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異世界転生してもワーカホリックが治らない  作者: 伯耆富士
やってきました異世界へ
11/43

女慣れしてるわけでもないのにラノベ主人公の女の子に対する態度は異常だと思う

俺とシスティは広い部屋の中、ひっそりと2人で豪華な装飾の施されたソファに座っていた。部屋にはいくらでもスペースがある。町の宿とは比べものにならないほど、広い。

それでも俺とシスティは、同じソファに座っている。


「…やっべ落ちつかない」

「私もです…」


別に甘い雰囲気とかは醸し出してないよ?

ただ、俺もシスティも現状にまったく順応出来ずにいるのだ。

そもそもが安アパートで一人暮らしをしていた俺と母親と2人ひっそりと生きてきたシスティにこんな豪華な部屋で過ごせと言われても困る。

何かやろうと部屋を出るとすぐにメイドさんやら執事さんやらが何かご入用でしょうかと即対応してくれたりもする。それも落ちつかない。俺は少し前まではアルバイトなんかでどちらかと言えば執事さんポジションの仕事詰めだったわけだし、システィだって人を遣うことなんかしたこともない。

ただ1人、もともと騎士だったララだけがそこそこ落ち着いていた。


「ハクト様もシスティーナも、普通にくつろいでいて大丈夫なのに」

「いやでもな?こんな王族もびっくりの好待遇は初めてでね?」

「私なんてちょっと前まで奴隷ですよ…母さんもそうですが」


困った顔で微笑んでいるララ。改めて見てもすげー若い。ていうか幼い。身長もシスティより低いしさ。未だにシスティの母親と言われてもちょっと信じにくい。醸し出す雰囲気は落ち着いた大人って感じなんだけどさ。


「というかなんでもやってくれると暇なんだよなぁ…自分で何かしてる方が落ち着く」

「公爵様も現人神様をちょっとでも怒らせると町が消し飛ぶかもしれないと必死なのかもしれないわね〜」

「しないってば…たぶん」


伯爵領を消し去るつもりもなかったので、可能性がゼロではないのが我ながら嫌になる。自分の意思とは関係なしにやらかさないとは限らないのでね…


「そういえば、ララも気をつけてね?システィのステータスボード見てわかったかもしれないけど、今までと同じように行動してたらとんでもないことになったりするからね」


ララの証の上書きもすんなり終わった。めちゃめちゃ簡単にできたけど泣きそうになるくらい喜ばれた。こんなことができる時点で俺の異常性には気がつくべきだったんだなー。


「そうね〜。今自分のを確認してるけど、ちょっと理解に苦しむ数値だものね〜…システィーナも見てみてよ」

「うわ、さすが母さん…私よりも高い…元々私より強かっただけありますね」

「へぇ、システィよりも高いんだ?俺にも見せてよ」

「ダメです」


あれー?


「え、なんで?」

「乙女の秘密を見せたくないわ〜」

「乙女…母さん何歳だと思ってるのですか。今年でもう…」


そこまで言った瞬間システィが部屋の端まで吹き飛ばされた。吹き飛ばされたはずだがふわっと着地するように倒れたので音はふぁさぁ的な感じだったのだが、システィの意識は完全に刈り取られているようでうごかない。


「乙女の年齢をバラそうなんてダメですよね〜」

「うん、乙女っていうのは秘密に溢れているものだよね」


見せたくないというなら無理に見る必要はないよね。ステータスボードに年齢は書いてないけどさ。しょうがないよね。俺はスキルで勝手に無理やり見ることもできるけどそれもやめとこう。バレた時が怖い。

…システィが16歳のはずだから、この世界での成人が15歳で、成人してすぐに産んだとしても30は越えて…


「ハクト様?」

「システィ大丈夫かなー?全然起きてこないなー!」


思考を読まれた…!?

この話題は口に出すどころか考えることすら危険なようだ。二度と考えまい。

でもちょっとは気にしてないとララの見た目が幼いせいで年上って忘れそうで…


「年齢なんて関係ないわよね〜」

「システィ起きろー!ご主人様このままだとまた死んじゃうかもー!?」


年下って思っちゃってもいいよね!大人の雰囲気があるしそんなことにもならないさきっと!

そんな命の危機に瀕している時、窓の外がなんだか明るくなった。なんだかしらないがグッドタイミング。


「あら?ハクト様、あれ何かしら?」

「うん?…ああ、なんだまた俺のせいか」


窓の外を見ると、教会に空から光が降り注ぎ、なんか天使みたいなのがいっぱい降りて来ていた。

すっかり存在を忘れかけていたけど、この町にいるもう1人の眷属には気をつけるようにまだ言ってなかったもんなー。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「ハクト様ー!?な、なんか、なんか怪我の酷い人の治療をしようと思って今まで使えなかった治癒魔法使ったら天使様、天使様がいっぱいー?!」

「落ち着いてマリーさん、治癒魔法なら大丈夫だろうから」


俺たちは公爵様に断って教会まで来ていた。もちろんさっきの騒ぎの中心であろうマリーさんに会いに来るためだ。

マリーさんは慌てすぎてなんかちょっと子供っぽくなってた。めっちゃ可愛い。


「あらあら、これは困ったわね〜」

「そうだね、かなりの人が集まっちゃってるからね」

「そうじゃなくて〜」

「マリーさんに何か問題があるんですか、母さん?」


ララはなんだかマリーさんを見て困った顔をしている。

はて、なんだろうか。騒ぎの原因になったマリーさんを注意が足りないとか叱るつもりなのかな。

そんなこと言ったら俺なんか町1つ消し飛ばしてる。俺のやったことに比べたら全く問題ないね!


「あの子、たぶんハクト様の好みのタイプの子よね〜」

「ああ、はい。マリーさんといる時はご主人様はだらしない顔をしておられます」

「なんの話ししてるんですかね?」


ていうか会って数日なのになんでそんなことわかってるんですかね?


「うちの子か私を第1夫人にしてもらうつもりだったのに、これはいけないわ…」

「ええ、強力なライバルです…え?母さん?私って?え?」

「本当になんの話をしてるんですかね!?」


ララは本気で悩んでおり、システィは自分の母親を問い詰め、マリーさんは未だに自分が何をしたかを把握しておらず騒いでおり、俺はそんな人たちに囲まれて困惑している。システィも俺もマリーさんも大混乱でなかなかにカオスな状況になってしまった。


「みなさん、話は人目のない所で…」


ワーワーギャーギャー騒いでる俺たちのところに、教会のまとめ役の老齢のシスターが来て教会の一室に案内してくれた。

これからこのパーティで行動するのか…どこかでストッパーとなる落ち着いた人を仲間に入れないと収拾がつかなくなるかもしれない。


とりあえず落ち着いた俺たちは、マリーさんに説明を始めた。


「な、なるほど、このレベルのステータスになると気をつけて行動しないといけないんですね…」

「私も瀕死のところをご主人様の初級魔法で全回復していただきましたし」


マリーさんのステータスはMPが8000で魔法力は700もあった。他のステータスはほぼシスティ以下だったが、魔法に関しては俺に匹敵するほどだ。そりゃ天使くらい降臨するわ。

あ、マリーさんは普通にステータスボード見せてくれたよ。年齢はやっぱり書いてない。炊き出しの手伝いの時に同い年だって聞いたから知ってるけど。


「すみません、先に忠告しておくべきでしたね…」

「いえ、ハクト様が悪いわけではないので!私が気をつければすんでましたし」

「大丈夫よ〜。回復魔法ならすっごい回復するで済むんだから。ハクト様みたいに攻撃魔法だったら教会くらいは簡単に無くなってたわよ〜」

「やめてララ…傷をえぐらないで…」


ララは大人なんだけど案外いたずら好きというか、人をからかうのが好きらしい。自分の娘のことなんて口を開けばいじっているレベルだ。

そんな感じでララにいじられていると、マリーさんの目が少し冷たくなった気がする。なんでっしゃろ?


「あの、システィーナさんは前にお会いしましたけど、そちらの女の子は誰なんでしょうか?」

「女の子?……ああ、ララのことですか?」


まだ俺の中ではララは年上ということは忘れていなかったようで女の子と言われて一瞬本気で誰のことかわからなかった。やっぱり初めて見る人からすれば子持ちの女性には見えないか。そもそも大人に見られてないみたい。


「ララさん、というのですか?一緒にいるということは、彼女も眷属、なんですか?」

「ええ、つい先日眷属に。ララはシスティのお母さんですよ。伯爵に捕まっていたのを助け出したんです」

「…え?システィーナさんのお母さん…?し、失礼しました!女の子などと言ってしまって!」

「ララティーナ・レオンハルトです〜。いいのよ〜、若く見られるのは嬉しいわ〜」

「若いというより幼い…いえ、はい。とってもお若いので年上の方には見えなくて。ハクト様もララと気安く呼ばれていたので」

「俺に仕えることになるのだから敬語はやめてくれって言われまして…あ、マリーさんは気にしなくていいですからね?様なんて呼ばなくてもいいですよ?」


神の子ではあるけど誰かに敬われるほど立派な人間(?)でもない。学校では後輩に結構慕われてたとは思うけど、それも親しみやすい先輩って感じだったしな。


「そう…ですか…」


ん?なんかマリーさんが少し悲しそうな…?


「そういえば、伯爵領の話は本当だったんですね!本当ならハクト様がおやりになったのだろうと思ってましたけど」


と思ったら明るくどこか嬉しそうに傷に塩を塗られた。いや本人にそんな気はないんだろうけどさ。


「ちょっと力加減がわかってませんで…これからは気をつけないと…」

「そうなんですか?てっきりハクト様がわざとやられたんだと思ってました」


なぜだ。俺はそんなに危険人物に思われていたんだろうか。地味にショック。


「あ、いえ、ハクト様が乱暴な方と言ってるのではなく、あの嫌な感じを払拭してくれたのだと思ってましたってことで…」

「嫌な感じ?」

「はい、眷属にしていただいてちょっと経った後に、なんだか伯爵領の方角からとても嫌な感じがしたんです。初めての感覚だったので嫌な感じという曖昧な表現しかできないのですが…それが先日、たぶんハクト様が町を消し去った時だと思いますけど、突然しなくなったんです」


ふむ、嫌な感じか。俺は特に感じなかったが…俺に感じとれなくてマリーさんには感じとれるなんてことがあるんだろうか?もしスキルによるものだとしたら俺は全部持ってるはずだし、マリーさんの言う感じだと使わなきゃ効果のないスキルではないはずだし。

スキル以外でもなにか目に見えないステータスというもののせいなのだろうか。長年の感とか、スキルの熟練度のような。

ともかく、その嫌な感じというのは気のせいなのかもしれないが無視できる話でもない。現にあの場所にはかなり危険な魔族がいたし。ステータスが俺や眷属と比べても見劣りしないくらいの値だったはずだ。普通ではないだろう。


「マリーさん、その話を今度公爵様とこの間の話をする時にもしていただけますか。気になることがあるので」

「あ、はい。わかりました」

「ならば、マリー。今日から本格的にハクト様にお仕えなさい。準備は、もう終わっているのでしょう?」

「は、はい。準備は終わっています!お世話になった方々にも挨拶も終えています!そういうわけですので、ハクト様、よろしくお願いします!システィーナさんとララティーナさんもよろしくお願いします!」

「え?あ、はい」


突然だったので気の無い返事になってしまったが、遅かれ早かれ俺についてくることは決まっていたのでまぁいいだろう。公爵様に言えば部屋も用意してくれるだろうし。

というわけで、


テレレレーン、マリーが仲間になった。


…RPGならこんな感じかなって思っただけです、はい。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


マリーさんを仲間に迎えた夜。俺は未だに慣れないフッカフカの布団に包まれながら寝れずにいた。

俺がらもともと使ってたのって煎餅布団だからさ、高級すぎると差が激しすぎて逆に眠れないんだよ。贅沢させてもらっといて文句を言うわけじゃないんだけど、人ってのは身の丈にあったものを使うべきなんだなって実感した。


「ん…?誰?」


そんな風に眠れずにいると、部屋の扉の向こうに人の気配を感じた。一人一人気配が違うのはなんとなく理解し始めたけど、まだ誰の気配なのかってのはいまいちわからない。

マップを開けば誰かわかるか、と思ったら返事が返ってきた。


「あ、あの、マリーです。夜分遅くにすみません、少しお話がありまして…」

「マリーさん?待ってくださいね、今鍵開けますから」


はて、こんな時間になんだろうか?


「どうしたんですか?なにかまだ気になることでもありましたか?」

「いえ、あの嫌な感じの話ではないのですが…」


マリーさんはなんだかとても言いにくそうにしている。本当になんだろうか?まさか、眷属になってなにか別の問題が…!?


「あ、あの!ハクト様!!」

「は、はい!?」


マリーさんは突然意を決したようにこちらの目を見て声をあげた。


「私のことも呼び捨てで呼んでくれませんか!?あと、敬語もやめてください!!」

「は、え?」


なに?呼び捨てで?え、そんなこと?


「私もハクト様の眷属ですし、1人だけ敬語を使われると距離を感じるんです…ララティーナさんには年上なのに敬語じゃないですし、ララって愛称で呼んでますし…私は確か同じ年ですよね?なら、私も、その、マリーって呼んでくれると、その、嬉しい、です…」


………ああ。


「あ、あの、ハクト様?」


………めっちゃ可愛い。生きててよかった。

必死に自分の思いを語るけど最後にはちょっと恥ずかしくなって顔を赤くして尻すぼみな感じになるのがなんとも言えない。

なんだろう、普段はしっかりしてる感じなのに、不意にこういうのを見せられるとグッとくる。最初に会った時は年上のお姉さんって感じだったのに、本当にもうね!いや同い年なんだけどさ。


「は、ハクト様、だめ、でしょうか?」

「ああ、いやダメじゃないよ。すまん、別に距離を開けてたわけじゃないんだけどさ。じゃあさ、マリーももっとくだけた話し方でもいいんだよ?」


さらっと呼んでみたが、むっちゃ緊張した。声震えてないよな?うるせぇ、好みの女性を呼び捨てにするのって緊張するだろ?するよね?え、しないかな?俺が彼女いない歴=年齢だからなの?


「わ、私は誰に対してもこんな感じですし、ハクト様は主人にあたる方ですし…」

「そっかー。まぁ、無理にとは言わないよ。そのうち慣れたら、そうしてくれるかな?」

「は、はい、ハクト様がそう言うなら…」


うん、いい感じのセリフじゃね?ラノベの主人公意識してみた。あいつらはこんな状況でもドキドキしない鈍感系が多いけど俺は心臓破裂してしまいそうだよ。


「うん、じゃあこれからよろしくね、マリー」

「は、はい、こちらこそ、よろしくお願いします!夜遅くにごめんなさい、お休みなさい!」


顔を赤くして走って行っちゃった。最後まで可愛いな、うん。

やばいなぁ、ドキドキしすぎてさっきとは違う理由で眠れないかもなぁ…


「これはいけませんねぇ…」

「…っ?!」


突然聞こえた声にビクッとして後ろを振り向くと、廊下の闇の中にララが立っていた。い、いつからいたの?


「ら、ララ…?」

「いけませんねぇ…うふふ…」


そのままスッと消えるように去っていった。


…やばいなぁ、ドキドキしすぎてさっきとは違う理由で眠れないかもなぁ…


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