表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆異世界で闇堕ち妃になった私は処女のまま正義と戦いあの女に必ず復讐する。  作者: あおいまな
第8章「それぞれの復讐、むくわれた涙」
97/103

94.皇帝は死んだ

 ーーーーー


 ラセンはそのとき激しい出血で体が冷え、息をするのが精一杯だった。


 アキが皇帝を倒したのかを確認したかったが、動くことが出来ず、壊れたベッドに体を預けていた。


 涙があふれた。サジンに対してだった。


 巻き込まなければ平穏に暮らしていたはずの若者を犠牲にした。


 毒を浴びたサジンがすぐ近くで膝と顎をつき、うめき声を噛み殺していることは感じており、長い苦しみのあとで死ぬことを知っていた。


 今すぐ楽にしてやりたかったがそれすらもできない。


 自分の死はすぐに来る。


 迷いも後悔もない世界へ行く。


 ふと、甥のセツナ――神官としての名前はイシュリン――の面影が浮かんだ。


 死んで魂になったのなら、あの湖に潜り、いつまでも側にいたいと思った。


 面影に血濡れた手を伸ばす。


「セツナ、お前の理想とする世界を実現するためにはお前を封じるしかなかった。私を許してくれ……」


 目がかすみ、視界が消えかかる。


「大丈夫です、叔父さま」


 返事が聞こえた気がした。


 その手に起こされ、温かい胸に抱かれた。


 痛みが抜けていった。

 しびれていた体に確かな感覚が戻る。


「叔父さま、今、傷を治しました」


 求めていた顔がはっきりと見えた。


 イシュリンは振り返ると、苦しむサジンに手をかざした。


 サジンの体から抜けた毒が球になる。


 それをとても小さなものにしていき、つかむと手の中で消した。


 サジンの痛みがおさまった。

 体にちからが入らなかったが顔だけをラセンに向けた。


「皇帝はどうなった……? アキさまは……?」


 入り口を背にしたオーヤがイシュリンの横に立った。


「皇帝の臓器はすべて破壊され、灰になった」


 ワイクも続く。


「皇帝は死んだ」


 サジンに歩み寄り、膝をつき助け起こした。


「セツナ、アキは?」


 ラセンはその姿を見つけられぬまま、血のりが入り口とは逆の扉へ続くのを見つけた。


 回復したばかりの呼吸が荒くなり、甥の肩をつかむ手に力を込めた。


「セツナ、アキは!?」





 〈続く〉

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
★外伝↓。飛翔と憂理がネイチュに来る前の話。
飛翔の目線。
『 後悔という名のあやまち』


― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ