表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/103

51.砂漠で魔力は使えない

 ーーーーー


 強い光がまぶたを通して入ってくる。


 そのまぶしさで目を覚ました。


 背中の下に敷かれた毛布からゆっくりと体を起こす。


 カーキ色の分厚い布で出来た大きなテントの中にいるとわかった。


 射しこむ光の向こうにいた男が私の動いた気配を察して歩み寄り、目の前で腰を落とした。


「久しぶりだな」


「……オーヤ!」


 私の血の気が引く。


「お前に復讐する時を待っていた。スプリングも破壊すようアキから言われ潜入していたのか。いくつドームを潰す気なんだ。町もいくらでも破壊する。まるで古い箱を踏むかのように」


 オーヤは大きくため息をつき、怒りを押し殺し上辺だけの笑みを見せた。


 私は鉄の手錠をかけられていることに気づいた。


 鉄の手錠は、私のような異世界から来た者には通用しない。


 魔力で引きちぎろうとしたが壊せなかった。

 何度も繋がれた手首をはなそうとした。


「それは壊せない。なぜだか分かるか」


 オーヤは立ち上がり私を見下す。

 十六畳はある広いテントの中央にある出入り口の幕を払いのける。


「ここが砂漠の真ん中だからだ」


 荒涼とした砂の海を見せ、振り向いた。


「砂漠……?」


 私は森と平野、山や川を転移したが砂漠を移動したことはなかった。


「砂漠を見たことがなかったのか。そうだろう、ここでは魔力が効かない」


 オーヤはしたり顔を見せる。


 私は手首をあわせられなくともオーヤを攻撃しようとし、手のひらを向けた。


 だが、元の世界にいた時のように、何も起こらなかった。


「お前に復讐する」


 オーヤは外で離れて立つ仲間を砂まみれの幕で閉ざした。


「初めからお前の魔力を奪っておけば、あんなことにはならなかったんだ……!」


 後悔とともに吐き捨てる。

 私に向き直り、上着を脱いで裸になった。


 何をされるのかを理解して体が震えた。


 逃げようとして背後に下がったが、近づいて膝をついたオーヤに足首をつかまれ引き戻される。


 左の薬指に金の指輪がはまったまま繋がれた腕の鎖を左手でつかまれ、頭上で押さえこまれる。


 乱暴に足を開かされて長いスカートの裾を膝下までまくられる。


 その間にオーヤが膝を入れた。


 体に体を乗せてくる。

 スカートの下に右手を入れようとする。


「……いや」


 脳裏にアキの顔が浮かぶ。

 オーヤの目を見つめ返し、涙を流した。


「お前に情けはかけない」

 オーヤは視線をそらさない。


 私は瞬き、また涙があふれた。

 男の強い力にあらがえず身動きが取れなかった。


「いや」

 細くなる声でなおも拒んだ。


 オーヤは顎を引くと右手でスカートを膝上まで引き上げた。


 私は喉をのばす。

 我慢するために唇を噛み、汚れた天井を見上げた。


 もうアキの側にはいられなくなる――。


 涙が目尻を伝った。




<続く>

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
★外伝↓。飛翔と憂理がネイチュに来る前の話。
飛翔の目線。
『 後悔という名のあやまち』


― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ