23.オーヤは復讐するために飛翔たちと別れる
リバティーは、レジスタンスの最大の拠点であり、魔力に頼らない生活を実践していた。
リーダーである神官のイシュリンはドーム状の結界を作ることで、そのコミュニティを敵視されているアルマの攻撃から守っていた。
ドームは海のように果てしなく広がる深い森の中にあったが、住んでいた者たちは森の外にある町の出身だった。
内訳は、こうなっている。
魔力を持つ・持たないに関わらずレジスタンスに加わりたいと町を出てきた者、協力していた事が発覚して町にいられなくなった者、病気などで町から追い出され見捨てられた者ーー。
イシュリンは万が一のことを考えて、ふたつめの小さなドームを別の場所に作っており、そこでは百五十人が暮らしていた。
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アルマの策にはまってリバティーを破壊された後、飛翔とイシュリンは眼球を失ったワイクを助けながら三人でスプリングと呼ばれるそのドームへ行った。
生き残った者たちは、そこに集まっているはずだった。
飛翔は刑場へ向かう罪人の気持ちだったが逃げる訳には行かなかった。
スプリングに入ると、案の定、オーヤは飛翔に大股で歩み寄り、渾身のちからで殴りとばした。
飛翔は地面に叩きつけられ口の中を切ったが、抵抗はしなかった。
さらに近づかれ胸ぐらを掴まれて引き上げられる。
「ドームの内部が燃やされた時、魔力のある者が協力して火炎から人々を守り耐えた! 耐えられずに死んだ者もいた! なのに、百人しか助けられなかった! お前が連れてきた女のせいで! お前のせいで、七百人も死んだんだぞ!」
窒息するほど強く、オーヤに締め上げられた。
怒りにたぎる目で燃やされるようだった。
「オーヤ、やめるんだ」
飛翔を突き放すとオーヤは声をかけてきたイシュリンにも詰め寄った。
「あんたも、なんでもっと早くに戻らなかったんだ! おれたちに冷たいよその町なんてほっといてドームにこもっていればよかったんだ!」
オーヤは泣きながら喚いた。
「オーヤ、落ち着け」
目に包帯を巻いたままでイシュリンの肩を頼っているワイクからも諭される。
「助けられずに仲間が死んで行くのを見るしかなかった……、その気持ちはわかるつもりだ」
ワイクは労る。
「だが、飛翔も知らなかった。飛翔を責めるのはお門違いだ」
「そんな仕打ちを受けてもか」
「そうだ。これが神の意思なら私は甘んじて受け入れる」
そのうえで彼をなだめた。
「オーヤ、復讐からは何も生まれない。憎しみの連鎖になるだけだ」
「さすが、神官に仕える禰宜さまはご立派だ。下賤なおれとは違う」
オーヤは自嘲して足元を睨む。
「おれはアルマに復讐する。おれ以外にも復讐したいやつ、家族を殺され仲間を焼かれ、報復のためなら死んでもいいと思っているやつは多い」
強く拳を握った。
「どうしてもやつらに復讐しないというのなら……、おれはレジスタンスをやめて、ここを出て行く」
〈続く〉
(昨日は台風で延期しました)。