12.ドームの最後の朝 (2)
またひとつ爆音がして、今度は隣町のある場所から黒煙が上る。
レジスタンスはどう出るのだろう。
チラリと真上を確認する。
「憂理」
飛翔が心配して走ってきた。
イシュリンとワイク、オーヤもこの高台に駆けつけ森の向こうを見つめた。
そのとき、すさまじい音とともに地鳴りがした。
いくつかの町が一度に壊滅し、黒煙が帯になってのぼる。
「アキだ」
アキはドームの近くまで来たものの、肝心なそれを破壊することはできず、代わりに近くの町を襲っていた。
本当の目的はイシュリンをおびき出すことだ。
「私を取り戻しにきたんだ……。怖い」
膝を抱える私を飛翔が励ました。
「大丈夫だ、憂理。このドームはやつには壊せない。イシュリンが神から与えられた強いチカラに護られている。攻撃されても魔力は通用しない」
「わかってる」
私は別のところを見る。
「彼を説得する」
イシュリンは決意する。
「これ以上の蛮行は止めさせなければ」
飛翔とワイクはイシュリンを見てうなづいたが、オーヤは後に退く。
「おれは残る。こちらが気がかりだ」
私を見てくるので顔を背けた。
「憂理を頼む」
飛翔はオーヤに言付ける。
「行こう」
イシュリンはふたりに声をかけ、転移する。
飛翔とワイクもそれを追い、姿を消した。
「みんな、家に戻るんだ。すぐに収まる」
オーヤが集まっていた人々に声をかけ戻らせた。
「お前も家に入ってろ」
「断る」
私が拒絶すると、いらだった。
「ちからづくでも放り込むぞ」
「そのちからづくを使う男が、イシュリンや飛翔のいない間に手錠をかけられ抵抗できない私の魔力を奪うかもしれない」
「おれがお前を穢すとでも思っているのか!」
怒りで声を震わせたが、拳を握ると顎を引き背を向けた。
「好きにしろ。ただし、おれはお前を見張る」
十メートル離れて神殿へ行き階段に腰掛ける。
私はしゃがんだままそれを確認すると、また前に直り、イシュリンたちが向かったであろう森の上空を眺めた。
〈続く〉