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バッファー国のライト(前編)

バッファー国は周辺諸国の中で、一番歴史が浅い国だ。

バッファー国としての歴史は半世紀にも満たない国だったが、

一番領土が広く、海も山もあり、国力も高く、

一番発展している大国として、名を轟かせていた。

この国をここまで大きくしたのは(英雄)として名高い、

前王ライトだった。


元々今のバッファー国の領土には、かつて3つの小国があった。

この3つは事ある事に諍いを起こし、戦が絶えなかった。

そんな中、三つ巴に痺れを切らし、3つの内2つの国が

手を組んで、一番小さな国を攻めようと企んだ。

この国を攻めて、仲よく2つに分けようという企て。

自分たちの国の領土するためには、出来るだけ、その国を

損傷させることは控えたいと考えを巡らせた。

そのために彼らは、その国の一人の大臣を味方に付けた。


国を裏切る代償は、金銀財宝に3つの国の美女達を集めた

ハーレム、そしてその大臣が懸想していたその国の姫を

正妻にするというものだった。

その姫は美しく華奢で物静かな姫として有名で、大臣より、

40才年下だったが、大臣はこの姫に恋をしていたのだ。

王に姫との縁談を断られていた大臣は、2つの国の誘いを快諾、

自分の私兵と2カ国の兵を指揮し、あっという間に

城を占拠した。

謀略は完璧なはずだったが、彼は重大なミスを一つ犯した。

占拠したはずの城に姫がいなかったのだ。

城中どこを探してもいない、誰も口を割らない・・・というか、

敵味方関係なく、誰も行き先を知らなかった。

そう、誰も・・・姫の両親でさえ知らなかった。

華奢で物静かなはずの姫が、とてもお転婆な女の子で、

彼女の趣味が城の脱走と、トゥセェック国での食べ歩き

だったなんて・・・。


周辺諸国で一番美食で有名だったトゥセェック国に忍んで、

出かけていたため、難を逃れた姫はそこで恋に落ちた。

それがライトである。

黒髪黒目で精悍で凜々しいその姿に一目惚れし、素性を隠して、

つきまとい、そしてお互いがそれぞれに命を狙われていることを知った。

姫は2カ国の追っ手に、ライトは異母兄弟の追っ手に。

最悪なことに、この両方の追っ手に同時に狙われた、その時、

姫は奇跡に出会った。


全てが真白の世界で、ライトが銀色に輝く妖精と対峙している。

二人の話す言葉は姫には理解できなかった。

銀色の妖精はライトの頭上に手を当て、そして閃光が放たれ、

気が付いたら、ライトが全ての敵をたった一人で、なぎ倒していた。

・・・出会いから今まで、ずっと全てにおいて投げやりで、

どうでも良いと諦観していた、寡黙で物憂げな青年が、

武闘派に変わったので、姫は驚いた。

その後も何度も命を狙われたが、ライトは強く、しかも

彼を守るためにやってきたという、年齢不詳の集団が現れ、

自分たちの命をかけてまで、二人を姫の祖国まで逃がしてくれた。

姫の国でまた二人だけとなって、ライトは単身で城へと

乗り込み、「まさか妹の好きだった『スパイ映画』の知識が、

こんなところで生かされるとは」などと呟きながら、

誰も殺すことなく、大臣の座っている玉座の間まで侵入し、

大臣を生け捕りにし、無血開城させてしまったのだ。


・・・姫は思った。

ライトは自分の国を救うために、神の使いに選ばれた(英雄)で、

二人を逃がすために現れた集団は神の使いが送り込んだ

(銀色の妖精の守り手)なのだと・・・。

自分は、神の啓示を目撃した証人で、自分は(英雄)を

この国の『王』にするために、あの場に神に導かれたのだと、

自身の役割を悟った姫は、大臣から国を守ったから、

お役御免だと姫の元を去ろうとしたライトを追いかけ、

物理的にも精神的にも逃げられないようにライトを囲い込み、

彼と婚姻した。


『王』になったライトは、大臣を奸計に引き込んだ2つの

国に異議申し立てをし、2対1で戦となったが、ライトは

これにも、「施設で妹と読んだ『三○志』や姪の好きだった

『忍者小説』、俺が好きだった『戦国時代小説』がこれほど、

有効に現場で使えるなんて思わなかった」と言いながら勝利し、

3つの国を一つの国とした。

新たな大国となったときに、再びライトのそばに真白の世界が

広がった。この時は、姫はその世界には入れなかったが、

そこから戻って来たライトは、今までとは打って変わったように

生気に満ちあふれた表情となっていた。

姫はその理由を尋ねた。するとライトは言った。


()()()()()()()()から、褒美がもらえる」


褒美とは何かと尋ねると、国に多種多彩な薬草が生える祝福、

そして、それらを有効に使い、国の医学の発展に貢献する者が、

多く現れる祝福だと、ライトは答え、その後、心底嬉しそうに

ライトは微笑みながら、自分自身への褒美も特別に

もう一つ、叶えてもらえるのだと言った。

姫は、金銀財宝かハーレムかと問うた。

英雄が色を好むのはよくある話だったからだ。

だが、それを聞いたライトは、それを鼻で笑った。


「どんな財宝だろうと、沢山の美女達だろうと、この

(ライト)の心の癒やしにはなるまいよ。

姫には理解できないだろうが、儂の前世の(ライト)には

妹と、その妹が生んだ姪がいたんだ。儂が、『俺』だったころ、

二人は『俺』の可愛い癒やしで大事な家族で、しかも

お互いがお互いの抱える『頭痛』の痛みや苦しみを

わかり合える『仲間』だったし、それと闘う『同志』だったんだ。


銀色の人は約束してくれた。二人に絶対会わせてくれると!

だから二人が安心して、この国に来られるように、

儂はこの国をどこよりも豊かで安全な国にする!

二人が来たら、姫にも紹介するからな、楽しみにしていてくれ。

(ライト)が何よりも大事に思い、自慢に思っていた大事な

『俺の家族』だったんだ。二人はとても良い子だから、

姫と儂ともきっと家族になってくれる!」


その後のライトは大国となった国の舵取りに多忙な毎日を送った。

ライトの考え出す施策は、どれもこれも見たことも聞いたことも

ないものだったが、どれもこれも秀逸で、新しく出来たばかりの

国だというのに、内乱も起きず、この大国は10年も経たずに

強大国へと進化していった。3つの国の民達は、

ライトのもたらす恩恵に感謝し、心の底から、ライトを

『王』と認め、豊かで安全な国造りを目指す彼を頼もしく思った。


姫もライトの妹と姪に会うのを楽しみに思った。

大好きなライトが心底待ち望む二人が、この国に来たときに

ライトを誇らしく思ってもらえるようにと、

国中の教会の壁画に、ライトが(英雄)となって、

この国を救ったという英雄譚を描かせた。

その後、ライトと姫はバッファー国が安定してから、

5人の男の子をもうけた。

母親になった姫は、昼間の忙しい王妃の仕事の後、

夜には毎晩子ども達にライトの英雄譚を聞かせ、

子ども達にライトを尊敬するようにと言い含め続けた。

そしてやがてやってくるだろう、ライトの妹や姪に

会ったら、彼らをどうやって歓迎しようかと、

ライトを交え、毎晩家族で話し合った。

王侯貴族は政略結婚が多い中、姫は初恋を見事に叶え、

幸せな時間を過ごした。


しかし、悲しみはある日突然やってきた。

姫は5人目の男の子を出産後、産後の肥立ちが悪く、

寝たきりとなってしまった。日に日にやつれていく姫は、

ライトに今までの感謝の言葉を述べ、国や子ども達の

ことを頼んだ。

子ども達には、今までもこれからも愛していると伝え、

王で父親のライトを支えるようにと頼んだ。

ライトや子ども達がこれらに頷くのを見てから、

姫は満足そうに笑った後、少しだけ寂しそうに

遠くを見つめた。


「ああ、ライト様の妹御と姪御にお会いしたかったのに、

どうやら私は二人にお会いすることは出来ないみたいです。

それが唯一の心残りです。ライト様と子ども達に、お願いします。

どうか私の分まで、妹御と姪御を歓迎してくださいね」


そう言って微笑んだ後、姫は永遠の眠りについた。

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