愛しき子猫(かのじょ)。
なろう処女作のヒロインの誕生日だったから書いてみただけです。
「ミーナ、今年も、お誕生日おめでとう!」
「あ、ありがと、カスミ……」
喜んでるみたいだけど、なんだか不思議がってるような感じ。もう人として生きてる時間のほうが、猫として生きてた時間よりも長いのに、知らないこともあるんだなって。
「何かあったの?」
ストーブの前で暖をとるミーナに寄りそうようにして、軽く抱き寄せる。相変わらず、あったかいとこが好きだなぁ、ミーナは。
「お誕生日って、なんでお祝いするの?そもそも、誕生日なんて覚えてなかったし」
「そうだねぇ、うーん……」
必死に頭を巡らせて、考えて、……こんなの、一度も考えたことなかったな、でも、なんとなく分かるような気がする。
「生まれてきてくれて、今まで生きてくれてありがとうってことだと思うな」
「うーん、どういうこと?」
「だってさ、生きてなきゃ、一緒にいられないわけでしょ?」
「そ、そうだね……」
生きてるから、一緒にいられる。こうやって、また一年、無事でいてくれて、一緒にいてくれて、ありがとう。きっと、そんな意味。傍にいるだけで、幸せになれるから。
「誕生日って、生れて来た日のことでしょ?だからそういうのも込めてお祝いするの。……生まれてくれてありがとうなんて、そんな大きなこと恥ずかしくて言えないでしょ?」
「そうだね、……でも、言ってほしいな、カスミには」
「え、ええっ!?」
恥ずかしいって言ってるのに、もう言ったのと同じようなものなのに、なんでそんなこと求めてくるんだろう。柔らかい温もりが首元に触れて、いつの間にか、するりと目の前にはミーナの顔があって。
「わたしには、そんなこと思ってないの?」
「そんなことないよ!でも、は、恥ずかしいって、言ったでしょ……?」
「だめ、聞きたいな、わたしに向けた言葉で」
あまりにも真っ直ぐな目で見つめられて、逸らすことすらできない。ゆっくり息を吸って、吐いて、……何回もやって、ようやく勇気が生まれてくる。
「嬉しいな、人になってまで、また一緒にいてくれて、私のそばにいてくれて、……あの時、ミーナのこと拾っててよかったな、そうじゃなかったら、今みたいにいられなかったもん」
「もう、わたしまで恥ずかしくさせないでよ……っ」
自分で言わせたくせに、そんな事言って。でも、かわいくて、どうしようもない。
軽く抱き寄せても、溢れてしまう気持ちを伝えるには足らなすぎて。
「好きだよ、ミーナ」
重なり合う唇の温もりに、また酔っちゃいそう。初めてこの姿で出逢った日から毎日してきて、もう何回してきたかもわからないくらいなのに。性懲りもなく私は、その感触に蕩けていく。この時にしか味わえないような快感も、愛情も、夢中になるしかないくらい気持ちいい。
「わたしも、好き……っ」
交わし合うキスが、もっと濃厚なものに変わっていくのも、時間の問題で、甘い吐息と、漏れる声と、触れるミーナの唇が、舌が、指先がくれる温もりと快感だけ。
もうちょっとだけ、なんて何回も言い訳して、ずっと続きそうなくらい止まらなくて。
「んんっ、く、くるしぃ……っ!」
大きなリップ音とともに離された唇からは、白く光る筋が光る。息が整うまでの間も、抱き合った体は離れようとしない。
「もう、あんなにしなくたっていいでしょ……?」
「しょうがないでしょ?だって、好き、なんだもん」
「へへ、……それなら、一緒だね」
私たちの間は、『好き』でずっと繋がってる。
それを、ずっと離さないでくれて、……好きでいてくれて、ありがとう、ミーナ。
照れくさくて言えないけど、きっとわかってくれてる。だって、こんなにも近くにいるんだから。




