34.私は見知らぬ男の部屋へ連れ込まれる
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魔法陣のマークが入った手袋をした老女は、もう何年も着替えたことがないような汚い身なりをしており、白髪はごわついてただ長く、魔法の杖なのかよく分からない杖をついて、家と家の間の細道を通ったり、また表に出たりして、迷っているのか迷子にさせようとしているのか、よく分からない状態で私を案内した。
やがて、いくつもの布が通路の天井となった見るからに怪しい小路に案内された。
「この先にいるから」
と、私の手を握ってさすりながらささやくと、前金を受け取っていた老女は私を置き去りにした。
ここがどこなのか、まったく分からない。
逃げたくなったが、自分の魔力を信じて奥を目指した。
突き当たりを左に折れると、先ほどいたような胸が大きく開いたドレスを着た女が数人たむろしており、タバコを吸ったり、小さなボトルの強い酒を喉に流したりしていた。
にらまれる中を、
「ちょっと、通らせてください」
と、足早に間を過ぎた。
先はさらに狭く、大きなナイフを腰につけた男たちが集まっており、もっと物騒な雰囲気になっている。
どうしたらいいものか途方に暮れて辺りを見回していると、どこからか出てきた手に口をふさがれ、同時に体も抱えられて屋内に引き込まれた。
肩まで伸びたグレーの髪をハサミで縦に切ったような中年の男がにやにやして、ものでも運ぶように、私を持ち上げて階段を上り、二階へ連れていく。
廊下の一番奥のドアを蹴って開けると、狭い部屋のへたったベッドに投げて置き、払いのけるようにしてドアを閉めた。
私は手首を合わせて手のひらを開き、男を攻撃する。
男に盾で軽くいなされた。
魔力がいつもより弱くなっていると気づく。
そして、この男が見かけによらず強い魔力の持ち主だと知った。
男に大股でせまられ、合わせた手首ごと左手で腕をつかまれる。
そのままベッドへあお向けに倒されて服の首元に右手をかけられ、強く引き開けられた。
〈続く〉