まぁ、事故的なぁ・・・・・
「「「……」」」
「えっーと、ほら、その何というか…勢い余ってやってしまったとかたまにあるじゃん。」
「ねぇよ。」
「ないな。」
「ありませんね。」
全否定である。
あの後俺は、腰を抜かしていた赤髪の青年、フェイと吹っ飛んできたダークブルーの髪の色した青年ルッツを起こし(その際怪我をしていたルッツを回復魔法で少しだけ直し折れていそうな片腕そこらへんに落ちていた木片で固定しておいた。)二人と俺の不手際で頭をつぶされ飛んで往った拍子に木々をなぎ倒していった結果体中に木片と傷だらけの見るも無残な状態にされた緑色の魔物、グリーンオーガって個体名らしい魔物を引きずりながらノーマットさんが待っているはずの街道まで戻った。
街道に出ると律義に待っていてくれたノーマットさんが慌てて近づいてくると俺の引きずってきたものに驚き悲鳴上げるが俺が何とかノーマットさんを落ち着かせ、終始無言で付いて来た二人とこの魔物について先ほどあったことを説明するとノーマットさんも無言になり、なんか罪悪感から言い訳じみた事を言ったらこの始末である。
「っで、お前はナニモンなんだよ。」
呟くようにフェイが俺に問いかけた。
「ノーマットのおっさんは町でよく見るし、おさっんに孫娘がいるって聞いたことあるけどちげぇよな。」
不信感を露に睨むようにこちらを見てくる。そんなフェイに対して俺が何を言うか悩んでいると。
「おい、フェイ俺たちは命を助けてもらったんだその態度はどうかと思うぞ。」
「ッ…だけどよぉ。」
「だけどじゃない。…はぁ…すまない礼もまだなのにクロ…さんでしたよね、フェイの馬鹿が無礼な態度をとってしまった。」
ルッツは俺に頭を下げるとそれを見たフェイも「俺は、バカじゃねぇし……悪かった。」とぶっきらぼうに呟くとルッツと同じく頭を下げた。
「いや、そんな別に気にしてないですよ…お、私はただの旅の者ですから。」そう言い頭を下げ続けている二人に頭を上げるように伝える。
「…それにしても、グリーンオーガを一蹴りで仕留めてしまうなど…クロさんはA級いや、それ以上の冒険者でしたか。」
ノーマットさんはグリーンオーガの死体と俺を見比べて何か納得したみたいに俺に話しかけてくる。
「…冒険者?って何ですか?」
「おや、違いましたかな。冒険者とはそこの二人の様に冒険者ギルドに所属して依頼をこなしお金を稼ぐ者たちの事ですよ。私はてっきりクロさんはかなり上級の冒険者だと思ったのですが。」
頭からつま先まで上下するように俺の姿を見るノーマットさん。そんなにもこの格好がおかしいのかと思い恥ずかしい気分になってしまう。
「はぁあ?こんなチビが上級冒険者ぁ~。ねぇ、ありえねぇよのノーマットのおっさん。」
割って入る形でフェイが声を上げ。その隣でコイツはまた、とため息を漏らしながら怪我をしていない手で頭を押さえているルッツがいる。
「ほぉ、ではフェイ君はなぜ、そう思うのですか?」
「いや、だってこんなちっさいしまだガキだぜ。一目見ればわかるだろ。」
「外見ですか。」ノーマットさんが呟くとその言葉に同意するフェイとダメだこいつみたいな表情と頭を左右に振っているルッツ。
「フェイ君、世の中には見ただけその者の本質を見抜く魔眼を持った者もいます。でも君は持っていないですよね。それなのにただ外見が幼い少女というだけで実力がないと判断するのは冒険者としては落第点ですよ。それにクロさんは君たちが逃げ出すほどの相手を一撃で倒している実力者です、もし冒険者なら上級の冒険者っと思っても…」
「ノーマットさん、ノーマットさんそのぐらいでいいですから。」
徐々に熱を上げるノーマットさんをなだめると、「おやおや、私とした事が…」と言いながらノーマットさんは頭をかく。
「…さて、これからみんなで、近くの……リームリットだっけ。の町に行くでいいんだよね。」
俺が三人に聞くとノーマットさんとルッツの二人が頷き、フェイだけが嫌そうに顔をそらした。何故だろう完全にフェイから嫌われてしまったらしい。
取り合ずフェイの事は置いとくとして「えっと、コレどうしますか?」俺は目の前にある魔物の死体を指さす。
「どうするとは?」
「火葬は森なのでまずいでしょうから穴を掘って…」
「ちょ、ちょっと待って下さい。クロさん何の話をいているのですか。」
「えっ、だからどう死体を処理すかの話ですよね。」
「しょ、処理ですか?!」
俺の話を聞いて驚き顔を引きつらせるノーマットさんとルッツ、さらにはフェイにすら何言ってんだコイツみたいな感じの表情でこちらを見る。
「いや、だって食べる所なんて無いでしょなら此処の捨てて置くのもあれでしょうし。」
「た、たしかにオーガ種は食用に向いませんがその硬い皮膚などはよい防具になりますし一部と薬草を用いて特殊な薬品が造ることもできるのですよ。」
へぇー、っとノーマットさんの説明に納得していると隣から「…すまないが、オーガが出たとギルドに報告したいのでできればこのまま死体を一度ギルドまで運びたいのだが。」とルッツが言ってきた。
いいですよ。と俺が返事すると、では荷台を使って運びますか。と快いノーマットさんの申し出にお願いしまと頷く。
「さて、運びますか。………ふん、ふぬぬぬ。」
ノーマットさんは魔物の死体に近づき持ち上げようとするのだがピクリとも動かない。俺が手伝いますよ。と言い軽々と持ち上げ荷台に運び入れると,あ然とした表情でノーマットさんから見られたのだった。
それからしばらく、再び幌馬車に乗り特に会話もなくゆっくりと森の中の街道を通り抜けちょっとしてリームリットの町に到着した。
リームリットは辺境の町とノーマットさんは言っていたがかなり大きな町で石組みの大きな防壁で町をすっぽりと囲んだ城郭都市だ。
「おおい、そこの馬車止まれ。」
町の門まで近づくと衛兵らしき鎧を着たおじさん兵士に止められた。
「ん、ノーマットさんじゃないかそれとフェイにルッツとそこの嬢ちゃんは見ない顔だな。」
「ああ、ベントさんおつかれまです、今日の検問はベントさんでしたか。」
「そういう事だ、取り合ず身分証かギルドカードの提示をたのむよ。」
しまった、森の中に居たのでそんな物は持っていない。青い顔をして慌てていると。
「あれ、クロさんどうかしましたか?」
「その、どっちも持っていないです。」
「無くしたのか?ふむ、どちらにしろ発行料銀貨一枚とカードじゃないから入税料銅貨一枚だな。」
「あーお金も…」
「おいおい、嬢ちゃんそれじゃあ町に入れられんぞ。」
衛兵のおじさんが困った顔で頭をかく。転生してから森の外に一度も出なかったつけがここで出るなど思いもよらなかった。
「では、私が払いましょう。」
そう言ってノーマットさんは懐から革の小袋を取り出して衛兵のおじさんに二枚の硬貨を渡した。
「ノーマットさん、そんな悪いですよ。」
「いえいえ、この程度大した額ではないですよ。」
「でも。」
「ふむ、ではあのオーガの一部を買い取らせてもらいますかな。」
「それは別にいいんですけど…」
馬車の隣にいるルッツに視線を向けると。「俺たちが討伐したわけじゃないからクロさんの好きにするといい。」とルッツが言うのでお言葉に甘えることにした。
「どうやら話がまとまった様だな。なら嬢ちゃんはこっちに来てくれや。」
俺は馬車を降り衛兵のおじさんの後をについていくと門の近くにある詰め所まで通された。
「まぁ、嬢ちゃんはないだろうが一応聞いとくがこれも規則でな。どこかで犯罪を犯してないか?」
短く「無いです。」と答えると衛兵のおじさんは頷き長方形の板を渡してきた。
「これは?」
「ん?ステータス版を知らんのか。」
「ステータス版?」
「あぁ、簡易的だがその人の情報がわかる代物だ。」
「えっ!」
「はは、と言ってもそいつの名前と他の町など罪を犯したかどうかだけだがな。」
はぁ、びっくりした。これでドラゴンとバレればパニック間違いなしだったな。
「じゃあ、ソレに魔力を流してくれ流し方が解らないなら痛いかも知れんが少し血を垂らしてくれればいいんだが。」
「あ、大丈夫です魔力流せますから。」衛兵のおじさんに伝えステータス版に魔力を流すとステータス版が淡く輝き。
クロ 賞罰なし
と映し出され、それを見た衛兵のおじさんは羊皮紙らしき紙に羽ペンでスラスラと書き込み赤い蝋を少したらし指輪印章で紋章入れる。
「ほい、じゃあこれな一応またなくしても発行はできるが金が掛かるからな無くさんようにな。」
衛兵のおじさんから身分証を受け取り小さく畳みポケットの中に入れたように見せかけ【インベントリ】にしまい軽い会釈をすると詰め所から出て大きな門を潜り抜けると…
昔テレビで観た海外の古い石造り町にそっくりな街並みとガヤガヤと活気あふれる人々が行きかう風景が俺の目の前に広がった。