貴族を相手にする前って色々と準備するのはお約束だな
システィのお母さんが生きているなら急がなくてはと思い、この辺りでは1番大きな町であるリリルカという町に瞬動を連続使用してやってきた。以前の町から10秒ちょいでこれた。
「本当にご主人様は訳がわからないですね…」
「俺もそう思う。まぁ急ぐ時しか使わないけどね」
システィも2回目となると慣れたのか以前は目を回していたが今回はけろっとしている。順応が早いことで。
「さて、公爵様に会いに行こうか」
「いや、そんな簡単に会いに行けるものじゃないですからね…」
このリリルカという町は、システィのお母さんを奴隷としているであろうクソ貴族のいる町ではなく、さらにその上の地位である公爵様がいる町である。システィの母親がいるであろう屋敷は前の町にもっと近い町にある。あの辺りの領主なのだから当たり前と言ったら当たり前なのだが。
最初は直接クソ貴族ことアルベルト伯爵をたたきつぶそうかと思ったが、その後ことを考えると色々めんどくさそうなことになりそうな気がしたため、先にお偉いさんに話をつけにきた。
と言っても、システィが言うようにそう簡単に会える相手ではない。というか、それよりも先に公爵様が俺の期待するような立派な貴族なのかを調査しないといけない。公爵様までクソ貴族ならこの地域に住む人には悪いがどっちも力でねじ伏せようと思っている。
「んー…どうやって会おうか。やはりここはお決まり通り貴重な品を持ってきたので公爵様に献上したいという形で行くか?」
「お決まり通りなのかはわかりませんが、それはありですね」
小説のお決まりというのは伝わらなかったが、この作戦はありらしい。
「じゃあまずはここの公爵様がどんな物が好きなのか情報収集といこうか」
「はい、了解しました」
まずは、どこへ向かおうか?情報収集の定番と言えば酒場だが、いかんせん俺は日本では未成年だったため、酒など飲んだことない。この世界では酒は何歳からオッケーなのかは知らないが、俺は飲む気がないので酒場はなしだ。
「となると、その辺の兵士さんにでも尋ねてみようか」
「いきなりそんなこと聞いて大丈夫でしょうか?」
なんとかなるんじゃない?と言って、俺は早速町の警邏をしているらしい鎧に身を包んだ兵士に話しかけることにした。
「すみませーん。ちょっといいですか?」
「うん?なんだ貴様は?」
髭を生やしたなかなか体格のいい兵士だ。いや、騎士様、なのかな?よく見たらなんか装備がとても良さげな感じだ。話し方も割と上から目線だし、結構身分の高い人だったかな?ま、いいか。
「公爵様の好きなものって何かご存知ですか?」
「公爵様の好きなものだと?なぜそのようなことが知りたい?」
やっぱり聞かれるよね。適当にごまかそう。
「実はこの辺りで商売を始めようと思っているのですが、公爵様に公認してもらえたら心強いかなと思いましてお願いしに行きたいのですが、その際何かお土産をお持ちしたいのですよ」
「貴様ごときが公爵様の後ろ盾などもらえるわけなかろう。諦めて細々と商売するがよいわ」
そして騎士様は去って行ってしまった。
「…失敗したぜ!」
「知ってます。さすがに無理がありすぎます」
うん、俺も割とむちゃくちゃ言ってる気がしてた。それにしても今の人偉そうだったな…あ、そういや相手が何者かなんて俺にかかればすぐわかることだった。
すぐさま鑑定スキルを使い今の騎士様の素性を調べてみた。
「…おお、騎士団長様だったのか。しかも貴族だ」
「いきなりすごい人に話しかけてしまいましたね」
次からは話しかける相手をきちんと選ぼう。そう思ってマップを開いて手頃な人を探していると、驚くべき人物がいるはずのないところにいるのに気がついた。
「え、なんで…?」
「どうされました?」
「いや、ほらこの広場の噴水の周りのベンチに座ってる人見て…」
「えっと…ウィリアム・リリルカ公爵…公爵様!?」
そうなのだ。なぜか町の真ん中にある広場に、公爵様本人がいらっしゃるのだ。これは…チャンスかも?
「とりあえず、行ってみようか」
「え、行くんですか…?」
「うん、何してるかだけでも確認しに行こう」
そんなに遠くないため、その場所から移動しないかだけ確認しながら向かう事にした。
広場に到着しても、未だにベンチに座ってるみたいだ。
「えっと…ああ、あの人か」
目的の場所には、フードを深めに被って顔を隠して座ってる人がいた。どうやらお忍びのようだ。それなら、知らないふりして話しかけられるかな。
あ、そういえば俺には詐術スキル先輩がいるんだった。さっきも先輩に頼っていればもしかしたらうまく行ってたかもしれないが…すぎたことはしかたない。とりあえず、行くか。
「綺麗な噴水ですね」
「ん…?」
詐術スキル先輩に頼って話しているため、自分でも何を言うかよく分かってないが、どうやらとりあえず世間話をふるみたいだ。
「いえ、ずっと噴水を見られていたので、好きなのかなと思いまして」
「ああ、好きであるな。私のお気に入りだよ」
「そうなのですね。私も旅していろんな町を回っていますが、こんなに綺麗な噴水を見たのは初めてです」
噴水を見たの自体初めてだけど。町は3つしか回ってないけど。
「そう言ってくださるか。町の人々は無駄なものだと言われることも多いのだがね」
「そうなのですか?ああ、まぁ確かに維持費はそこそこかかりそうですね」
「うむ、そんな事に金を使うのではなく、もっと他のところに使えということなのだろうな」
うん?なんか話し方的にこれは…もしかして?
「…気づいてますか?」
「うん?ああ、気づかれてる事には気づいているよ」
おう、なかなか鋭い人のようだ。俺が公爵様だと知って話しかけたことに早々にバレてしまっていた。
「私に何か用かね。見ての通りお忍びだから騒がないでくれるとありがたいのだがね」
「ええ、少しお話ししたいことがありまして…アルベルト伯爵について少々キナ臭い話を入手しましてね」
「なに?アルベルト伯爵だと?あの龍人属狂いがどうかしたのかね?」
龍人属が大好きだというのは本当のようだ。そして今の言い方的に、あまり良い印象も抱いてないようだ。
「この場で話すようなことでもないのですが…まぁ逆にここなら他の人に聞かれることもないですかね?」
「で、あろう。こんなところで重要な話をしているなど誰も思うまい」
一応マップであたりの確認しながら俺はストレートに本題に入った。
「その龍人属狂いですが…どうやら奴隷商人から龍人属を買ったそうです。こちらのツレも、一度誘拐されたのですがお眼鏡にかなわず棄てられたものでして。信憑性は高いですよ」
「なんだと…?」
公爵がチラリとシスティの方を見る。システィもぺこりと会釈した。
「蜥蜴人属…?いや、話的に彼女も龍人属であるのだな?」
「ええ、そうですよ。そして、奴隷にされているのは彼女の母親なのです」
「なんということだ…その話は本当に本当かね?」
「すみませんが、証拠らしい証拠は彼女の証言だけです」
本当は彼女も誰に買われそうになったか分かっていないので、証拠はほとんどなにもないのだけどね。
「潰してもいいですか?」
「…は?」
「彼女は私の大事なツレでして。少々腹が立ってるんですよ」
「潰すって…どうするつもりだ?」
「…単純に物理的に?」
はっきり言おう。ノープランだ!というか、マジで助けようと思ったんだけど、なんも考えてなかった。多分今の俺は相当頭もいいはずなのだが、元々そんなに優秀な人間ではないので自分で自分が使えないという情けない事に陥っている。
ならば全知全能先生は?と思ったが、どうやら全知全能先生はなんでもわかる辞書のようなものらしい。計画の立案などには役に立たない。いくつか役立たそうなスキルを提示してくれてはいるのだが、どれをどうするのかいまいちわからない。
「君は、何を言ってるんだ?相手は伯爵の地位にある貴族だぞ?君とそこのお嬢さん2人で勝てると思ってるのかね?」
「やっぱり無理ですかね?」
システィが何か言いたそうな目でこちらを見ている。たぶん俺1人で簡単にできるという事を言いたいんだろうがたぶん信じてもらえないので黙っててもらう。
「君がどれだけ腕がたつのか知らないが、やめておいた方が良い。特に今は」
「今はって、何かあるんですか?」
「…本当は機密事項なのだが、君たちが無理をしても困る。他言無用でいてくれたまえ」
システィと2人で神妙に頷く。
なんだろう、どうやら思ったよりもめんどくさいやつみたいだな伯爵は。異世界転生した人って必ず何かに巻き込まれなきゃいけないのかな…半分は自分から首を突っ込んでることは認めるけども。
「実は、アルベルト伯爵が魔物の軍勢を作っておると言う情報が入っているのだ」
「魔物の軍勢、ですか?」
「魔物を操る術を手に入れた、と自慢しているのを聞いたとある貴族が言っておってな。少し気にかかり調べて見たところ、どうやら本当らしい、と」
「魔物…ご主人様、もしかして?」
「かもしれないな…」
「うん?奴隷騒ぎ以外にも何か知っておるのか?」
「いえ、直接伯爵の事を知っているわけではないのですが、たぶん無関係ではない事に心当たりがありまして…ここに来る途中、ほとんど魔物に会わなかったのです」
本当はここに来る途中ではなく前の町に行く途中の出来事であったが、ここに来る途中も瞬動で来たから魔物に会ってないので嘘ではない。どうでもいいか。
「なんと…しかし、それだけではなんとも言えないな。この辺りはさほど魔物も多くない。会わないこともないことではないからな…」
「あーいえ、実は危機感知系のスキルと、マップのスキルを持っていまして…それで見てみると魔物が一斉にどこかへ向かって行ってるようでした」
「ほう、マップとはまた希少なスキルを持っておるのだな。いや、今はそんなことはよいか。それは、いつ頃の話であろうか?」
「2日ほど前です。その時は安全に旅ができるくらいにしか思っていなかったのですが…今の話をうかがい、ちょっと鳥肌がたちました」
「であろうな…よし、そなたの母親、私に任せてくれたまえ」
「え?よ、よろしいのですか?」
「恐らく、どのみち伯爵とは一戦交える事になるだろう。魔物の軍勢は、恐らくこの地を掌握するためにここを攻めるために使うのであろうからな」
「なるほど…魔物に襲わせれば、伯爵がここを襲ったとは何も知らない人たちは思わないでしょうからね」
「その後、自分たちでその魔物の始末をしてしまえば、英雄の完成だ。全て自作自演であってもな。その秘密を自分で漏らしているのだから無能も良いところなのだが…そういうわけで、実はきちんとした情報が入り次第、こちらから攻めようと思っていたところだ。こちらとしても、ありがたい情報であった。逆に感謝したいところだ」
「…ずいぶん簡単に信じてくださるのですね?こちらとしてはありがたいのですが、私たちが伯爵の間者だとは疑いにならないので?」
「こんな事を言うと何をバカなと言われるかもしれないが…そなたの言葉はどうしてだか信じられる。それに、そちらのお嬢さんの顔も、本当に母の身を案じているような不安に満ちた顔をしているのでな」
俺の言葉は信じられるって…神の子パワーかな?特にスキルを使ってないのだが。むしろ詐術スキルを少し使用しているような状況なのだが。
「そういうことでしたら、私たちは大人しくしておきます。どうか、よろしくお願いいたします」
「うむ、絶対とは言えないが、任せてくれたまえ」
公爵様に深く頭を下げ、俺たちはその場を去った。
「さてと、それじゃ、俺たちは宿でも取ろうか」
「はい…公爵様の作戦がうまく行ってくれるといいのですが…」
「いやまぁ最悪失敗してくれてもいいよ」
「え…?ご、ご主人様は、母を見捨てると…?」
「は?あーいやいやそういうことじゃないって!どうせ俺が助けるつもりだからってこと」
「公爵様に任せるのではないのですか?」
「うん、公爵様と伯爵が戦ってる間に、騒ぎに乗じてね」
基本目立ちたくなかっただけなので、公爵様が騒ぎを起こしてくれるのは非常にありがたい。全部公爵様がやりました!って言ってしまえばいい。
「どうする?システィもくる?」
答えはわかっていたが、一応聞いてみる。危険な事には変わらないから。
「はい、お供させてください。自分の身は自分で守ります。ご主人様にご迷惑はおかけしませんので」
「よし、じゃあ公爵様が動くまではこの町で準備していよう」
俺のすることはまず自分にできることの確認だ。システィはなんでもできると思いますよと言っていたが、いまいち実感が湧いていない。それに、できると思っていてできませんでしたーとかシャレにならないからね。
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とりあえず宿をとった。今回は2部屋空いていたので2部屋とった。システィは同じ部屋でよいと言っていたのだが、俺が良くない。こちとらまだまだ若い男だ。理性が絶対に保てるとも限らない。
そもそも、システィは俺を信頼してるからなのか、見られることを気にしない性格なのか、平気で俺の目の前で着替えを始めようとしたりする。その度に俺は顔を赤くしばっと目をそらしていた。これまでは野外であったためそのまま俺が離れればよかっただけだが、これが同じ部屋となると、俺は部屋を出ていかざるを得ない。たぶん、それをシスティは良しとしないだろうから部屋からも出れずに俺は俺の中の俺と戦わなくてはならない。一度それとなく注意したのだが、なぜかよくわからないという顔をされてしまった。
そんなわけで、宿で部屋を別にするのは絶対に譲れないところなのだ。お金はあるのだからちょっとくらい高くなっても構わない。あまり使わないとか言ってた気がするが使うべき時には使ってもいいだろう。いいんだよ。
部屋はとったが、俺たちはすぐに町の外に出てきていた。さっきも言ったが俺にできることの確認のためだ。それと、俺のやることが異常なことなのか、すごい人ならできるレベルなのかをシスティに判断してもらう。すごい人ならできるレベル以下の可能性をシスティが捨てていることがちょっと解せない。
「じゃあ今日は…魔法かな。まだ回復魔法しか使ったことないしね」
「あれは異常ですからね?初歩の回復魔法で傷が全てふさがり体力を全回復するなんて意味がわかりませんから。たぶんご主人様なら炎系の初歩魔術の炎の弾で鉄を溶かすくらいはするでしょう」
始まる前から今から行うことは異常であると決定されてしまった。魔法はその人の魔法力が高いほど効果が高くなるそうだ。例えば魔法力10の人が炎系の上位魔法を使っても、魔法力の高い人の下位魔法の方が強かったりするということだ。まぁそもそも魔法力の低い人はイコールで魔法の才能がない人らしいので、上位魔法を使うことはほぼ不可能なんだとか。意味もないし使おうとも思わないのだろうね。
「とりあえず、本当にそんな威力が出せるか炎の弾で試してみますか」
なるべく力を抑えて、手の先から炎の弾を飛ばすイメージで発動させる。すると人の顔より小さいくらいの炎の弾が飛んでいき、目標物であった岩にぶつかり消えた。岩は少し黒く煤がついたようになった程度であった。
「お?今のは普通なんじゃないか?」
「そう、ですね。ごく普通の炎の弾でした」
逆にびっくりみたいな顔をされてしまった。でも自分でもちょっと意外だったので責める気はない。
「うん、どうやら魔法でも手加減はできるみたいだ」
「そのようですね。ちなみに、全力で打つとどうなるのですか?」
「全力か…まぁ確かにどの程度できるかも知っておいた方がいいかな」
さすがに全力はちょっと怖かったので8割の力で炎の弾を発動させる。すると、今度は大きさこそ最初と変わらなかったが、炎の色が青かった。なんだっけ、青い炎の方が温度高いんだっけ?ガスバーナーとかでみたことあるけど。なんて思いながら弾を放つと今度は岩に当たるとそこには岩なんてなかったと言わんばかりにそのまま直進して、地面にあたり消えた。岩は溶けたというより消滅したと言った方が正しい気がする。炎に当たった部分が綺麗になくなり、岩の断面も綺麗だった。
「…鉄が溶けるどころの話ではなさそうですね。鉄が蒸発しそうです」
「全力だしたら本当にそうなるかもな…」
「今ので全力ではなかったのですか?!」
その後、上位魔法も試してみようと思ったのだが、全力でシスティに止められた。
次は、俺の武器の腕前だ。称号では剣を極めし者とかそんなものを持っているが、正直剣なんか持ったこともない。本当に扱えるのだろうかと思い、システィに稽古相手を務めてもらうことにした。システィは快く受け入れてくれたが、俺が使うのは一般的な武器でシスティは魔槍を使うという条件だけは譲らなかった。
「これだけ差をつけても死ぬ覚悟でお相手するのです」
そんなことを言われたが、システィを殺す気なんてさらさらない。あたりそうになったらちゃんと寸止めする……それができるかどうかもテストしてみないとわからないので確かに命がけなのかもしれない。
「まぁいいか。とりあえず、始めるぞ」
俺は本能のままに剣を構えた。しかしなんとなく自分の感覚を信じて剣を構えようと思うと、腕をだらりと下げた格好になる。どうやら構えない構えというのが極みに達している(らしい)俺の答えのようだ。
そんな俺を見て、システィが冷や汗を垂らしている。はて?
「……隙が全く見当たりません…」
どうやら俺はこんなにも無防備な感じなのに隙がないらしい。自分でわかってないのがなんだかはずかしい。
「しかし打ち込まなければ訓練にもなりませんね…いきます!」
そう言って、システィは目にも留まらぬ速さの突きを放ってきた…え?
「うぉぉお?!」
とっさに体が反応して間一髪でその槍を剣でさばく。あ、危ねぇ…
「って、な、ナンジャコリャ?」
俺の手に持っていた剣の長さが半分になっていた。どうやら今システィの持つ魔槍に真っ二つにされたみたいだ。
「…システィさん、強くないっすか?」
「そ、そんなはずはないのですが…?」
どうやら武の世界というのは、何も知らずにただスキルを持っているだけではどうにもならないものなのか…と納得しようとしてさすがにおかしいと自分の思考に待ったをかけた。
確かに自分は武とは全く縁のない生活をおくっていたが、今の自分は自分でもどうかと思うほどのチートなキャラだ。その俺が目で終えない速度の槍さばきってのは俺が慣れていないだけでは説明できないと思う。
俺はまさかと思い、昨日みつけたステータス看破というスキルを使って見た。これは誰のステータスでも見放題というまたしてもプライベートなんて知るかよそんなのというスキルである。
そして俺は驚くべきものを見ることになる。
「し、システィ…さん…?ちょっとご自身のステータス見ていただけますか?」
「え?あ、はい、わかりました」
そう言ってシスティがステータスボードを開くと…
名前:システィーナ・レオンハルト Lv.16
種族:龍人属
職業:神の子の眷属
能力値:HP4000/4000
MP2000/2000
筋力500
魔法力200
防御力550
魔防力300
知力400
運250
「……はい?」
いつの間にか、システィも化け物の仲間入りをしていました。本人も気づいていなかったようだ。ちょっと前に見せてもらった時はもっと低かった。あれが通常だとシスティも言っていたからこっちの方が異常なのだろう。
ちなみに、スキルは表記できないほど増えており、称号も槍を極めし者という称号を得ていた。
「な、ななななななっ?!」
「まぁ、落ち着けって言われても無理かもしれないけど落ち着けって…ほぼ間違いなく眷属とやらになったせいだろうから」
最初は眷属になっていても特にステータスに変化はなかったはずだが、力が浸透したのか、または神様がなんかしたのかはわからないがとにかく俺の半分に少し届かないくらいの強さは身につけていた。
さっきの一撃は槍を極めし者の称号パワーと、おそらく魔槍の力であったのだろう。なんとか避けられたが、当たってたら俺も案外危なかったのでは?死なないにしてもかなりのダメージは入っていたと思う。
「す、すごいですご主人様!ステータス、すごいです!」
「そうだな、すごいな」
目をキラキラさせて喜んでいるシスティは、なんだか子供っぽい。どうやら本当に嬉しいらしい。
「嬉しいですよ!だって前のステータスのままじゃ確実にご主人様にお仕えすると言っておきながら足を引っ張ることは避けられたとしてもいらない子決定でしたもの!これなら多少なりともご主人様のお役にたてます!」
などと健気なことを言っている。出会って数日でなぜこんなにも懐かれているのか謎だが、その目は嘘を言っているように見えないため嬉しいのだが少々気恥ずかしい。
その後は俺だけでなくシスティも自分の力を確かめようと、2人で暗くなるまで色々とやっていた。
そしてわかったことは、俺もシスティも常に力を抑えるように意識しないと下手すると気がついたら人が死んでましたということが起きるくらいチートな生き物となっていた。特に俺は慣れるまで人に触れることすらしてはならないのではないだろうか…