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姉様を守るために~ロキ・ソニー

ロキとソニーはリン村で生まれ育った。

だから彼らはグランが元公爵だったことも、

この国の者ではないことも知らない。


『ぼくのかぞく   4さい そにー・すくいれる』


ぼくのかぞくは、たくさんいます。

かぞえたら17にんいました。

とうさまはおいしゃさまで、くすりのけんきゅうをしています。

かあさまはかりうどと、とうさまのてつだいもします。

せですさんとりんぐるさんとまーささんとのーいえさんは

ぼくたちといっしょのおうちで

ほかのみんなは、らいとおじさんとははんたいがわの

おうちにいます。

せですさんたちは、ぼくらのおうちのおしごとや

すくいれるしょうかいのおしごとで

くにじゅうをまわったりしています。

あと、ぼくと、ろきは、おぼえていないけど、

みぐしすというひとが、かぞくにいて、

おおきくなったら、ねえさまをおよめさんに

したいと、みやこでべんきょうをしているそうです。

ねえさまは、やさしくて、ぼくたちと、

べんきょうやあそびをいっぱいしてくれます。

ぼくもおおきくなったら、ねえさまをおよめさんに・・・


「出来るわけないっか・・・」


ソニーはそう言いながら、隣の席で突っ伏している

双子の兄の原稿用紙を見る。


『ぼくのかぞく   4さい ろき・すくいれる』


ぼくのかぞくは17にんいて、いっぱいです。

みんなとくぎがあって、すごいです。

とうさまはかしこいし、せですさんたち11にんは

かくしているけど、にんじゃでとてもつよいし、

かあさまは、だれよりもつよくて、おこらせると

こわいです。

みんな、ねえさまが、だいすきで、ぼくもだいすきです。

おおきくなったら、だれよりもつよくなって、ずっと

ねえさまをまもりたい。

ねえさまは、かわいいし、やさしいし、かしこいし、

すてきなおんなのこです。

でもとうさまとおなじで、ずつうでくるしんでいるのを

みるとぼくたちはつらくなります。

だからぼくはとうさまとねえさまをたすけるために・・・


「・・・勝手に読まないでよ、ソニー」


「ごめんね、ロキ」


二人はセデスに出された課題を前にため息をついていた。

今日も姉が持病で寝込んでいたので、落ち込んでいたのだ。

二人とも4才だが姉に似て聡明だった。

姉と結婚できないとわかっていたが、彼らの中で、

一番大好きで守りたい女の子は今のところ、

イヴしかいなかった。


「あのさ、ソニー。大人達さ、時々すっごく怖い顔してない?」


「してるしてる、へディック国の話をライトおじさんが

しているときだろ?僕、母様が呟いているのを聞いちゃったんだ。

(絶対イヴをあの国に行かせない!)って。

姉様、もしかしてあの国の人に狙われているの?」


「それ、セデスさんも言ってた!(グラン様をあの国から

守ってみせる)って!・・・ねぇ、もしかしたら、

あの噂、本当かもしれないよ?」


このリン村には子どものための学校はない。

と、いうのもこの村は特殊で村人は皆読み書きも計算も出来、

それを各自の家で教えていたのだ。

もちろん寺子屋もあるにはあるが、自由参加の形式だったため、

その出席も自由に決められた。

その代わりに月に二度、(子ども発表会)やら(運動会)やら

(文化祭)、(遠足)などの集会があった。

その集会の場が子ども同士の横の繋がりをもつ機会となる。

ロキもソニーも、その集会で噂を聞いたのだ。


グランは、実は神の使いの(銀色の妖精)の血を引く者で、

アンジュは(紅蓮の獅子)と呼ばれる妖精の用心棒で、

二人は恋に落ちた。(金色の悪魔)は(銀色の妖精)を

乞うたが、これを拒否したため、命を狙ってきた。


神代の国にいられなくなった二人は、人間になって、

(銀色の妖精の守り手)に守られ、この国に逃げてきたが、

悪魔は悔しげに(銀色の妖精)の頭に病の呪いをかけた。

だから呪いをとくために、薬草が多い、

このリン村に隠れて、悪魔の手から(銀色の妖精)達を

守るために、大人達は色々備えているのだと・・・。


その証拠に(銀色の妖精)により(英雄)になった

ライトがあんなにも親身に、まるで肉親のように、

世話を焼いているではないか・・・。

しかもライトにも(銀色の妖精)と同じ病の呪いが

頭にかかっている。


噂だと笑うには、思い当たることがありすぎると、

ロキとソニーは幼心にも思ったのだ。

村の誰よりも美しい両親、その言葉使いや仕草は、

前王ライトと並んでも何も見劣りしない洗練されたものだった。

普通の村人には到底思えないそれらに加え、

しょっちゅう、遊びに来る今代の王エースの

あのグランへの懐きよう・・・、

グランの方が8つも年下なのに、グランとの話では、

必死にメモを取りながら、執政の取り方の教えを

請うている姿は、まるで神の言葉を聞き逃さないと、

必死に耳を傾ける殉教者のようだった。


両親に似た姉は、その美しい外見以上に

中身が美しく、まさに天使だった。

明るく優しく穏やかで可愛い姉は、ちょっぴり

運動が苦手ではあったが、前向きに努力する

頑張り屋さんで、双子の自慢の姉だった。


辛い痛みを抱えてもけして、回りに八つ当たることもなく、

それを何とかしようと前向きに頑張る姿に

二人も何とかしてあげたいと思っていたのだ。


「ねぇ、ロキ。僕ら母様に似て、とても丈夫だよね。

力も4才児にしては強いって、セデス先生が

褒めてくれたよね?」


「ん、そうだな、ソニー。僕達には頭痛もない」


「きっと、僕らは母様の(紅蓮の獅子)の血が濃いんだよ。

だから、僕らは母様やセデスさんみたいに(守り手)に

なれると思わない?」


「うん、なれるな。努力したらなれる!

・・・なろう、二人で!僕らの家族を、悪魔に奪われる

なんて、絶対にさせないぞ!」


二人は決心をした。

僕らは姉とは結婚できないが、姉弟の絆がある!

弟として、大事な家族を守ろう!!

父を姉を、皆を守る(守り手)になろう!


・・・二人はその後、すくすくと成長し、

(銀色の妖精の守り手)の一員として、

『スクイレル作戦』で、大いに力を発揮するのであった。


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