プロローグ2
「ドラゴン?」
あれか?爬虫類みたいに体中が鱗に覆われていて蝙蝠の羽に似た翼があって口から火を出し、何故か綺麗なお姫様を攫ったり金銀財宝を巣穴に集めてRPG的には勇者に倒される感じのヤツか。
「なんか君、変に知識が偏ってるね。」
あきれた感じの声を出す神様。
「…まぁ、いいよ。君の考えている姿の者もいれば別の姿した者いるそこは人間と同じ個体差だよ。あと、お姫様を攫っちゃたりしてしまう。とか金銀財宝を集めてしまうのは、そのドラゴンの性格だから君が記憶を保持したままを望めば性格が突然変わる事はないよ。」
そうか人によって良い人もいれば悪い人もいるからなぁ…
「それにドラゴンに転生すれば、種族の能力値が人間と比べ段違いに良いから魔法の制限がなく使えて、強力なスキルを覚えれるよ。空も自由に飛べるし本来は年を経たドラゴンのみが得れるスキル【人化】を今回は特別に転生特典として覚えた状態で転生させてあげるよ。」
能力値?スキル?なんか急にゲームみたいになってきたな。
「そこ世界の創造を管理する神が君のいた世界のサブカルチャーにドハマりしてね。自分が創る世界にその要素を組み込んでしまって……まぁ、できてしまったものはしょうがない。という訳でね【ステータス】や【レベル】とかも存在するからね。」
「良いんですか?そんな趣味丸出しで世界を創ったりしてしまって。」
「…あまり良い事とは言えないね、ハハハ」
光る球体のため神様の表情はわからないが渋い顔をして苦笑いしてるに違いない。
「でもね。世界を創るのは僕たちの仕事だけどその形を…どんな世界にしていくかは、君たちその世界に存在する者たちが創り上げて往くものなのだよ。」
……
「とそれらしい事言って好感度を上げて置くのも仕事の内なんだけどね。」
「…おい。」
余計な言葉でいいセリフも台無しだ。
「まあまあ、残念な神様が多いことについては置いとくとして…」
「いや、だめでしょ。そこ割と重要なことだと思いますけど!」
そんな俺のツッコミを無視して神様は話を続ける。
「今重要な事は君の転生であり、ドラゴンに転生かゴブリンに転生かどちらが良いんだい?」
「あれ、いつの間にか選択が二択になっている!?」
「いやー、だいたいのここに呼んだ魂たちはチートな能力をあげるよ。って言ったら喜んで転生していくのに君は、先ほどからぜんぜん転生する気になっていないから。」
「ウっ。」
確かに神様からあれこれ聞いたがいまいち転生したいと思うほどではなかった。だからとしても急に選択を迫られても…
「早くきめなきゃ強制でゴブリンだよ。因みにゴブリンはそこの世界で最弱、人々からはほぼ害虫扱いで知能も低いからゴブリン同士で殺し合いしてしまう困った種族なんだよね。……でどうする?」
そう神様が言うと光の球体から反論を言わせない圧を放つ。
最早後はない。
「…じゃあ、ドラゴンで。」
こうして俺のドラゴン転生が決まり、あれやこれやと色々な転生についての事柄を手短に説明させられ早々に転生する流れになった。
「最後に少し強引に転生を決めてしまったお詫びもかねてちょっとだけオマケを付けておいたからね。じゃあ、早々にまた出会う事のなく転生後の人生を楽しんでね。あ、ドラゴンだからドラ生か!アハハハ…」
のんきな笑い声と共に光の球体の発する光が強まり、そのまぶしさに目を閉じると意識が自然と遠くに飛ばされた。
目を覚ますと光のない真っ暗闇だった。いや、何か狭い入れ物に無理やり詰め込められたような感じだ。
自分が卵の中にいる事にそう時間は掛からなかった。気が付けば後は簡単で身体全身を使い中から卵の殻をド突き回すとひびが入り、そこを押し広げ卵の殻を破ることに成功した。
「…ガァア」
殻を破り初めて目に入ったのは現代の都会では目にす事は中々ない人の手が入っていない緑生い茂る木々と果てしなく遠く澄んだ青い空だった。
周囲に人の気配はなくドラゴンたちが大空を飛び回っている訳でもの無い。
殻から出て辺りを見渡すが木々が広がるばかりで建物などの人工物は一切見当たらない。
これは神様の手違いで適当な森に転生させられたのでは無く、望んで人やドラゴンがいない森を選んだ。
理由としては、元は人間だった俺がいくら知性的だと言われても種族の違うドラゴンが多く存在する場所に転生させられてもなじめない可能性があるし、人里近くでも下手に騒がれて討伐とか捕まって変な金持ちのペットとかにさせられても嫌だったからで。
ついでに、コンクリートジャングルに囲まれた都会育ちの俺は、テレビで観た自然に囲まれたのんびりとしたキャンプ生活…スローライフに憧れがあった。
もちろん、危険な事が全くない訳では無い。神様の話では危険な魔物がこの森には存在しているし森の中に人は今のところ住んでいないけど将来どうなるか判らない。
と不安要素はあるけどそれは割り切るしかない。絶対なんてモノはないのだから、それはもう自分で階段から足を滑らせて死んでしまうなんて事を経験しているのだし。
それにこの世界には神様の趣味が反映されてレベルやステータスとゲームみたいな事象?が存在する。ならそれを利用しない手はない。
残念ながら俺はゲームにそれ程詳しい訳では無いのだがゲーム重中毒者と自他共に認めるほどの数少ない友人がいて、そいつからこの手のゲームについて一度話を聞いた事がある。
たしか、その時聞いたのはネットオンライン上で世界中の人が遊ぶファンタジー物だったはずで、”レベルが存在するゲームはとりあず基本としてレベルを上限まで上げろ”と言っていたし。(正確にはもっと細かく話していたのだがその友人にゲームを語らせたのが間違いで、丸一日喋り続け翌日もそのまま寝ずにプレイしている所を横で延々と見せられて、グロッキー気味になり記憶も所々抜けているためあまり思い出せない。)
まぁ、レベルを上げてステータスを強化すれば自衛が楽になると思うし、ステータスが高ければ逃げる時も役立つはずだ。
…唐突に決まった異世界転生&ドラゴン転生だけど、会社いた時みたいにノルマや上からの無茶ぶりは無いのだから気楽に楽しく過ごせればいいか。
そんな軽い気持ちで俺は異世界での生活を始めたのだった。
「………………ガゥウ(あきた)。」