1. プロローグ
初投稿です
魔王の住む城が人族により攻められていた。
弱い人族は数を持って、強い魔族は力を持って戦っていた。
「魔王さま! 人間共の勢力が我々を上回っています!」
「ここにたどり着くのも時間の問題です!」
「チッ 四大魔衆」
魔王がその名前を呼んだ瞬間、空間の一部が歪み、四人の男女が姿を見せる。
「人族を止めろ!」
「「「「ハッ」」」」
彼らは再び空間の歪みへと姿を消す。
「これでこの戦いが終わればいいのだが……」
魔王城の最上階にある玉座に座りうわ言のようにつぶやいた。魔王もこの戦いで神経を消耗しているというのもあるが、魔王は人族と手を取り合おうとしているので、この戦いは望んでいないのだ。しかし他の魔族は昔から人族を恨み、憎んでいるのでこの戦いで人族を殲滅しようとしているのだった。
〜〜〜 〜〜〜 〜〜〜 〜〜〜 〜〜〜
「あと少しで、魔王の間だ!」
冒険者の一人ががそう叫んだ。
今冒険者たちがいるのは魔王城のちょうど真ん中だ。
「そろそろだ!」
その瞬間空間が歪み、歪みから魔族が四人出てきた。相手が魔族なので少し癪だが四人ともかなりの美系だった。特に魔族の女は、今まで見てきた女の中で一番の美人でお姉さんという雰囲気があった。
「気をつけろ! こいつら今までの魔族とは違うぞ!」
冒険者は各々距離をとったり、武器を構えたりして戦闘体制に入った。
「魔王城に侵入してきた人族って、こいつらだよな」
「そうだね〜 てゆ〜かこいつら以外に誰かいるの?」
「無駄を口叩くな…… さっさと終わらせるぞ」
魔族はそれぞれ「剣」「鞭」「ハンマー」「拳」で冒険者たちに攻撃を仕掛けた、実戦経験の少ない冒険者や力不足の冒険者は次々に倒れ、冒険者の人数は大幅に減った。
「密集せずに散らばれ! 敵の武器は広範囲攻撃に向いていない!」
その言葉を聞いた魔族の一人がニヤリと気味の悪い笑みを浮かべ、手のひらを前に突き出しブツブツと言いはじめた。
「じょ、上級魔法だ!」
冒険者の男が叫ぶ。
「残念、伝説級だ」
次の瞬間魔族の手から巨大な火の玉が現れた、強い存在感を放ちながら冒険者の男の方へゆっくりと進んでいく。
「うっ、うわぁぁぁあ」
魔族の放った火の玉は冒険者の男とほかの冒険者を包み込んだ。
「殲滅完了だな」
「流石にやりすぎだと思うよ?」
「そうね、伝説級はやりすぎね上級で良かったんじゃないかしら」
「そのへんは大丈夫だ、ちゃんと調整してるから気絶しているだけだ」
大勢の冒険者が倒れるなか、残った魔族の四人がそう言った。
「……クソっ……だがこれであの計画が……」
男は気絶した…
このつぶやきに気づいたものは誰もいなかった。
〜〜〜 〜〜〜 〜〜〜 〜〜〜 〜〜〜
魔王の間にある玉座の正面の扉がゆっくりと開いた。
「お前が魔王か?」
魔王の間に入ってきた冒険者が問う。
「ああ……俺が魔王ヴァズイートだ」
ヴァズイートが想像した最悪の結果だった。四大魔衆はほかの冒険者を止めに行っていて、この場にいるのはヴァズイートと冒険者だけだ。ヴァズイートがこの冒険者を無力化させようとすると力の差が大きすぎて、殺してしまう可能性がある。それは防御の魔法でも同じだ。人間と共存しようとしているヴァズイートは、攻撃を受けるしかない。
「今までの、そしてここに来るまでの仲間の恨み晴らさせてもらうぞ!」
「いいだろう……こい!」
冒険者は腰にさしてある剣手に取り、魔力を付与した。すると怪しげな紫色の光を放って形が変わった今までは、必要最低限の効果しか期待ができない安そうな剣だったが今は高級感あふれる装飾品に紫色の刃が特徴の剣に変わっていた。
お互いの剣が幾度となく混じり合った、そして……
「ぐはぁぁっ」
冒険者の剣がヴァズイートの胸に刺さった。次の瞬間胸に激痛がはしる。
冒険者の剣に付与されていたのは『毒属性の魔力』と『回復魔法無効』だった。その剣に刺されたヴァズイートは毒に蝕まれた。
「ぁぁああぁああぁぁああ」
毒によって少しずつ弱っていったヴァズイートはついに力尽きる。
冒険者は魔王を倒しても、少しも嬉しそうな表情を見せなかった。
「すまねぇ…… 勇人」
冒険者はそうつぶやくと闇に溶け込むように消えていった。
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