表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/25

イヴを励ますために~②サリー・アイビー

~サリーとアイビーの場合


イチゴ狩りに行けなくなり、落ち込むイヴを励まそうと、

サリーは、針を進めていく。

今縫っているのは、イヴとロキとソニーの姉弟お揃いの『忍者服』だ。

イヴは何を縫っても喜んで着てくれるので、サリーは

次々新しい図案を考えては、それをイヴに見せて、

新しい服作りに取り組んでいた。

縫い終わった服を持って行くと、イヴはとても喜び、

そして、サリーにあるお強請りをしてきた。


「あのね、サリーさん。私にお裁縫を教えて欲しいの。

都でお勉強を頑張っているミグシスのために手布を作りたいんですの」


おずおずと上目遣いで頼まれたサリーは鼻息荒く、

「ま~かせて!」と思わず言ってしまい、(しまった!)と

焦ったが、目を丸くしたイヴが笑ってくれたので、よしとした。

それからサリーはイヴが根を詰めすぎないように気をつけながら、

お裁縫を教えた。

イヴはサリーのお裁縫の腕をとても褒めてくれた。

アンジュが大きな胸のために肩がこるというので、サリーは、

胸を支える簡易のコルセットを作ったことがあった。

貴族のコルセットを改良した下着(アンジュは、

『ブラジャーを自分自身が付ける日が来るなんて』と密かに

ショックを受けていた)をイメージして作ったが、それは、

体を締め付けないし、それでいて胸がキチンと支えられて

いるから体が楽だと母様が言っていたとイヴは言い、

どうせなら、(お洋服屋さん)になったらいいのにと

勧めてくれたので、サリーは兼ねてから持っていた野心を

満たすために、その案に全力で乗ることにした。


サリーの野心とは、ずばり『グラン一家を美しく着飾りたい』

の一点のみである。


妖精に例えられるくらいの美しい主人一家を思う存分着飾りたい。

この国に来て、グランは、リン村の民達と変わらない服装をし、

同じ麦わら帽子をかぶっているが、ハッキリ言って、

浮き世離れしていて、悪目立ちしていた。

どう見ても、『お忍びで人間界に来ている妖精王』にしか見えない。


アンジュだって女神のごとき姿を美しく保たたせてあげたいし、

イヴだってもっとお洒落をさせたいし、ロキやソニーには、

ウサギやリスの着ぐるみだって着せてみたい。

しかし、このバッファー国は衣服に関しては、他国同様

に発展はしていなそうだし、民の服は生成りや茶色の物が多い。

もっと色や形の種類を増やして、民の服も色鮮やかにすれば、

自然とグラン達が着飾ってもわからなくなるはずと、

早速サリーはこの考えをアイビーに相談した。

何故ならアイビーはイヴやアンジュの髪を

結うのが大好きだからだ。

その日の服装や体調にあった髪型を考え、思い通りに

結うことに楽しみを感じるアイビーなら、

全力でこの案に乗ってくれると思っていたら、案の定、

アイビーは乗っかってくれた。


アイビーは、この国に来るために短くしたグラン達の

髪のことを後悔していた。

弁護士のカロンに言われて、全部渡したが、一部だけでも

手元に置いておいて、髢にすればよかったと思っていた。

グランはともかくイヴの髪だけでも、長くしたかった。

どの国の女性の髪も長く伸ばすのが普通で、短い者など

あまりいないので、痛々しいと思っていた。

でも・・・短いイヴの髪も可愛かったのだ。


なら、サリーが言うように、短い髪型も広めれば良い。

こうしてお洒落なことが好きな二人が、

(木を隠すなら森、人を着飾りたいなら、国中の人を

着飾っちゃえ!)作戦を敢行したことにより、

やがてバッファー国に(身嗜み革命)が起こり、

それから3年も経たないうちに貴族・民関係なく、

好きな衣服が着られるようになり、男女共に

好きな髪型、髪色で過ごすのが普通になるほど、

サリーの考え出した、(体が楽で過ごしやすくもお洒落な服)は、

誰でも着られる普段着として広まったのだった。


これを一番喜んだのは、意外にもライトだった。

ライトはサリーに『着物』や『袴』や『作務衣』などの、

イヴが強請った『忍者服』に似た衣服のアイデアを持っていて、

それを流行らせたいと願い、さらには『運動靴』や『草履』、

『下駄』などの履き物までサリーに頼んで作ってもらった。

後日、『作務衣』で薬草を調合するグランに、着心地が

良いと褒められたサリーは、喜びの余り、気絶して

仲間達を慌てさせてしまった。


またアイビーの考え出した髪型の自由により、それまで

髪が中々伸びなかったり、生えなくて困っていた者達は、

髪を伸ばさなくてもいい、その流行に大いに救われることになった。

髪が欲しいと思った者は、誰でも安価で髢を手に入れることが

出来るようになり、笑顔ですごせるようになったと喜ばれた。


二人は世の女性達の憧れの存在になり、

(服飾界の美魔女達)と呼ばれ、称えられた。

だが二人には、そんな名声は、おまけでしかなかった。

『グラン一家を美しく飾ること』に生きがいを感じる二人は、

その後も彼らの傍で思い通りに着飾れるようになったことを

嬉しく思いながら、彼らと共に暮らし、10年が経ち・・・。


その日・・・最高の髪型と最高の衣装で、二人が愛してやまない

イヴを、世界で最も美しい『花嫁』に出来たことが、

生涯で一番幸せだと、サリーとアイビーは思った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ