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◆異世界で闇堕ち妃になった私は処女のまま正義と戦いあの女に必ず復讐する。  作者: あおいまな
第3章「マンゲールの悲しき墓守」
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40.アキは六歳で母親から引き離され、再び会うことはなかった

 私はイザヨイに肩を貸しながら宮殿を逃れ、マンゲールを出た。


 轟音に振り返ると、宮殿はすべて崩れ落ち、街も底が抜けたように地下に沈む。


 ヒイラギがいた神殿は崩れ、アキの母親の墓も飲み込まれた。


 私は、アキがいるシャビエルの宮殿へ転移するつもりでいたが、イザヨイは、


「アキに合わせる顔などない」


 と、力なく首を振る。


「湖のほとりへ連れて行ってほしい」


 頼まれ、イザヨイの願いどおりにした。


 湖岸に寝かせたものの出血が多く、助かるのは難しかった。


 イザヨイもわかっていた。


「五年前に神殿が廃止されると人々はマンゲールを去っていった。ひとりで幻影をつくり、翌年に亡くなったアキの母親の墓を守っていた。墓を誰かの足の下にされるのは耐えがたく、マンゲールでは浮遊しての移動も転移もできないようにした。現実では人々を酷使しながら」


 傷口から大量に血があふれた。


「自業自得だ」


 イザヨイは湖に顔を向けた。


 澄んだ青い水の中に、たくさんの切り出された石が沈んでいた。


「切り出させた石を沈めていたのは……。もう何も皇帝に渡したくなかったから」


 湖面が、きらめく。


「皇帝には多くの妃と皇子(おうじ)がいたが、強い魔力をもつ子供は少なかった。母親と静かに暮らしていたアキに強い魔力があることを偶然知ったおれは……。ほんの少しの金と引きかえに皇帝の使者に告げ口した」


 風が吹いて水面を波立たせた。


「まだ六歳だったアキは母親と引き離され、再び会うことはなかった」


 雲が光をさえぎった。


「おれがアキを絶望させ、冷たい皇子にした……」


 イザヨイはそこで長く沈黙した。


 私は湖から目を戻すと、哀れなイザヨイに手を伸ばし瞳を閉じさせた。





 〈続く〉

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★外伝↓。飛翔と憂理がネイチュに来る前の話。
飛翔の目線。
『 後悔という名のあやまち』


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