ピンチ(そうでもなかったけど)
前二話分公爵が侯爵になっていたので訂正しました。もしかしたらまだどこかで侯爵となっているかもしれませんが、正しくは公爵です。
あとちょっと短め。
ステータスオール300超えの人たちに囲まれている状況。公爵家の騎士の中でも100が限界だったので、この状況はとんでもないことだ。あの魔族を除いてこんなステータスは見たことがない。
俺たちを除いて、なんだが。
「はぁ!」
「それ〜」
次々と襲いかかってくる兵士をシスティとララがバッサバッサと切り倒していく。当然操られているだけなので殺しはしていない。
システィとララは最初は攻撃を受け止められていたが、ステータスが高いとわかると手加減なしで攻撃を行い始めたため、危なげなく兵士を倒していく。
槍使いのシスティと違い、ララは双剣使いだ。事前にそのことは聞いていたので神様製のチート武器はあらかじめ渡してある。名前は忘れた。
「えーい!」
マリーも杖で兵士を殴っている。この杖も当然神様製の杖だ。そのせいもあってなのか、見た感じ全然戦い慣れてない感じでポカッて効果音が似合いそうなものだが、実際の効果音はゴガンッて感じだ。鎧がちょっとへしゃげる。
「な、なんなんだお前ら!?どうしてこいつらに勝てる!?」
「こればっかりは運がなかったなとしか言えないな」
俺は武器を使わず素手で戦う。仲間たちもステータスが高いが俺はさらにその倍くらいあるので神様がくれた武器なんか使ったら殺しちゃうから。使わなくても殺さないようにするのが大変。自分で言っててあれだけどむちゃくちゃ物騒なこと言ってんな。
「ちっ、お前ら!俺を守れ!」
兵士以外の人間を自分の前に配置するリチャード。これではリチャードに攻撃するにはその周りの人間を倒さなくてはならないが、鎧も来てない一般人なのでちょっとでも攻撃すれば怪我する恐れがある。
「なんと卑劣な…」
「なんとでも言え!勇者である俺の身を守ることができるんだ!光栄に思うが…」
「リフレッシュ!」
「いい…は?」
リチャードの周りの兵士以外の人たちがバタバタと倒れていく。マリーの全ステータス異常を解除する魔法が効いたらしい。倒れたのは精神支配されてた影響かな?
兵士たちも魔法の範囲に入った人たちは倒れていく。リフレッシュ連発で余裕でことなきを得そう。
「セバスン!あいつらを倒せ!」
「む…」
唯一の懸念であったリチャードのお付きのセバスンさんがリチャードの前に立ち塞がる。というのも、実はセバスンさんはもともとかなり強かった。素でステータスが200もあるものまであったほどだ。かなりの猛者だ。
スキルも熟練度がかなり高いはず。何より気になるのが称号にある『勇者の友』である。
このデブは勇者(偽)であるためそんな称号は手に入らない筈である。つまり、本当にこいつ以外の勇者の知り合い、もしかしたら共に旅してたくらいなのかもしれない。伝説の勇者のパーティ、みたいな?
俺から見ても構えに隙はなく、かなりの強者であることがわかる。
「リフレッシュ!…ダメです!なぜか効きません!」
「ふはは!セバスンは俺の切り札だからな!念入りに支配してある。この支配を解くのは不可能…」
「えい」
「なの…だ…?」
パキンと音を立てて魔剣デクスカリバーが折れる。本当に折れちゃった…
武器破壊スキルを全力で発動して近くにあったフォークを投げてみたところ、あっさりと魔剣は折れた。
「せ、いけん、が…わ、私の聖剣が…?」
がっくりと膝をつくリチャード。放心して、金魚みたいに口をパクパクさせている。
拍子抜けするほどあっさりと、事態は収束してしまった。
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「本当に、ハクト様には頭が上がりません…」
「いや、あの、だからってそこまでしてもらわなくても…」
あの後、リチャードを拘束して、部屋にいる人たちが意識を取り戻したのだが、今全員俺の前で土下座の体勢をとっている。
何があったか公爵様に説明したあと、公爵様が全員に俺が神の子であることを告げた結果これである。
「いや、俺たちの方こそ偽物の勇者であることを黙ってたわけですから、ね?」
「それも私たちを無駄に恐怖させないための配慮であったのでしょう!」
ごめんなさい、俺たちは見ないふりをしようと思ってただけなんです。何もなかったら別にいいよね、的な気分で。思ったよりやばい魔剣だったのが予想外だったんだけど。
「本当に、勇者様が…いえ、リチャード様がご迷惑をおかけしました!」
セバスンさんも土下座で謝ってる。どうやらもともとロビンソン家の執事さんだったらしく、リチャードの呼び方は相変わらず様付けだった。
にしても、執事だって?この世界の執事は公爵家の兵士の倍以上に強いのか…いやここにいる執事さんでそんな強い人はいない。この人が特別なんだろうな。後で話を聞いてみようかな。
「まぁ、ほら、何もなかったから大丈夫ですよ。そんなに頭を下げられても、俺も仲間も困ってしまいます」
実際に困ってるのは俺とシスティとマリーで、ララはなぜかドヤァ…って顔してる。なんなのこの経産婦。心臓に毛でも生えてるの?
「どのようにしてこのご恩に報いればよいか…そうだ!祭ですよ!」
ガバッと顔を上げて名案を思いついたかのように大声を上げる公爵様。
「祭…が、どうかしたんですか?」
「現在行われてる祭をハクト様に捧げる祭にしましょう!」
は?!何を言いだすんだこの人!?
しかし、俺がやめるように言う前に、周りの人たちもそれがいい!だのこうしちゃいられない!などとっても乗り気になってしまっている。
「ハクト祭を開催するぞー!」
公爵様の掛け声とともにおおー!と全員がやる気満々に声をあげる。え?え?
こうして、勇者を迎えるための祭は神の子に捧げる祭、ハクト祭と名を変えて催されることとなった。やめてくれませんか…もと一般人の俺には耐えられないのですが…主に精神のすり減り具合が…