つなぐ
午前3時。街から活気という言葉が1番遠くなる頃。道路脇からは伸び放題の草が飛び出している町外れの道路に足音は1つもない。風なのか、それとも夜行性の動物が活動しているのか、かさかさと葉が擦れる音がやたらと大きく聞こえる。そんな中、ごとっと重い音が地面を走った。
道路の真ん中に嵌り込んでいる、はずのマンホール。それがゆっくりと持ち上がり、荒いアスファルトの上にずらされる。ぽっかりと空いた丸い穴は、星の散らばる夜空を吸い込んでしまいそうな程に暗い。そしてそれは音も立てずに現れた。
動物にしては余りにいびつで、しかし作り物にしては余りに有機物めいた青い腕。毛も爪もない4本の指を持つ手が広がり、べたりと穴の淵に指がかかる。そしてもう片方の手が淵を持つと同時に、恐竜のような細長い頭部が穴の下から姿を見せた。得体の知れない粘液で潤う表皮で星明かりを鈍く照り返らせながら、そのまま這い出てくる。
長い尾を持つ細身の胴体や獣脚、全身を露わにしたそれ……"歪獣"は四つ足の態勢でかさかさと擦れ合う草の音に顔を向ける。まともに目視もできなさそうな暗闇の中、身動き1つせずに凝視していた歪獣は次の瞬間音もなく跳躍した。