始めた。
「イヴ様、あんなに楽しそうに笑ってらっしゃる・・・。
ああ、本当に良かった・・・、イヴ様の死の運命が、
消え去って、本当に良かったなぁ・・・」
「本当ですよね!ほら、見て下さいよ!あんなに
嬉しそうにミグシス様の傍で、頑張って台詞を言って
ますよ!ミグシス様が本来の姿に戻ることが出来て、
二人は、ちゃんと恋をして、結ばれたんですよ!」
「しばらく会っていない間に、すごく美しい女性に
成長しているように見えるのは、俺だけだろうか?
1月に会った神様達よりも、うちのイヴ様の方が、
神々しく見えているのは、俺だけだろうか?」
「何、言ってるんですか、セドリーは!僕達のイヴ様や
ロキ様ソニー様が神々しいのなんて、そんなの生まれた時から
に決まっているでしょ!ああ!そんなことよりも、お友達が
沢山出来たようですね、イヴ様は。良かったですね、イヴ様!」
「フフフ、ミグシス様が、あんなにヤキモチ焼きだとは
知らなかったですわ!ああ、本当に大好きで堪らないようですね」
セドリー達の会話を聞いていた、残りのスクイレル達・・・
マーサにノーイエ、リングルにアダム、サリーにセデスは、
神の残した物語を終わらせることばかりに気を取られて、
イヴの楽しむ姿を愛でる、心の余裕を失っていたことに、
はたと気付いた。
「そう言えば、バッファー国に移り住んだ後、イヴ様の
残酷な運命を知ってしまってから今まで、イヴ様の死の運命を
回避させることばかりに気を取られて、イヴ様の成長を
素直に喜ぶ余裕がなかったかもしれませんね・・・」
大切で大事で・・・我が子同然に愛するイヴが、
16才で死んでしまうなんて、耐えられないと、
日々、片頭痛と闘っていたイヴと同じように、
日々、見えない敵と戦うためにスクイレル行動に
勤しんでいた彼等は、イヴが16才になるまでに、
何とか出来ないかと、焦る気持ちが強すぎて、
イヴが毎年、年を取り、16才に近づいていくのを、
心のどこかで恐れていた。
でも、イヴの死の運命は回避されたのだ。
イヴはすでに16才になっているが、生きている。
・・・そう、実感した途端、マーサ達の涙腺も
すぐに緩みだした。
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イヴ達の『私達はイベリスに永遠の愛を誓う』の
劇遊びは、前日の劇とは違い、変更されている
箇所が、多かった。
例えば、序章が影絵だったものが、学院生達の
手作りの紙人形劇で演じられたように、第一幕も
冒頭から、登場人物達の動きが前日とは異なっていた。
劇遊びの第一幕が始まって主人公の私に扮したイヴが、
「いけない!寝過ごしちゃった!大事な入学式なのに!」
と慌てたふりをして舞台中央まで走ってこなければ
いけない場面では、イヴが最初から舞台中央に立って
いて、最初の台詞を言うと、ミグ先生に扮した
ミグシスが小走りでイヴの元まで走ってくるという
動きに変わっていた。
というのも、夕方に始まる劇遊びのために、事前に
立ち稽古を三度ほど行ったのだが、その三度とも
イヴが走ろうとするたびに、床には何も置かれていない
のに何故かイヴが毎回、何かにつまづいたかのように、
体の重心を崩して、転びかけてしまったからだ。
幸いイヴが転びかける度に、ミグシスがイヴを
助けて事なきを得たが、その度にイヴは、助けようと
したミグシスの上に倒れ込んでしまい、ミグシスの
顔に胸が乗ってしまったり、ミグシスの頬に唇が
当たってしまったり、三度目には、皆の前でキスまで
してしまい、人前と言うこともあって、イヴは今にも
泣き出してしまいそうなくらい赤面して、その度に
皆に謝罪した。
「ご、ごめんなさい!」
「大丈夫だよ、イヴ。イヴに怪我がなくて何よりだよ。
それに君を助けるのは、夫である俺の特権だもの」
しょげているイヴをギュッと抱きしめて、
蕩けそうなくらい上機嫌な顔のミグシスが、イヴを
優しく慰めている様を見た学院生達は、口中に砂糖を
無理矢理、詰め込まれたような甘ったるい雰囲気に
うげぇ~という顔つきとなっていた。
・・・ただエイルノン達4人は、イヴが何も
無いところで転びかけて、ミグシスが助けるという
構図を見て、
((((・・・何だろう、この、居たたまれない感じは?
イヴを助けるために、ミグシスが、イヴを抱きしめて
しまったり、不可抗力で、イヴの体を触ってしまう状況を
見たら、普通は羨ましいと思って、苛つくと思うのに、
どうして僕(私)(俺)は、この状況を見て、無性に
今すぐ穴があったら入りたいような、気恥ずかしさを
感じてしまうのだろう?))))
まるで皆に自分の萌える状況を堂々と晒してしまって
いるような気がすると感じていたエイルノン達は、
イヴが三度目にミグシスにキスをしてしまった時点で、
ついには、それを見ているのが耐えられなくなって、
最初のイヴの動きの変更を願った。
「「「「お、お願いだから、イヴ(さん)は
走らないで!」」」」
そうエイルノン達に言われて、イヴは申し訳
なさそうに、赤面したまま頭を下げて、謝った。
「ご、ごめんなさい!私が三度とも、つまづいて
しまったから、いつまでたっても、先の練習が
出来なくて、皆に迷惑を掛けてごめんなさい!」
イヴが謝るとエイルノン達は、イヴを責めているのでは
なくて、イヴが転ぶのは自分達のせいのような気がして、
申し訳なく感じてしまうのだと言って、4人は謝った。
「「「「ごめん、イヴ(さん)!イヴ(さん)を
責めているんじゃないからね!何だか、二人を
見ている僕(俺)(私)が、無性に恥ずかしいやら、
居たたまれないやら、二人に対して何故か非常に
申し訳ないような気分になって、土下座したくなるから、
走らないでほしいと思っているだけなんだ!」」」」
「?私が転ぶのはエイル達のせいではないですよ?
転んじゃうのは、私の運動神経が、おっとりしているから
なんです。ミグシス、いつも助けてくれてありがとう。
ミグシスは転ぶ私に巻き込まれて、怪我はしなかった?
・・・それにしても私って、つくづく役者には向いて
いないですよねぇ・・・。ね、ミグシス?」
「俺の心配をしてくれて、ありがとう、イヴ。
俺なら大丈夫だよ。それと俺もイヴと同じだよ。
例え劇遊びでも、俺はイヴ以外の者に愛を語りたく
ないし、イヴが俺以外の者に愛を告白するのは、
すごく嫌だもの。きっと俺達は、似た者夫婦なんだね」
三度の失敗に落ち込むイヴをギュウッと抱きしめて、
ミグシスがイヴの髪や額にキスをし出したので、
学院生達は、先ほどの砂糖の上から蜂蜜を追加で
口に入れられたかのような、激甘な新婚夫婦の
いちゃつきっぷりにドン引きし、エイルノン達の
お願いを聞き入れて、イヴが走らないですむようにと
演技が変更された。
・・・そんな風に、皆の意見を取り入れた
劇遊びは、前日の劇とあらすじは同じだったが、
登場人物達の動きは同じではなかったし、
エイルノン達のイヴと対決ごっこをして、遊んでみたい
という願いを劇遊びに取り入れた結果・・・、
今、スクイレル達の見ている前で、イヴと同じ格好を
したロキとソニーが、イヴと一緒に舞台に上がり、
『男爵令嬢が悪役の三人に悪口を言われて、虐められる』
場面をエイルノン達の要望で差し替えた、
『分身の術で三人になった男爵令嬢が、悪役三人娘と
それぞれ対決をする』場面となっていた。
舞台の上で、あみだくじを皆が引いて、その場で、
対戦相手と、対戦方法を決めて、対決を舞台の上で行うのだ。
その結果・・・、
ロキはエイルノンと、あっちむいてホイの勝負し、
ソニーは、ベルベッサーと三文字しりとり勝負をし、
イヴは、トリプソンとにらめっこの勝負に決まった。




