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珈琲の妖怪マキネッタ  作者: 狐囃子
(第一章)コーヒーはこわくない
4/6

マキネッタ三部作 マキネッタはスローライフです

 マキネッタを買ったのは東京で一人暮らしを始めた頃でした。

 

 四畳半一間未満のワンルーム、荷物が多かったので寝床はソファベッドなのにカプセルホテルのカプセルのように潜り込む場所。そこにノートパソコンを置いてエスプレッソをすすりながら慎ましく過ごしていました。

 

 コンロを使えることだけが幸いな部屋で、如何にして安らぎを求めるか。ペットを飼っても良い物件だったので、最初は猫でも飼おうと考えていました。

 

 猫はニャーニャー鳴きます。

 

 鳴く筈でした。

 が、お隣さんに言わせると猫はあまり鳴かないそうです。

 たぶん猫にもよるのでしょうけれど。

 

 ペットよりも先に見つけたのがマキネッタでした。

 マキネッタはコポコポと鳴きます。鳴いた後にはエスプレッソができています。

 

 マキネッタは当然火を使いますのでペットを近寄らせることはできません。マキネッタを買った時点で私はマキネッタの飼い主になったのでしょう。

 

 以来、私はマキネッタともに住んでいます。長年つきあっていますが壊れる気配は皆無です。

 マキネッタはエスプレッソを――コーヒーを楽しむ時間を喫茶店から自宅に変えました。小説を読むときに欲しい最小限の空間と時間、それを両立する最後の鍵がマキネッタだったのです。

 

 壊れないと言えば、むしろ気が付いたら先にマキネッタの有名な製造元ビアレッティ社がピンチになってしまいました(!)

 

 壊れにくく需要があったのに、需要が満ち溢れたから新しく買う人がいなくなったのでしょうか。マキネッタはそれだけの需要と信頼性を持っているということでしょう。

 今日も世界中でコポコポと鳴いていると思います。

 

 余談ですが私は以前、あちこちのコーヒーチェーン店をメインの読書施設として、気が向いたら著名な喫茶店――例えば、神保町の喫茶店「さぼうる」――で小説を読むようにしていました。

 狭い店、狭いテーブル、そして奥深いコーヒー。「さぼうる」は50年以上前から営業しているそうで、昭和の色濃い珈琲浪漫があります。そしてそこでは時間の流れが止まっていました。20世紀の方のスローライフは「さぼうる」にあったかもしれません……ってこれは遅延停滞魔法の方のスローですね。失礼しました。

 

 私は今でも「さぼうる」の他、喫茶店へ足を運びコーヒーと小説を楽しんでいます。店まで行く時間を費やしてでも買いたい空間と時間と味が喫茶店にはあるからです。喫茶店は使う人によって何時でも何時までも文字を読み続けることができる異世界。私にはそう思えて仕方がありません。

 

 マキネッタは喫茶店にある時間と味を疑似的にもたらしてくれます。素敵なコーヒーを時間短縮して作成することができ、文字を読んでいると自動でコポコポと音を鳴らしながらエスプレッソの香りをお部屋に演出してくれます。

 

 スローライフに使える魔道具マキネッタ、プライスレス。

 これはこのエッセイを通して伝えたい私のコーヒーに対する大切な姿勢なのですが……

 

「コーヒーの味を追求する底なし沼もたまには良い」

 

「でもコーヒーは安定して好きな味を安価で適度に楽しみたい」

 

「そしてコーヒーを作る時間を楽しみたいし楽がしたい」

 

 そんなコーヒースローライフがあるということを伝えたいと思っています。

 

 このエッセイの副題というか裏設定は

 「異世界転移せずにチートな珈琲タイム、琥珀色のスローライフ」

 です。

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