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プレゼントは○○でした。

 木々が生い茂葉の隙間からさす木漏れ日が辺りを照らし出す穏やかな森の中。


 耳をすませば何処からか小鳥の鳴き声が聞こえそうな平和な森なのだが、そんなのとは反対に定期的に地面が揺れ何処からかドンと低い重音を響かせながら森の中を黒い大きさな物体が移動していた。



 …俺の事なのだが。


 転生してから約100年と少し経った今、俺の体はすくすくと育ち三階建てのマンション程の大きさまで成長し生まれた当初は純白の鱗だったのだが何回か鱗の生え変わりが起こり真っ黒な鱗に変わってしまった。


 別に変わったのは身体だけではない。レベルもかなり上がり当初、友人の言っていたレベル上限まで頑張って上げようとしたのだがレベルの数値が四桁を越えた辺りから何かおかしいと思い調べたら、スキル欄にいつの間にか【レベル上限解放(無限)】というスキルが増えていてそのスキルがあるとレベル上限が無限になりいくらでもレベルが上がり続けてしまう。と当初の目標だったレベル上限まで上げるのはあきらめるしかなかった。


 レベル以外の事は概ね問題なく悠々自適な森でのスローライフを満喫していた。

 

 ……だったのだがそれは唐突に起こった。


 「……ガゥウ(あきた)。」


 昨日の夜、何気なくそう星空を見ていたらそう呟いている自分に気が付いた。

 転生し始めの時は慣れない体に初めてのサバイバル生活、自分より強く凶悪な魔物たち等その対処と対応に追われ忙しい日々を過ごしていたのだがレベルが上がり体にも生活にも慣れた頃には決った行動を繰り返していた。

 

 広い森の中と言ってもやれる事にはある程度の制限があり、専門知識も必要で殆どレベル上げと食料調達兼ねた狩りと森に自生していた野生の野菜を見よう見まねで作った畑で家庭菜園してその世話をしたり、そして食べて寝る。

 そのんな自堕落な毎日を送っていたのだが……同じ行動を約100年間ほぼ毎日繰り返していたらさすがに飽きが来ていた事に気付いたのだった。


 そんな訳で今現在とあるスキルを試しに森にある泉に来ている。


 泉と言っても都会にある緑色に濁った色の水はなく無色透明で覗き込めば鏡の様に自身の姿を写し出すほど綺麗な泉だ。

 ちらりと泉を見ればそこには血の様に真っ赤な瞳を輝かせ二本の立派な角を生やし鋭い牙を持つ凶悪な人相…ドラ相を持つ自分が映し出されていた。

 蝙蝠みたいな黒い羽根に威圧感ある巨体、さらにこの顔であるこのまま森から出れば色々大騒ぎになるに違いない。


 100年もの間森の中に引きこもっていたのだが昨日自分がこの生活に飽きている事に気が付き、考えた結果手っ取り早く環境の変化をしてみる事にした。

 手始めにこの森を出てみる事を思いつくが先ほど述べたとうり見た目は凶悪なドラゴンだ、こんなのが人里に現れたらパニック間違いなしだろう。

 実際この100年間、たまに森に人が入り込んだことが何回かあり、悲鳴を上げる逃げ出す者や剣を振り回しながら襲い掛かられた事もあった。


 …なので、この状態で森を出ていくのは非常にまずいので神様が転生の特典としてくれた【人化】のスキルを試してみようとしている。

 

この【人化】スキルは転生してからまだ一度も使ったことがないスキルでこのスキルを使用すれば文字通り人の姿になれるのだが、森の中で生活している時に人でいるメリットがないしこのスキルを使うといくつかのスキルが使用できなくなりステータスも大幅に減少してしまうデメリットが発生するので使わなかったのだけれども…


 「グゥウゥゥ(何事もチャレンジだな。)」


 この100年間身に染みて理解した事の一つだ。

 


 意を決して【人化】のスキルを使うと淡い光に身体が包まれ、体が内側に引っ張られていく感覚が徐々にに強くなり光の輝きも増していき眩しさに目を閉じる。


 体感で1、2分ほど目を閉じていると体の引っ張られる感覚がなくなりそっと目を開くと先ほどの光もなくなり月明りが照らす静かな泉が目に映る。

 

 約100年ぶりに二つの足で大地に立つ感覚、スキルを発動する前は見下ろしていた辺りの木々は、見上げるほど大きく……なりすぎじゃないか?

 想像以上に今自分が見ている視点が妙に低い事に不思議に思いながら泉に近づくと。


 「ん?んん!!」

 

 泉に映る自身の姿に思わず変な声を上げてしまったが、そこに映る姿は膝ほどある長い黒髪に赤い瞳の幼い少女だった。


 「ハハハ、マジか俺メスだったのかよ。」

 

 乾いた笑いと共にそう呟く俺の思考は軽いショックを受けていた。100年間も自身の性別の変化に気付けな事や男性でなくなった事の喪失感が一気に来ているかもしれないし、この見た目がかなり幼いという所にも疑問が浮かぶ。

 

 何故100年も年月を経ている俺の姿が14、5歳いや、身長が低いからもっと下ぐらいに見える容姿なんだ?普通に婆さんの姿か成人の女性ぐらいになるんじゃないのか?


 色々な疑問が頭に浮かぶがその疑問に答えてくれる人はいないし自身でその回答にたどり着くはずもなく、ただ短くはぁ~と軽いため息をつきこれがファンタジー世界なのだと思い諦める様に頭を切り替えていく。


 「とりあえずこの姿になってしまったものはしょうがないとして…まずは服をどうにかしないとなぁ。」


 今、俺のは生まれたままの姿…全裸のままで一人森の奥にある泉に立っているという、とても犯罪チックな状況なのだ。当然このままでは町に行くどころか森の中も自由に歩けないしこの場を誰かに見られたら痴女扱いだろう。


 「えーっと、なにかあったかな?」


 そう言いながら手をかざすと目の前に黒い渦ができ、そこからガシャガシャと金属音を出しながら物が吐き出さられていき、そこに小さな山が出来上がる。


 これは【インベントリ】と呼ばれるスキルで色々な物を収納、保管、排出でき【インベントリ】で保管したものは時間経過をせずそのままの状態を保つことができて便利なのだが生きているモノは【インベントリ】に収納する事が出来なかった。


 また【インベントリ】には個別にする事できて今出したのは前に森に入ってきた人たちの落し物で多くが俺に襲い掛かってきた人物で、その人たちは殺さずに適当にあしらい気絶させ森の外に放り出したのだが武器を持っていたらまた襲い掛かってくると思って必要最低限の護身用のナイフぐらいを残して他の武具類は没収した物が今目の前にガラクタの山の様に積まれている。


 「うーん、やっぱ剣とか槍とか弓みたいな武器ばっかりだな。…他は食料や木材、鋼材とかだしなぁ。」


 厳密にいえば狩った魔物の皮とかもあるのだが皮の処理の知識も無いし、軽い縫物ぐらいはできるけど一から服を作るなんて出来ないので選択肢から除外している。


 「さて、どうしたものか。」


 武器のガラクタの山の前で腕を組みうんうん唸っているとアンバランスに積みあがっていたのか、突然目の前の山が崩れ見覚えのない箱がコロコロと足元に転がってきた。


 「なんだ、これ?」

 

 謎の箱を拾い上げると何か紙の様なものが挟まっていて、その紙を広げると…


 『ハロー神様だよ!転生後を楽しんでいるかい?エンジョイしてるならいいけどしていなかったなら、是非ともその新し世界で楽しくエンジョイしてもらいたいね!!』


 無駄にテンションの高い出だしに苦笑しながらも読み進めていく。


 『それで!それでね、君にオマケを付けておいたと言ったの覚えてるかな?忘れらていたなら神様悲しいなぁ、でもこれを読んでいるという事は覚えていてくれたんだよね、ね。でオマケだけど何がいいかなぁと神様考えました。それで君にあげた【人化】のスキルは服まで作れないし元に戻る時に着ていた服を破いてしまう可能性があるんだよね。だから神衣(かむい)の腕輪をプレゼントする事にしたよ。』


 ……ごめん忘れていたわ。と心の中で謝罪しながら箱を開けると銀色の腕輪が収まっていた。他にも使用方法が書かれたメモもついていた。


 使用方法は簡単で腕輪を付けて魔力を流すだけで自動的に服が出来、着衣してくれるらしい。まるで狙いすましたみたいに絶妙なタイミングにほくそ笑みながら腕輪に手を通して、魔力を流すと少し大きめだった腕輪は俺の腕にぴったり(・・・・)のサイズまで縮み体の周りが光それがだんだん形を成していく。


 「……これは、たしか日曜日にやっていたアニメの」


 できあがった服はフリフリが大量についたパステルカラーの魔法少女系のコス服だった。泉に映る姿に再び脳がフリーズしかけるが腕輪をとれば服はなくなるし町で普通の服を買って着替えればいいと判断が付いたのでそこまで取り乱すこともなく平然といられたのだが…ぺらりと服から何か紙が落ちてきた。


 「ん?なんだ…はぁあ!」


 それを拾い上げ読むとそこには最悪と言っていい内容が書かれていた。


 『P・S この神衣の腕輪は一度つけて起動すると二度と外れる事はなく、たとえ別の服に着替えてもこの腕輪に設定しておいた【可愛い】服じゃなきゃ腕輪の魔力で自動的に破棄されるからね。もちろん腕輪は破壊不可能の神器なので服も耐久性バッチリで仮にどこか破けても魔力で自動修復するしどんな汚れも弾く優れ物だよ。大きなドラゴン時は魔力として体内に収納されるから安心してね。 神より。』


 


 「………………ふっざけんな!なにが神器だ!ただの呪いのアイテムじゃねかぁ!!」

 

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