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◆異世界で闇堕ち妃になった私は処女のまま正義と戦いあの女に必ず復讐する。  作者: あおいまな
第5章「地獄から這い上がるために」
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58.飛翔はスプリングを飛び出す

 =====


 オーヤがスプリングへ戻ったその夜、イシュリンは、神殿の一室へオーヤとともにワイクと飛翔(ひしょう)も呼んだ。


 中央に置かれたランプの灯りを囲み、四人で車座になる。


 ワイクが口をきる。


「ここに来る前の憂理(ゆうり)、いや“破壊の妃”は、帝都の向こうにある窪地の町に住んでいた人々を追い出し、町を破壊したという。皇帝に命じられ新しい帝都を作るために、人々を奴隷都市で働かせるためだと、逃れてきた者たちから聞いた」


「アキは新しい帝都の建設を命じられているのか」


 イシュリンは顔をくもらせる。


 ワイクが身を乗り出す。


「イシュリン、これ以上の犠牲を出さない為にもアキを倒すしかない。この世界でアキに対抗できるのはイシュリンだけだ。私もアキの側近を排除するために命を()す覚悟でいる。ここで戦わなくてはなんのためのレジスタンスなんだ!」


 ワイクにしては珍しく過激な発言だった。


 イシュリンは目を閉じ、首を振る。


「私はアキとは戦わない」


「なぜなんだ!?」


「おれもアキと戦おうとは思わない」


 オーヤはイシュリンに同意する。

 腕を組んで灯りが照らす床を見つめた。


「倒すのはアキではなく、アキを使っている皇帝だ」


 飛翔がオーヤに詰め寄る。


「アキを倒さなくては憂理は取り戻せない」


 オーヤは深く息を吐き、今度は高い天井へ視線を移した。


「憂理はもうアルマだ。ここには戻らない」


「何を言うんだ。あきらめる訳にはいかない。“破壊の妃”として、アキに利用されている。このままでは憂理までが人々の憎しみの的になる。いや、もうなりかかっている」


 語気を強める飛翔に顔を向ける。


「“破壊の妃”を止めさせるには皇帝を倒すしかない」


「憂理は、オーヤのところからアキに連れていかれたんだろう? 脅されているか、騙されているんだ」


「……違う」


 伏し目になる。


「飛翔」


 口ごもるオーヤに代わり、イシュリンが告げた。 


「憂理はアキを愛しているんだ」


「嘘だ! あれは形だけの結婚だ!」


 飛翔は立ち上がり、言葉を払いのける。


「嘘じゃない」


 オーヤが続ける。


「おれはふたりが口づけるのを見た」


 視線を受け、飛翔は衝動的に部屋を飛び出した。


「飛翔!」

「追うんじゃない、ワイク」


 腰を浮かせた彼をイシュリンは止める。


「イシュリン」

「飛翔にはひとりになる時間が必要なんだ」


 ワイクは飛翔の若さをおもんばかった。


「……わかった」


「私はアキと戦わない。だが、人々を守って救いたい。それに協力してほしい」


 イシュリンには、アキの行いを止めさせる計画があった。




<続く>

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★外伝↓。飛翔と憂理がネイチュに来る前の話。
飛翔の目線。
『 後悔という名のあやまち』


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