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0 プロローグ
広間を静寂が包む中、踊り場だけが異質な雰囲気を放つ。
白尽くめ衣装を纏ったの5人の術者達は最後の精神統一をはかっていた50年振りとなるこの儀式が今まさに完了する時を迎えている。全神経を集中させて白い壁に魔方陣の最後の一筆を描いていく。
「今だ、魔力を流し込め。」
リーダーの男の掛け声で全員が両手を魔方陣にかざした。黒い線でしかなかった魔方陣が次第に光を帯びていき、周囲に光の粉が舞い上がり幻想的な雰囲気を作り出していく。次第に光は目も開けられないほどに輝きを増していき、術者の頬を伝う汗が伝った。
パンっという大きな音と閃光とともに魔方陣が砕け散った。魔方陣の後には精巧な彫刻や飾りが施された大きな扉が一つ。
「召喚口の構築は成功だ。後は扉を開ける聖女が現れるのを待つのみだ。」
5人に安堵が広がる。
早くお越しください、国に繁栄をもたらす聖なる乙女よ。
動く気配の無い扉を彼らは見つめた。