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冒険者と魔物と商人とドラゴン幼女

 現代地球ではない異世界イシュラース。東の広大で様々な種族が存在する地アルフェン大陸の南東にある辺境の町リームリットその近くにある東の森。


この森は、栽培が不可能とされている薬草が多く自生していてそれを原料とした傷に効くポーションが冒険者たちの中でよく使用され、またそれを採取するクエストもリームリットの冒険者ギルドで常時募集され続けている。


 「ハァハァ、…グッ急げルッツもうすぐ町だ!!」

 「……フェイ…すまねぇ、俺はもう…」


 森の中、二人の冒険者が息を切らしながらも走り続けているのだが片方の冒険者は怪我をしているのか片腕を抑え青い顔をして息も絶え絶えに苦悶の表情を浮かべている。

 

 「ルッツ何を言ってんだ!!すぐそこに街道だってあるだ道も楽になる。だから」

 「だからぁ!!…このままじゃヤツも町に来てしまう。そうなれば少なからず町に被害が出るだろ!」


 リームリットで生まれ育った幼馴染で親友のルッツとフェイの二人は、半年前二人の憧れであった冒険者となりFランクから始まった二人は着実に初級クエストをこなしていき今日も森の奥深くに立ち入らなければ比較的安全に薬草採取が可能なこのクエストを受けてこの森まで来た二人だった。


 このクエストは何度も受けたことがあったし森の浅い所を縄張りとして生息している魔物、ゴブリンは複数体で動き森の木々の隙間素早く抜けて駆けるフォレストウルフ達とも何度も戦闘をして十分に対策もしていたのだが今日は少し違った。いつもの様に辺りを警戒しながら森を進み薬草を見つけ採取中にソイツは現れた。


 初めに気が付いたルッツだった突如として襲ってきたソイツの攻撃を片腕につけていたスモールシールドで防ぐがあまりの衝撃に盾は砕け散りルッツはまるで人形みたいに軽く吹き飛ばされ近くの木に打ちつけられた。フェイもルッツが吹き飛んでいく様を見て思考が止まりかけるがすぐに冷静に緊急用に用意していた煙球をソイツ向けて投げつけると意識を失いかけているルッツに肩を貸しながら立ち上がらせてその場から逃走した。


 背後の煙球から出たであろう煙の中、視界を奪われたからかそれとも獲物を逃がしてしまったからなのか怒りにも似た咆哮を上げているのを聞いたのが最後だが着実にソイツは二人を追跡し迫って来ているのをルッツもフェイも理解していた。


 「じゃぁ!!どうすりゃぁいいんだよ!!」 


 焦りと不安から声を荒げてしまうフェイに対してルッツはフェイの目をまっすぐ見ながら


 「俺がおとりになる。」

 「は。」

 「俺はもう早く走れないこのままじゃあお前のお荷物だ。フェイ、お前が先に町に戻ってこの事をギルマスに…」

 「バカ野郎!何諦めてんだ!相棒を見捨てて一人で逃げれるかよ!!」


 ルッツの言葉を最後まで聞かずフェイは言い放つ。


 「フェイ…解ってくれ俺は限界だしヤツをここで止めなければ町に被害がでるんだ。」

 「ウッ、わ、わかるかよ…だったら俺がお前を背負ってもっと早く走るから。」

 「そんな事、無理に決まってんだろ。」

 「そんなのやってみなきゃ…ッ!?」

 「はッ!?」


 言い合いのさなか二人は背後からくる強烈な圧に顔を向けると背後の木に巨大な腕が伸び邪魔だと言わんばかりにバキバキと音を立て横薙ぎに払われ、3メートルは有るであろう巨体が姿を現した。 


 その姿は人間の様に二本の足で立ち体は緑色の皮膚に筋肉で膨れ上がりまるで鎧を身に着けているかの如く硬く引き締まっていて、額から角を生やし瞳から獲物を見つけた喜びと狂気がにじみ出ていて


 「ヴウァオオォォオ」

 ソイツ………グリーンオーガは歓喜の咆哮を上げた。


 

 「逃げろ!フェイ逃げるんだ!!」

 「なっ、ルッツ!?」


 ルッツは言い終わると同時に腰に吊るしていた片手剣を引き抜きフェイとグリーンオーガの間に割り込むように立つ。行け!短く吠えるとルッツはグリーンオーガに突撃する。


 「うおぉおお。」

 叫びにも近い声を上げ走るが何故か微動だにせずにいるグリーンオーガに向け持っている片手剣を構え無防備な脇腹に刃を振りを下す。刃がグリーンオーガに触れた瞬間、やった!と脳裏に浮かぶがすぐさまそれは掻き消えた。


 ルッツの持つ片手剣はグリーンオーガの脇腹を見事にとらえその刃は皮膚を裂きグリーンオーガに傷をつけるのは確実だ有ったはずなのだが、その刃は一ミリも皮膚を裂く事はなくただ脇腹に当たりそこで止まってしまう。


 「グっ、な、なんだと!?」

 衝撃的な出来事にルッツは動きを止めてしまい、グリーンオーガは自分に群がる虫を払うみたいに太い丸太ほどある腕ではたき飛ばす。


 ルッツはそのまま何の防御も無いままにグリーンオーガの攻撃を直接受け、軽々と吹き飛ばされ木々にぶつかり意識を失う。フェイその光景を目の前にして一歩も動けずにいた。


 「あ、あぁぁ」

 絶望的な状況、相棒が二度も吹き飛び一度目は盾で防ぎ防御していたから辛うじて助かったが、二度目はなすすべもなくただ吹き飛ばされ、ルッツが死んでしまったのかも知れない。グリーンオーガの圧倒的な強さルッツの死それらが入り混じりフェイの体はそこに縫い付けられたみたい動けず絶望の声を漏らしている。


 「ヴゥグゥクック。」

 頭の上から笑い声に近い声にフェイは顔を上げるといつの間にかすぐ目の前までに近付いていたグリーンオーガ。その顔は、凶悪な顔を愉快そうに歪めフェイを見下ろしていた。


 「うっあぁぁ」

 恐怖のあまりフェイはその場で腰を抜かし崩れ後ろに倒れる。そんなフェイの姿を見てグリーンオーガはますます顔を歪め口から笑い声をあげ、凶悪な武器である腕を振り上げそのまま勢いをつけフェイ目掛け腕を振り落とした。


 迫る緑色の腕を目にしフェイは死を覚悟し、恐怖で目を閉じた。


 ドンっと衝撃音がフェイの耳に届くがその衝撃は今で経っても体に伝わることはなく、恐る恐る目を開けるとそこには先ほどまでいた緑色の巨体の姿はなかった。


 「大丈夫ですか?」

 突然声を掛けられフェイはすぐさまに振り向くと、長い黒髪の幼い少女が立っていた。




◇◇~◇◇~◇◇~◇◇


 「ふぁ~あっと。」


 幌馬車の御者台の上で吞気にあくびが一つ出る。


 「ハッハハ、退屈ですかな?」

 「あっ、すみません。」 


 隣から恰幅の好いちょび髭を生やしたおじさんが和やかな問いに、すぐさま謝罪する。


 「いやいや、いいのですよこんなにも良い天気ですしなぁ~。あくびの一つぐらい出ますよ。」


 そう言い木々の間からさす木漏れ日に目を細め、再び朗らかに笑うこのおじさんは、名前をノーマットと言い商人で荷をこの先のリームリットという町に届けるため只今森の中の街道を抜けている途中だ。


 そしてなぜ俺が、この馬車に同乗しているかと言うと。あの呪いの腕輪の出来事から中々立ち直れずに2,3日ふて寝して過ごしそして心の整理、いや諦めが出来てついに長年住んでいたあの森をでた。


 それから山二つほど越え、森を抜け夜遅くに人が通る街道らしき道を見つけひとしきり喜んだあと街道のすぐそばで寝ていたら、朝方この道をたまたま通ってきたノーマットさんに声かけられ、しばらく会話ののちに町まで行くから一緒にどうだい?と誘われその誘いに乗り、こうして同乗させてもらっているのだ。


 「いやぁークロさんが街道近くで倒れているのを見た時は、何事か!と思いましなぁ。」

 

 クロとは、俺の事でノーマットに名前を聞かれたときに咄嗟に出た名前だ……朝、寝起きで頭がロクに回っていなかったせいで決してネーミングセンスがない訳では無い。


 「それはその申し訳ないことをしてしまいました。」


 たしかに荷物もなく少女が一人道の近くで寝ていたら事件性を感じるよなぁ等と思いながらノーマットさんに謝る。


 「私は何にも問題はありませんよ。ただ、この辺りは治安もよいですが魔物はどこにでもいますし、もしかする不埒な輩など出て来るかも知れませんからね。っとお節介が過ぎましたな。」

 「いえ、そんなことないですよ。ノーマットさんはとても親切でこうして同乗させいただき本当にありがとうございます。」


 俺が感謝の言葉を述べるとノーマットさんは恥ずかしそうに頭を掻く。

 

 「ハハハ、いやね私も孫娘がいましてね。クロさんよりも小さな子なんですがついついクロさんを見ていたら思い出して口が出てしまいました。」

 「その、お孫さんはリームリットに?」

 「いやいや、王都の息子夫婦の店にいますよ。この荷をリームリットの店に卸して少ししたらまた王都の店を見に行こうかと思っているいんですがね。」

 

 にこやかな笑みを浮かべ楽しそうに語るノーマットさんを横目で見ていると


 「ヴウァオオォォオ」

 

 突如森の中から人ではない何かの雄叫びが響き渡った。


 「な、なんですか!?」

 その声に驚き馬車を止め辺り見渡すノーマットさん。


 俺はすぐさまに魔法スキルの【サーチ】を使用する。このスキルは辺りの生命反応を検知するスキルで近くの反応を確認すると割とすぐ近くで三つの反応を示して、うち二つは人間で残り一つが魔物だった。


 「少し様子を見てきます!もし戻って来るのが遅ければそのまま町まで逃げて下さい。」

 「えっ、クロさん!?ちょっと待っ…」


 俺はノーマットさんの言葉を最後まで聞かず馬車を飛び下り、森の中に踏み込み先ほど反応があった場所まで走る。


 「うおぉおお。」


 反応があった場所のすぐ近くまで来て茂みから辺りの様子を窺うと一人の男が剣を片手に緑色の巨大な魔物に突撃して剣を振りかざしていた。緑の魔物は何の抵抗もなく男の剣を受けるが傷はつく事はなく、男もそのことがショックなのか棒立ちのままだ。

 魔物は目の前にいる男を腕で弾き飛ばすのだがその男がこちらに飛んできて慌てて男の背をつかみ裏に回り木に打ち付けられる衝撃を肩代わりしてその場にそっと下す。男は魔物の攻撃で意識を失っていたが浅く息をしている所を見るに命に問題ないようだ。


 「フぅ…さて、えっマズ」

 

 一息ついたところで再び魔物の方を見てみると魔物はもう一人の男に向けて巨大な腕を振り下ろそうとしていた。

 それを見た俺は両足に力を籠め飛び出すように魔物に走り、愉快そう笑っていた顔面に思いっきり蹴りをかますとボキボキと何かが砕ける感触と共にボールの如く魔物は吹き飛び周りの木々をへし折りながら飛び続け10メートル先ぐらいでやっと止まった。


 あ、やっちまったなと蹴った瞬間思いましただけどそんな急には止まれないし、しょうがないよね等と思いながら飛んで逝った魔物に手を合わせ、次に縮こまっていた男に向けて


 「大丈夫ですか?」そう問いかけた。

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