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異世界転生してもワーカホリックが治らない  作者: 伯耆富士
やってきました異世界へ
12/43

固有って言葉には結構憧れがあります。

「勇者、ねぇ」


マリーが仲間に加わってから更に1週間が経過したある日。流石に公爵様とのお話が遅くないかと思い、メイドさんに尋ねてみたところ、どうやらこの街に勇者が来るとの報告があったそうな。その対応に追われて今はてんやわんやな状況なのだとか。

俺たちのことはそれで忘れてしまったのかと少しムッとしたが、今公爵様が1番恐れているのは俺の機嫌を損ねてしまわないかということだという話も聞いた。それなのに俺たちとの話を後回しにするということは、それほど勇者が来るというのは重大なことなのだろう。

というか、そんなに怖がらなくてもいいのに…


「勇者って、そんなにえらい存在なの?」

「偉いというか、ありがたい存在、または珍しい存在と言った方がいいかしらね〜」

「ありがたいっていうのはわかるけど、珍しいっていうのはなんかイメージできないんだけど?」

「それはどのようにして勇者になったか、ということに関係します。勇者になるには主に2つほど方法があるんですよ。人々を魔物から何度も救ったり、とても強大な魔物を退治するか、もしくは聖剣のにない手として選ばれるか、の2つですね」


なるほど、つまり前者がありがたい存在で、後者が珍しい存在というわけか。聖剣に選ばれる勇者ってのは物語なんかでは聞いたことある話だな。アーサー王とか。あれは勇者じゃなくて王様として選ばれたんだっけか。まぁイメージはそんな感じだろ。


「それで、街としては街全体で勇者御一行を歓迎しないといけないわけですよ。私たちが後回しにされるのも、まぁ無理のないことかと」


なんでも街で祭りのような催しを開くレベルで勇者ってのは迎え入れなきゃならないらしい。そりゃ突然来るってなればてんやわんやになりますわ。


「本当に貴族様は大変ね〜」

「全くだな。俺には統治とかそういうのは向きそうにない」

「現人神様って本当に何もしなくてもいいんですね…」


マリーはやっと俺がありがたい存在でないとわかってくれたらしい。実際今はのんびり過ごしてるだけだからな。


「ハクト様、お茶が入りましたよ〜」


お茶を持ってきただけなのに、何故かムニュンとしたものを押し付けてくるララ。この前の夜にマリーが呼び捨てで呼んでくれと頼みにきた時以来、体の接触が多くなった気がする。というか、何かおかしい気がする。なにかララに対してすごく違和感を感じるのだが…はて?


「母さん、あまりご主人様に引っ付かないでください!」

「いいじゃないの〜。スキンシップは大事よ?」


システィがララを引き剥がそうとしているが、体格差がそこまでない2人の力は拮抗していてなかなか剥がせない…あれ、体格差が、ない…?


「ララって、そんなに大きかったっけ?」

「え?ハクト様ったら突然どうしたの?バストのサイズなら…」

「いやそこじゃなくて…そこもだけど…なんか、身長高くなってない?」

「あら〜、ハクト様にはついにバレちゃったわね〜」


なんのことだろうと思っていると、ララの姿が最初に見たときのグラマラスな見た目になった。なった、というか、ピントがあった、とか、そういう風に表現した方がいいような感じだった。とにかく、最初に会ったときのように見えるようになったのだ。相変わらず若いが、幼いというほどではない。そうだよ、この前なんかめちゃめちゃ幼いって思ってたのに。


「え?なにそれ変身スキル?それだとすると俺が気づかないはずはないと思うんだけど…」

「これね〜、固有ユニークスキルっていうらしいの〜」


なにそれ?全知全能先生に聞いてみる。すぐに答えは得られた。相変わらず便利。

固有スキルというのは、個人に特有のスキルらしく、そのスキルを持つ人は世界に1人だけだという超レアなスキルのことらしい。つまり、俺も持っていない、ということだ。そして大抵の場合固有スキルは強力なものが多いらしい。なんと、俺が持っていないスキルというものも存在するのか…。


「私のこれは『認識阻害』らしいわ〜。地味な名前だけどとっても強力ね〜」

「まさか、このお屋敷に来てからずっと…?」

「ええ、毎日姿を変えてたんだけど、みんななんの疑問も持たなかったわね〜」


まじかよ。それ以外にも色々試していたらしい。誰も気がつかなかったみたいだが俺はステーキの肉をフォークとスプーンで食べていたこともあるとか。今思い出してみればやたら切れないステーキがあったな…そんなあからさまな違和感すら消すことができるのか…すげぇな。


「流石にハクト様レベルになると、くっつきすぎると違和感に気づかれちゃうみたいね〜」

「いえ、仮にも神様であるご主人様に数日間気がつかれないとか、すごいどころの話ではないと思うのですが」

「固有スキルかぁ…俺は持ってないみたいだな」

「ハクト様はスキル全所持がもはや固有スキルと呼べるものだと…」


確かに。たぶん全知全能とかのスキルをまとめて作られる上位スキルは普通には手に入らないだろうしね。

それより、固有スキルと聞いて1つ思い浮かぶことがある。


「マリーももしかしたら固有スキルを手に入れてるんじゃないか?」

「え?私ですか?」

「ほら、この前なんだか嫌な感じがしたって言ってただろ?俺が感じ取れなかったとなれば、固有スキルということにならないかなって」

「あ、なるほど!ちょっと調べてみますね」


身辺整理に忙しくてスキルの確認はしていなかったらしい。ララは知らないけどシスティのスキルはそこまで増えてなかったしそんなに時間はかからないだろう。


「これでしょうか?『悪意感知』というスキルがあります」

「それっぽいかな。俺は持ってないし」

「でも、説明欄には悪意を感知するというそのままな説明しかないのですが…」

「説明になってないな…」


悪意感知なら俺の危険察知系のスキルと変わらない気がするが、固有スキルというからにはそれなりにつよいものなのだろうか?少なくとも有効範囲は広い。ここから俺の消し去った町までは届くみたいだし。だとしたらそこそこ強力なのかな。


「まぁ、あって困るような機能はなさそうだし、これからゆっくり調べていこうか」

「はい、そうします…あれ…?この感じ…」

「どうしたの?もしかして、また例の嫌な感じ?」

「はい、ちょっとだけですけど感じます。少しずつ近づいているような…」


さっそく悪意感知が働いたか。俺の方のスキルは何も反応していない。この辺りの違いもそのうち解明したいな。


「まぁ勇者様とやらが来るんだろ?なら俺たちが出る幕なしできっとどうにかしてくれるさ」

「そうね〜。私たちは一般人としてのんびりさせてもらいましょう」


例の魔族の男やあの町の復興に関してのことなら全力で協力するつもりだが、勇者のことは関係ないし、慣れてない俺たちが手伝うことなんてたかが知れてるだろう。


俺たちは勇者のことが片付くまでのんびり過ごすことにしたのだった。

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