バッファー国のライト(後編)
アンジュ達が『女子旅』から戻って3日後、
足腰立たなくなったアンジュを横抱きし、
ご機嫌な様子のグランが、ライトの屋敷を訪ねてきた。
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真っ赤な顔でグニャングニャンに惚けているアンジュは、
前世での(ユイ)と結婚式を迎えた日の(チヒロ)の
結婚披露宴での表情そのものだったため・・・、
ライトは全てを理解した。
「き、記憶は・・・?」
何の記憶かとは聞けなかった。
グランはアンジュを抱いたまま、ソファに座り、
彼女の頬を撫でた。
「いえ、残念ながら。アンジュのこともあなたのことも
・・・イヴのことさえ、私には思い出せません。
前世・・・と言われても私にはピンと来ないのが、
本当の気持ちです。ただ、私はアンジュを愛しています。
彼女の丸ごとを愛しているんです。だから信じます」
グランに、そう言われてアンジュもライトも涙が零れた。
「ですが、二人が私に隠れて、コソコソしていたのは、
気にいらないのです。愛している人に、信頼をしていた人に、
私を助けるためとは言え、
隠し事をされていたなんて、悲しいのです。
ですから、今から二人に少々お説教をさせていただきます」
その日の午後、グランの前で、ライトとアンジュが、
『正座』をしている姿を、ライトの侍従が目撃している。
ライトの侍従は、穏やかなはずのグランの笑顔が、
今日は何故か、心底恐ろしく、そのまま黙って、
扉を閉め、彼らが出てくるまで、
侍従は震えながら控え室にいた。
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グランが帰宅し、子ども達がベッドで眠ってから、
グランは、セデスに事情を打ち明けた。
同じ部屋にはアンジュもライトも同席している。
アンジュは自分の知っていることを全て打ち明けた。
「こんな話、・・・二人には信じてもらえないでしょうね。
前世や生まれ変わり・・・、自分たちが神によって作られた
(物語)の人物だなんて・・・。でも真実なんです。」
ライトも自分がここに『英雄』として呼ばれたことを、
自分の半生を全部、話した。
「儂が、二人を望んだばかりに、二人を危険な目に
合わせてしまったんだ!すまない、すまないグラン殿!
だけど、信じてくれ!儂たちはけして嘘は言っていないんだ。
この世界は3人の神が(物語)を見るための・・・」
グランとセデスは二人を制した。グランの目線を受け、
セデスが彼に代わって、二人に答えた。
「お話はわかりました。お二方の話も嘘ではないと、
理解もしております。・・・それに、この世界が
3人の神が父親によって与えられた世界であることは、
私どもは以前から知っている事実なのです」
この言葉に固まったアンジュとライトに対して、
セデスは、こう言葉を続けた。
「お二方はへディック国にお生まれですよね?
ライト様は王子でしたし、アンジュ様は侯爵令嬢
でしたよね。では、貴族だったお二方に、お聞きします。
あの国の城の大聖堂の中にある絵をご存じですか?
あそこに描かれている絵の由来をご存じですか?」
アンジュとライトは、答えられなかった。




