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86.皇帝に会うためふたたび帝都の宮殿へ

 倒せないイシュリンを封じたことで、 ネイチュから神のチカラは完全になくなった。


 我々の魔力がこの世界で最も強大なチカラとなったのだ。


 イシュリンがアルマに従わぬ、 あるいは反抗する者たちを拉致し、確保していたドームは十数個 にのぼっていたが全て破壊した。


 もちろん、その中にはレジスタンスの拠点だったスプリングもあった。


 非力な者どもはアルマに隷属し支配を受け入れるより他にないのだ。


 私はネイチュを別世界のように変えることができ、深い感動に包まれた。


 アルマによるネイチュの完全支配は、老齢の皇帝が皇太子のアキに譲位するための条件だった。


 アキがアルマの皇帝になる――。


 元の世界へ戻るための輝く魔方陣は皇帝が一度だけ作れるものだ。


 私とアキはおのれの復讐のために互いを利用してきた。


 アキが皇帝になったあかつきにそれを得ることで、私は元の世界に戻り、愛流に復讐するつもりだった。

 だが、愛流がネイチュに来たからには、ここで愛流に復讐する。


 私が元の世界へ戻る理由はなくなるはずだった。


 私はアキを愛している。


 アキも私を愛している。


 優しいくちづけを幾度も交わし、抱きしめあった温もりに嘘はない。


 皇帝になったアキは私を“本当の妃”にするだろう。


 だが、私はそれを心の底から願いつつも、


「嘘をついていた」


 と微笑してみせる。


「本当は愛していない。初めから何も変わっていない。ただ復讐のために利用していた。復讐のために騙していただけなのに可笑(おか)しい」


 と。


 アキはプライドを傷つけられ激怒し、私を元の世界へ追放するに違いない。


 愛流に復讐したところで、愛流が私にかけたこの呪いは死ぬまで私を苦しめる。


 私は決して穢されることのない誇りとアキへの愛を胸に秘め、元の世界でひとり生きていく。


 アキが皇帝になれたのなら、それでいい。


 アキは少し傷ついて、異世界から来た女のことなどすぐに忘れるはずだ……。





 アキと私は、ラセンを従え、帝都の皇太子の宮殿へ向かった。


 そこで私は、以前、皇帝に謁見したときのように豪華で美しい装いとなった。


 アキが皇帝から譲位を告げられる場面なのだ。失礼があってはいけない。


 私をホールで見たアキは満足そうだった。

 もちろん、アキも豪華だ。


 正装したラセンが来て、


「お時間です」

 と、知らせた。


 アキと私は皇帝の宮殿へ向かった。

 渡り廊下を松明(たいまつ)が照らす。


 夜になっていた。


 皇帝の玉座の間に入り、前回、謁見したときと同じ場所で指を胸に当て、ひざまずく。

 赤いカーペットを見つめる。


 シンバルが五回鳴らされ、高位の貴族たちに玉座を囲ませた皇帝の座る気配がした。


 私はそれを以前のように恐れはしなかった。




<続く>

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★外伝↓。飛翔と憂理がネイチュに来る前の話。
飛翔の目線。
『 後悔という名のあやまち』


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