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◆異世界で闇堕ち妃になった私は処女のまま正義と戦いあの女に必ず復讐する。  作者: あおいまな
第8章「それぞれの復讐、むくわれた涙」
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92.私たちは愛流に復讐する

 

飛翔(ひしょう)、助けて! 私は無力なのに、この女は私を殺そうとしている!」


 愛流(あいる)が飛翔に訴えた。


「愛流、憂理(ゆうり)にお前を殺させない」


 愛流はほくそ笑み、私は涙がとまった。


 私の仕打ちを飛翔が恨んでも当然だった。愛流の側についても自業自得だ。


 飛翔は私の前に回る。愛流を庇っているように見えた。

 

 それでも私は自分の仇を討たねばならない。


「飛翔、そこをどいて。お願いだから、私に復讐させて……!」


「わかっている、憂理」


 飛翔は振り返って愛流を見た。


「愛流が憂理を呪い、体に侮辱的な言葉を刻んだことは知っている。カタルタの海でアキと対戦したとき、アキはおれに憂理の体に入れられた模様、日本語で書かれた文字をタイルにしるし置いていった。アキは憂理を利用したとしても(おとし)めることはしない」


 飛翔は体の横で拳を握りしめ床をにらんだ。


「おれが、憂理を貶めた愛流を殺してやると思った……!」


「……飛翔」


 私がその顔を見る。


 飛翔は愛流に向き直った。


「なによ、私を助けてくれるんじゃなかったの? デキてたの? その女は“娼婦”なのよ。実際に、元の世界では飛翔との仲を自慢して、こっちでは皇太子に媚びを売っていたんじゃない。処女でも“娼婦”に間違いないでしょ」


 愛流は私を指さしゲラゲラ笑った。


 飛翔が怒りをこめて愛流に踏み出す。


「それ以上、憂理を侮辱するのなら、お前の舌を抜いてやる!」


「できるの、飛翔。やってみてよ。クラスで一番人気の男子で、“王子様みたい”って皆、憧れていた。強くて優しくて、弱い者をかばうのが飛翔なんだって!」


「そうだ、弱い者をかばうのがおれだ!」


 言うなり魔力でその舌を奪った。

 

 愛流の開いた口から血があふれる。


「飛翔……」


「おれはこれで憂理の仇を討ったことにする。憂理は憂理の恨みを晴らすんだ」


 飛翔が背中に庇っていた私から体をどけた。

 私はうなずく。


 私がされたことと同じことを愛流にやり返す。


 その体の表に日本語で“娼婦”と書き込み、体を裏返すとネイチュの言葉でも刻む。


 愛流は、のたうち回る。


「本当に裏も表もないよな」


 飛翔は冷やかだった。


「あの女はあれでいい。美しいことが自分の価値だと思っているから」


 私は大きく息をつく。


 何もかも終ったと思った。

 肩の力が一気に抜けた。


 そのとき、王座の階段の下の私とアキが皇帝にひざまずかされていた場所に、床から光が立ち上った。


 それは私たちと愛流を隔て、三メートルの大きな円をえがき、その外側にも逆向きに円をかいた。


 円と円の間にネイチュの文字が記される。


 “汝の命は我が手にゆだねられた”――。


 それが魔方陣の模様に見えた言葉の意味だった。


 輝く魔方陣は本当に現れた。





<続く>


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★外伝↓。飛翔と憂理がネイチュに来る前の話。
飛翔の目線。
『 後悔という名のあやまち』


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