2. 転生?
目が覚めると真っ白な空間にいた。足は地面についているのになぜかふわふわとした感覚があった。
「ここは……」
「ここは神界です。」
そう言った女は、ピンク色の腰まであるロングヘアーで白を基調としたワンピースドレスを着ていた。
(……そうだ……俺は冒険者に刺されて死んだんだ。)
頭がボーっとしているのか思い出すのに時間がかかったようだ。
(死後の世界はよくわからないけど生きているときとほとんど変わらないな)
「なぜ俺はここに?」
「女神である私があなたの魂をここに召喚しました」
(魂を召喚?聞いたことがない。それに、召喚した理由がわからない。)
「なぜ召喚をしたのかって思いましたね」
「っ……」
図星を突かれたヴァズイートは女神を警戒する動きを見せた。女神に悪意がないので警戒する必要はないのだが、急な出来事だったので条件反射というやつだ。
「私は相手の心を読めるんです。あなたを召喚したのは、世界を救うためです」
「………」
「まあ、いきなり世界を救うといってもわからないと思うので詳しく説明しますね」
「……頼む」
ヴァズイートは魔王だった自分に世界が救えるのかと考えたようで、少し間をあけてからそう答えた。
「あなたを殺した冒険者のように、魔族と戦ったりする『勇者』と呼ばれる人たちが存在していることは知っていますね?」
「ああ、知っている。というかあいつも勇者だったのか」
「あいつも?ということは前にも勇者に…」
「ああ、昔の知り合いが勇者でな。あんまり聞かないでくれ。」
「わかりました」
不思議そうにしていた女神だったが深入りしすぎたと思ったのか素直に納得した。
「話を戻しますが、強力な力を持ちこの世界に必要不可欠な存在である勇者は異世界から召喚しているんです。」
「異世界?」
「えぇ、この世界とは違う世界、例えば魔族のいない世界や人族のいない世界です。私はこの世界『ベオグラール』の神ですが、勇者の故郷である『地球』の神と交渉した結果、とある条件をのむことで勇者を召喚しているのです」
ヴァズイートは警戒を解いたのかおとなしく女神の話を聞いていた。
「その条件は、勇者を召喚する代わりにこちらの世界で死んだ者の魂を送ることです。つまり異世界の者とこの世界の者を交換するということです。これは世界を守るためにも必要なことです」
「世界を守るため?」
「そうです、生き物が死ぬと輪廻の輪に戻ります。勇者を召喚すると、勇者もその世界の輪廻の輪に入ります。もともとなかったものが加わるわけですから、世界に負担がかかり世界が崩壊する恐れが出てきます。なので勇者と同じ数の魂を地球ヘ送っているのです」
「……俺は地球に送られるのか?」
ヴァズイートは考えるそぶりを見せてそう訊いた。
「そのとおりです」
(あれ?俺死んでるよな)
「異世界ヘ行ったら転生してもらいます」
「記憶とかはどうなるんだ?」
「普通はなくなります。そもそも生まれ変わったら前世の記憶はきれいさっぱりなくなるんですが、ある程度の力を持っている方は、記憶を消さずに転生させたほうがこちらにとって色々と都合がいいんです。」
「なるほどな、記憶が残るということはもう一度俺として生きるチャンスだな」
腕を組んで納得した様子のヴァズイートはそう呟いた。
「そろそろ時間になったので、あなたを異世界『地球』ヘ送りたいと思います。よろしいですか?」
「ああ、問題ない」
「あなたからはなんだか懐かしい雰囲気が感じられます。」
「……」
「なのでどこかでまた、会うかもしれませんね」
「では、あなたの来世に祝福を」
その瞬間目の前に強い光が現れ、俺をおおった。
そして俺の意識は途絶えた。