魔術辞典・下巻
第11章以降に登場した魔術の数々の一覧です。
術者ごとに纏めてあります。
<補足>
【天魔】
天人が使う魔術。水・風・雷・光属性の魔術の総称。
【地術】
地人が使う魔術。火・土・木・闇属性の魔術の総称。
【天地魔術】
火属性と風属性の魔力を合成させたものなど、天人や地人が一人では生み出せない色の魔力を、二種以上合成させて放つ魔術の総称。天人と地人の血を等しく引く混血種にしか使用できない魔術であり、あるいは天人や混血種の魂を獲得した地人か、地人や混血種の魂を獲得した天人が、この魔術を使うことが出来る。
<ファインが使用したもの>
※その場の思いつきで編み出して使った魔術が非常に多い。魔術名の末尾に★がついているものはそう。また、スノウの魂を得て以降、スノウの魔術を継承して行使した魔術の名前の末尾には☆がついている。
【地術・火属性】噴熱炎柱★……初公開:第188話
火属性の魔力を地表を介して走らせ、離れた場所で発生する火柱を作る魔術。火柱の大きさは人を呑み込むほどの大きさであり、無防備な相手に普通に決まれば概ね一撃必殺の魔術である。威力重視の大味な魔術なので、相手の力量次第では容易に対処されてしまいやすくもある。ただ、殺生を嫌う術者ファインをして、むしろ地力で凌いでくれそうな実力者相手に、はなから牽制目的で使うものなので、対処されやすさはデメリットにならないようだ。
【天地魔術・雷土属性】疾走雷火★……初公開:第189話
雷の魔術を地表に走らせ、その魔力を常に跳ね上げさせる土の魔力も同時に放つことで、電撃が地を跳ねながら拡散することを叶える魔術。威力そのものは控えめだが、広範囲地表を足の踏み場なく稲妻に満たす魔術であり、一対多の戦いでも使い道の見出せる魔術である。
【地術・闇属性】魔磁始点……初公開:第189話
引力を司る闇の魔力の塊を放ち、それによって敵の放った魔術の矛先を引っ張り、進行方向を変えさせる魔術。自分に向けて放たれた魔術を、自分以外の方向に向けさせて凌ぐものであるため、術士相手の戦いでのみ高い効果を発揮する。
【天地魔術・水火属性】渦巻く熱泉★……初公開:第194話
地表から生じる逆三角錐型の、熱湯が渦巻く渦を生じさせる。力強く渦巻く水流の物理的な力よりも、触れれば火傷は確実である、熱湯の温度の方がこの術の威力の本核を担う。ぱっと見た印象では熱湯の温度の程はわからないし、触れればいかに危険かが初見ではわからないため、火柱を生じさせる魔術などに比べると、相手の油断を誘うことも出来る点で大きく異なる。
【天魔・水属性】水流砲撃★……初公開:第194話
大きな水の砲撃を放つ魔術。とにかく威力重視、水量重視の大味な魔術であり、仮に敵に直撃させることが出来るなら、相応の破壊力で以って敵を吹き飛ばすことが可能だろう。もっとも、そうした使い道をしたいのであればもっといい手段が他にいくらでもあるわけで、単に攻撃用の術として使うのは利口と言えない。敵の高威力の火術や水術から逃れられない時、威力重視のこの水術で咄嗟に押し返すなど、そうした使い道の方が適している。
【地術・闇属性】魔力の黒き蝕……初公開:第197話
ファインにとっては成功率を保証できない、対術士における切り札の一つ。闇の魔力の球体を生み出し、それによって敵の魔術を、あるいは魔力を引き込んで、自らの魔力の中に捕えこんでしまう奥義である。そうして相手の魔術を一度封じ込め、さらにはそれを敵に投げ返すことが最大の目的であるため、敵対する術士にとっては、自分の放った魔術をそのまま返される形になる脅威的な魔術であると言える。一方で、ファインにとってもこの魔術を成功させるのは難しく、失敗すれば敵の魔術を生身で直撃を受けることとほぼ同義、つまりこの術の成否はほぼ死活の分かれ目であるため、余程追い詰められた状況でなければ使いたくないようだ。
【地術・土属性】木端微塵の爆砕円……初公開:第199話
地表を吹っ飛ばして起こる大爆発を生じさせるための魔術。巨体のアストラを押し返すほどの爆発であり、とにかくその爆発が生み出す威力は大きい。一方で、単に爆撃を起こすだけで熱も含まないため、地表が吹き飛んだ爆片を除けば術に威力はなく、戦場に干渉する魔術としては優秀でも攻撃力には乏しい。攻撃用の魔術として使うよりも、迫る敵を一度退けるためなど、そうした使い方としての方が大きな影響力を発揮する。
【地術・火属性】災波の侵略★……初公開:第221話
横幅の広い炎の壁を前進させ、逃げ場の無い形で相手に迫らせる魔術。手練の術士や高い身体能力を持つ相手でなければ、概ね発射した時点で勝負を決められる大技と言える。ファインはこうした術を、あくまでちゃんと凌いでくれそうな相手に牽制あるいは行動制限目的でしか使わないが、血も涙も無いような術者がこのような魔術を使える才覚に恵まれていれば、大量殺戮も見込まれる本来非常に恐ろしい魔術である。
【天地魔術・土水属性】凍て絶える土壌★……初公開:第252話
大地に魔力を放ち、駆けさせ、地表の温度を急激に下げる魔術である。効果はただそれだけ。木属性の魔力によって生成された植物の数々は、土壌に温度があることが生存の前提条件にあるため、この魔術によって地表の温度を奪い取ることで、敵の木属性魔術によって生み出された植物を一掃することが出来るのだ。攻撃力を一切孕まない、木属性の魔術への対抗策としてのみ活きる魔術だろう。
【天魔・風水属性】神酒纏い☆……初公開:第262話
速度を生み出す風と、物理的な強い力と緩衝能力を持つ水の魔力を纏い、擬似的に身体能力を向上させる魔術。サニーが最も得意とする格闘用の魔術と全く同じもので、スノウも同じものを使えていたため、母の魂を受け継いだファインがそれを行使する形で使っていた。ファインはそもそも格闘術に秀でないため、この術を使ったところで高い攻撃力を生み出すことには繋がりにくいが、護身用の魔術としてはそれなりに有用である。
【天地魔術・闇光属性】崩呪纏い……初公開:第262話
上記の神酒纏いを使えるようになったファインが、その少し前にカラザの時流冬結を見ていたこともあって、サニーとの戦いに備えて生み出してあった魔術である。
先述の魔術による、風と水を纏っての身体能力強化に加え、引力を司る闇の魔力と、斥力を司る光の魔力で以って、さらなる身体能力の向上を実現する。それは最強の敵サニーとの戦いさえも有利に進めるほど、目覚ましい効果を発揮したが、使い慣れないこの魔術はファインの肉体に及ぼす反動も大きく、戦いが長引けば長引くほどファイン自身も体を壊していく、いわば諸刃の剣であった。修練を積み、反動なくこの術を行使できるなら話も変わるが、若過ぎるファインがこの術を使う以上、術の名が示すとおりの危険性は払拭できないだろう。
【天地魔術・雷火属性】雷火の行進★……初公開:第265話
火花を散らす、雷属性の魔力を含んだ炎を相手に無数迫らせる魔術。単に火の玉を投げつけるよりは、雷の属性が混ざっているため、水の魔力だけで撃ち落とすのは難しいという点で勝っている。威力自体はシンプルな火術などとそんなに変わらないので、魔術による迎撃のしづらさを少々含んでいるのが唯一にして最大の売りである。
【地術・土属性】四双岩足★……初公開:第265話
背中から生じさせた、節を持つ四本の岩石を蜘蛛の足のように前方へと突き出し、敵の物理的な攻撃に対して強い威力で以って反撃する魔術。どう見てもセシュレスの蜘蛛足の使い方と同じであり、有り体に言ってしまうとそれを見てパクったとしか。
【天魔・雷属性】黒鳶の群雲★……初公開:第265話
強い電流を含み、そこから雷撃を発することも可能な黒い雲を生み出し、それを使役して操り敵を攻撃する魔術。要するにニンバスの得意技である黒い捕食者と全く同じであって、かつて見た術をファインがそのまま真似しただけである。ニンバスが術士を本分とせず、ファインは術士を本分とするという部分はあるにせよ、歴戦のニンバスの切り札をあっさり模倣してしまう辺り、やはりファインは術士としての腕がちょっとおかしいらしい。
【天魔・光属性】光魔の斥★……初公開:第265話
斥力を司る光の魔力を用いて、自分の体をある方向へと吹っ飛ばす魔術。空中戦、宙空戦において体勢が整わず、そんな中で危機的な状況に陥った時に、強引に我が身を逃がすために使う魔術である。天上界という特殊な環境下においては、爆風などによる手段で我が身を逃がすよりも、より直接的な物理的な力を受けて体の位置を変えるこの術を用いた。自分に対しての痛みもそれなりに伴うようだが、捨て身の戦い方に慣れているファインにとってはいつものこと。
【天地魔術・闇光属性】引斥球……初公開:第265話
引力を司る闇の魔力と、斥力を司る光の魔力の合成術。白と黒の入り混じった魔力球体を生み出し、まずはそれが生み出す引力であらゆるものを引き寄せ、引きつけるだけ引きつけたところで引力を斥力に切り替えて、至近距離で突き返す強い力で殴り返す魔術、と例えることが出来る。敵の魔術などの方向を歪めさせ、あわよくば敵を物理的な力で殴ることも視野に入れることも出来る、攻防一体たる有用性の高い魔術と言えよう。
【地術・火木属性】炎林に注ぐ災★……初公開:第265話
サニーが見せた焼き落つ枝をそのまま真似した魔術なので、詳細は後述に譲るが、どうにもファインは自分で術を咄嗟に編み出す発想力の引き出しが切れると、誰かしらの術をそのまま真似る形で頂くようだ。元より思いつきで魔術を編み出し、実戦で即座に実行に移してしまえる辺り、イメージ力にも魔力の扱いにも長けている裏打ちでもあるのだが、普通はそう簡単にそんなこと出来るものではないはずである。
【地術・土属性】巨獣の岩殻★……初公開:第265話
膝を抱えて丸くなった自分の体の周りに、巨大な岩石の球体を纏い、回転しながら相手に突撃する魔術。要するに、タルナダの必殺奥義をそのまま頂いた魔術である。岩石を纏っている間は敵の攻撃も概ねはじけるし、岩石球体を爆裂させた際に飛散する爆片にも威力があるため、豪快な見た目に見合って叶えられる効果は高い。
【天魔・光属性】過重熱閃……初公開:第265話
突き出した掌から巨大な光の熱閃を放ち、敵を焼き尽くす大技。言わば重熱線の上位魔術とでも言える立ち位置で、威力もその規模も重熱線を遥かに上回る。変わったのはそのスケールだけで、本質的には魔力の出力ぶりが段違いというだけだが、名を変える価値があると言えるほどには重熱線を上回る威力を発揮している。
【天魔・水属性】音速の没水☆……初公開:第266話
大きな水の塊を砲弾のように発射する魔術。敵にぶつければそれなりの重みを与えてダメージをもたらすが、単に攻撃する目的であれば、同じだけの大きさの氷塊でも放った方がよほど有用。天上界という特殊な環境下で、敵にぶつけてダメージを与えると同時に、あまり遠くには逃がさないという意図も込めてファインがチョイスした術として日の目を見ることになった形である。
【地術・火属性】悪事穿ちの精霊★……初公開:第266話
無数の火の玉を生み出して、それを使役し敵に迫らせる魔術。何度もミスティに使われて、苦しめられた術である寂しがりやの悪霊と同じものであり、術の名はファインの性格に合わせて変えられた魔術である。
余談だが、ファインが他人の魔術を真似して使うことの多かったサニーとの最終決戦だが、この魔術が一番真似しづらかったらしい。事も無げにこうした魔術を連続使用していたミスティだが、そんな彼女の魔術を模倣してみたファインは、改めてミスティは術士として自分よりも上の人なんだなと後で回想することになる。
【天地魔術・水風雷光火土木闇属性】終魔術……初公開:第266話
サニーとの戦いに決着をもたらさんとしたファインの最終奥義。しかしその魔術に一切の攻撃力は無く、敵の魔術に抗う力こそ孕むものの、対象にまで届けば敵の体を破壊するのではなく癒す、その本質は治癒の魔術である。
治癒の魔術にこそ最も秀でるファインによる、全属性の魔力で相手を包み込み、外傷や内傷はおろか、精神面においてその者を苛む痛みにすら手をかけ、健常な肉体と精神へと回復させるという人智を超えた効果を持つ。その術がもたらす想像を絶した安らぎによって、受けた者が意識を奪われ眠りについてしまう副作用があるのだが、それが結果的にサニーとの戦いを完全決着をもたらす副次効果としてもはたらいた。互いの生き死にによる戦いの決着を好まないファインという術者においては、まさしく究極奥義とも言える魔術だろう。
※XYZという酒が実在する。ファインは自分だけの発想でこの魔術を編み出して名をつけたようだが、どことなく母スノウの術の名の由来に関連性があるのは奇しくもなる話である。
<スノウが使用したもの>
※術の名に酒に関わる単語が含まれている傾向が強い。
【天魔・光属性】天駆ける光刺……初公開:第183話
突き出した両手から熱光線を放つ魔術であり、ファインの重熱線やミスティの遺作照らせし華光と同じもの。まだ若い二人と比べれば、少々こちらの方が威力でも勝るかといったところである。練達の術士三人が、いずれも会得し愛用している魔術という側面からも、こうした速く大きく強い光線砲撃の魔術は、戦闘においておおきなはたらきを為す技であるということだろう。
【天魔・風属性】血塗られた風車……初公開:第183話
両手に端を発する、巨大な三日月形の風の刃を生み出す魔術。規格外のサイズである三日月刀を振り抜くのと同じ要領でそれを振るえば、あらゆるものを両断する巨人の刃の如く大きな攻撃範囲を持つ。空中戦では敵との距離を縮められる機会も限られるため、大味すぎるほどの巨大な武器で敵を切り裂きにかかるぐらいでも、むしろちょうどいいぐらいなのである。逆に地上戦でこの魔術を使うのは、隙が大きくデメリットが目立つ。
【天魔・水風雷光属性】楽園の幻……初公開:第192話
スノウが行使する治癒魔術の中でも、自分の扱える全属性の魔力を用いた特別強力なもの。水の魔力で消毒を促し、風の魔力で鎮痛効果を為し、雷の魔力で傷口や骨の軋みを正し、光の魔力で安らぎを与えるという、天人が扱える魔力を総動員して行なうそれは、身を預ける者の体を一気に全快状態へと近付けんとする。術者スノウが魔術の扱いに特に秀でる人物であることもあり、その効果のほどは、戦時中に施すという緊急的な使い方でも、継戦能力をそれなりに回復させるほど大きな効能をもたらす。
【天魔・水風属性】野を満たす雨……初公開:第193話
スノウのとっておきの魔術の一つ。端的に言えば嵐を呼ぶ魔術、天候操作の秘術である。
これによって降り注ぐ雨や吹き荒れる風は、スノウの水と風の魔力をふんだんに含んでおり、それは他者の魔力にまではたらきかける。つまり、対を為す火や土の魔力を幾許か打ち消しにかかり、同属性の他者の水や風の魔力に力を与えるということ。天人と地人が戦う戦場下においては、敵の扱う火と土の魔術の威力を抑え、同時に味方の扱う水と風の魔術をサポートする効果を戦場いっぱいにもたらすということである。風雨がもたらす戦場への影響もさることながら、味方である天人陣営にとっては明確に有利な環境を作るという、大規模かつ反則級の魔術と言えそうだ。
【天魔・雷水属性】潟を駆ける稲妻……初公開:第194話
水面をあまねく駆け抜ける稲妻を落とし、広範囲を攻撃する魔術。威力を等しく拡散させることを主体においたその稲妻は、仮に直接敵に当てても威力が期待未満らしく、水面を駆けさせての広範囲攻撃がこの魔術の前提にある。その性質上、野を満たす雨によって戦場を水浸しにしてからの行使が殆どであり、他にこの魔術を使うシチュエーションがあるとするなら、海や湖などの水際での戦闘ぐらいだろう。
【天魔・水属性】舌爛れの水害……初公開:第194話
沸騰するほどの熱湯を大量に生み出し、それを津波のように敵へと迫らせる魔術。水圧による威力もさながら、触れれば火傷は確実の熱湯津波が、広範囲攻撃かつ致命的な威力を持つという、非常に恐ろしい魔術の一つである。
ちなみにその水温は、氷を作る為に水温を下げるのと逆のことをするだけなので、火の魔力を使えないスノウでもそうしたことが出来るという理屈らしい。ただ、水温を過剰に上昇させることは、水を凍結させるよりも多くの魔力を費やすらしく、多量の水を生み出しつつ水温も沸騰級まで高めるというのは、天人術士の中でも随一たるスノウだからこそ為せる至難のこととされる。
【天魔・風属性】竜骨破りの大刃……初公開:第221話
術者のスノウの体よりも何倍も大きなスケールの、巨大な三日月型の風の刃を放つ魔術。風の刃を飛ばす魔術は、天人の戦闘術士達の間ではポピュラーな攻撃方法だが、そのスケールを並々ならぬものにしただけのものである。
先述のとおり、空中戦では敵との距離を詰められる機会が少ないこともあって、すなわち飛び道具も、離れた相手を小さな的と見立てて当てねばならないものであるのが常。過剰にスケールアップされたような風の刃には無駄も多いが、飛び道具を敵に当てにくい空中戦においてはその大きさも合理的なのである。
【天魔・風属性】難破船の死出航空……初公開:第221話
大爆発を起こす魔術。熱や爆片などの二次産物がないため物理的な攻撃力は見た目未満だが、それでもその爆発の規模ゆえ、敵を大きく吹き飛ばすことは可能であり、攻撃手段としては充分に活かせる。ただ、攻めに使う魔術なら他にもっと使えるものがあるし、スノウがこの魔術を使うのは、空中戦において体勢を崩された上での危機的な状況を迎えた時などに、それを逸するため使用するというのが概ねである。
【天魔・光属性】魂の箱舟……初公開:第228話
自らの魂を我が身から離れさせ、誰かに継承させるための魔術。完遂と同時に術者が命を失う性質上、生涯において一度しか使えぬ秘術である。魂は魔力を生み出す最大の触媒であり、それを受け取った者は魂の元の持ち主が生前使えていた魔術を使えるようになる。カラザとの戦いに敗れ、自らの命がもう長くはもたないことを悟ったスノウは、この術で以って自分の魂をファインへとささげ、生涯かけて培ってきた自分の魔術を含む様々なものを愛娘に託す形となった。
<ミスティが使用したもの>
※ジャグリング、獣を躾ける鞭、氷上の舞姫と、芸を連想させるような魔術の名は、カラザの付き人として旅芸人をしていた半生に由来する。また、隷の字を含む魔術の名は、死を連想させる字を含む術を多く扱うセシュレスの影響を受けてのものである。
【天地魔術・土風属性】風神様の石遊び……初公開:183話
大きな岩石を空中に生み出し、それを渦巻く風に乗せて空を駆けさせる魔術。発動後は、術者ミスティを中心とした空中を、人に当たれば大怪我間違いなしの大きな岩石が、常に凄い速度で飛び回ることになる。敵にとっては攻撃力もさながら、危険な障害物が常に存在すること自体が戦いづらさに拍車をかけるという、敵の数が何人であろうが戦場そのものに大きな影響力を及ぼす魔術と言える。
【地術・火属性】獅獣恐るる躾鞭……初公開:226話
まるで炎の鞭と形容できそうな、両手から発した長くしなる二本筋の炎を操る魔術。鞭による物理的な攻撃とは全く毛色が異なり、触れたものをあっという間に焼き切る高温の炎の鞭は、敵に触れれば火傷を負わせるに留まらず、人体をすっぱりと焼き切るほどの威力を持つ。柔軟に操ることの出来る炎の鞭という性質と、その長さによる攻撃範囲の広さを併せ、この術の発動は敵が接近しづらい状況も生み出すため、攻防一体の術の一つと分類することも出来そうだ。
【天地魔術・水土属性】銀盤世界の小舞姫……初公開:226話
地表を走らせた水の魔力を以って、一気に戦場広範囲の足元を凍らせてしまう魔術。摩擦極小の凍った地面は滑り、跳んだり走ったりすることも容易でなくなってしまう。飛翔能力を持つ術者ミスティには悪影響を及ぼさないため、レインなどのフットワークの軽い敵の足場を乱すために、こうした術はうってつけなのである。
【地術・闇属性】隷の黒籠……初公開:227話
非常に強い重力を孕む闇の魔力を生成し、それを敵に叩き込む魔術。直撃すればそれは敵の全身にまとわりつき、相手の体を本来の十倍もの重さに感じさせるような効果を及ぼす。空中の相手に当てればとても飛ぶことなど出来ないようにさせられるし、地上の相手に当てれば立つことすら困難にさせられるため、当たればほぼ勝ちの魔術の一つである。当てれば勝ちという観点だけで言えば炎でも岩石でも風の刃でもそう、敵の命を奪えれば勝ちには違いないという中、ファインを殺さずに勝利することを密かなる任務と心得ていたミスティにとっては、様々な意味で都合のいい"とどめ"として使われた。
<セシュレスが使用したもの>
※拷問手段や処刑器具、悪魔の名前や屍など、死を連想させる字が術の名に含まれる傾向がある。また、天人の魂を奪うことによって、地人には本来扱えぬはずの魔術も多く使用しており、その魔術の名の末尾には☆を添えてある。
【天魔・雷属性】拡散雷撃☆……初公開:第182話
セシュレスが天人術士の魂を奪って使った魔術の一つ。地上に落とした稲妻が、着弾点から電撃を拡散させて走らせることにより、広範囲を攻撃することが出来る。威力そのものは控えめのようだが、電撃を受けた者は動きが鈍るため、そこに追撃できる前提があるなら敵の致命傷へと繋げられる。一対多の戦いで敵の動きを制限したり、乱戦模様で優勢の流れへ繋げる一手目としたり、用途は広い。
【地術・木属性】逆さ吊り葡萄棚……初公開:第182話
長い蔦を複数まで発生させ、それを操り敵を捕縛する魔術。単に相手の体に巻きついて動きを封じる使い方も可能だが、多くの場合は捕まえた敵を長い蔦で振り回し、硬い地面や建物の角に容赦なく叩き付けて戦闘不能にするため、人間が相手ならその蔦で捕まえた時点で勝ちに近い。蔦の長さもあって攻撃範囲も広いが、武器が相手に見えすぎている上、長いせいで小回りも利きづらいため、敵の力量次第では凌がれやすいというのが少々玉に瑕だろうか。
【天魔・光属性】散光弾☆……初公開:第182話
セシュレスが天人術士の魂を奪って使った魔術の一つ。高熱を含む光の弾を生み出してばら撒く魔術。火球や岩石を飛ばすよりも威力では劣るが、人体に対しては充分な威力を見込めるし、何よりも弾数や速度が他の属性の飛び道具と比べて秀でており、攻撃術としての売りはそこにある。特にセシュレスのような、多くの敵が狙おうと、囲もうとする人物にとっては、攻撃範囲が広い上に弾数を確保できるこの術は使える場面も多い。
【地術・火属性】発火……初公開:第188話
【地術・土属性】岩弾……初公開:第188話
【地術・木属性】樹刺……初公開:第188話
【地術・土属性】岩壁……初公開:第188話
上から順に、地表から火を噴出させる魔術、岩石弾丸を飛ばす魔術、地面や壁面から突如敵を突き刺す太い枝を生じさせる術、岩石の壁を作り出す魔術。セシュレスにとっては本来、術の名をつけるにも値しない、息をするのと同じだけ簡単に発動させる簡単な魔術である。ファインとの戦いの序盤、精神的な揺さぶりをかけるために、自分は一歩も動かずに戦って見せるという戦い方を選んでいたセシュレスは、そのためそれなりに集中力を研ぎ澄ませて戦っていたため、各魔術の発動にあたって、思わず、それらの術の名を短く使って口走っていた。
【地術・闇属性】影縫い楔……初公開:第188話
引力を司る闇の魔力を楔型で生み出し、それを投げつけて地面や壁に突き刺す魔術。その黒い楔型の魔力は、他者の魔力を引き寄せる力があり、セシュレスに向けて放たれた魔術を自分に向かうように曲げてしまうため、術者セシュレスは敵の魔術を凌ぐことが出来るのだ。相手が術士でなければ使い所の無い魔術だが、対術士の戦いにおいてはこの術一つで多くの攻撃を無力化できるため、かなり有用な戦闘手段となる。
セシュレスは暴食王の黒球という、もっと大規模に敵の魔術を引き寄せる魔術も行使できるのだが、そちらの方が規模も影響範囲も大きいぶん魔力の消費も激しい。敵が少数の場合は影縫い楔、敵が多数あるいは弾数の多い攻撃を放ってくる場合は暴食王の黒球を使用する、と使い分けているようだ。
【天魔・雷属性】雷神の鉄槌☆……初公開:第188話
巨大な稲妻を上天から真っ直ぐ落とす大魔術。ただそれだけの威力重視の魔術であり、そのぶん直撃した時の決定力は凄まじく、無防備な人間に当たれば一瞬で消し炭に変えてしまえるだけの熱と電力を持つ。
セシュレスが天人術士の魂を奪って使った魔術の一つだが、魂の持ち主であった天人術士の使えた術の一つには含まれていない。雷の魔術を使えるようになったセシュレスが、その場で編み出した魔術である。地上から即死級の火柱を上げる魔術、火炙りの大樹を持つセシュレスにとっては、上天からそれに匹敵する破壊力を持つこの術がちょうど対を為す形になり、敵の視野に合わせて使い分けられる利点があるようだ。
【地術・火属性】魔女を狩る歪の火……初公開:190話
鉄砲水のような勢いで発射される、特大の火炎砲撃を掌から放つ魔術。元より絶大な魔力を生み出せる術士であるセシュレスが、火力重視で放つ魔術ということもあり、そのスケールの大きさと威力は、ファインが決死の想いで発射した砲撃魔術をも押し切るパワーを持つ。威力とその攻撃範囲の広さにしか売りのない大味な魔術だが、暴力的な破壊力だけでその有用性を主張する大技であるとも形容できる。
【天魔・光属性】神の裁き☆……初公開:222話
セシュレスが、天人ブリーズの魂を奪って使った魔術の一つ。術者自身が神であるかのような術の名から察するに、生前のブリーズが使っていた魔術をそのまま頂いたものであるとわかる。
大きな獣も呑み込めるほどの太さを持つ、巨大な熱光線を発射する。凄まじい威力とスケールを誇る大技だが、つまりそれを生前使えたブリーズの、術士としての力量を証明するものでもある。そんな人物の魔力と術を、元より術士としてあまりに有能だったセシュレスが獲得したというのだから恐ろしい話である。
【天地魔術・雷火属性】のたうつ煉獄☆……初公開:222話
上天から多数の稲妻を降らせる魔術。さらには稲妻の着弾点からは火柱が上がり、その炎が術者の意のまま蛇のように頭を曲げ、敵に襲いかかるという包囲攻撃にまで繋げられる。攻撃範囲の広さから、敵の動きを制限する牽制用としての使い方も可能でありながら、その後の逃げ場の少ない追撃にまで繋げられるという、敵の数がいくらであっても関係ない有用性を持つ。
天人ブリーズの魂を奪い、雷属性の魔力を使えるようになったセシュレスが、新しいその魔力と自分が元より使える火の魔術を融合させて生み出した魔術である。術の名も、セシュレスの命名傾向に沿っているのはそのため。
【天地魔術・雷火属性】地獄に降る稲妻……初公開:222話
稲妻を降り注がせ、その着弾点から広く拡散する火の手を上げる魔術。のたうつ煉獄とは異なり、敵の足の踏み場を失わせるほどの炎に包まれた地上広範囲を作ること自体が目的であり、その火の手が雨が降りしきる戦場に溜まった水溜りの上にすら上るほど。雷の魔力を借りて水面上をも魔力が伝導しやすいようにしているらしく、単に火の魔力をばらまく以上にその効果は高いようだ。言うまでもなく降り注いだ雷そのものにも威力があるため、それによって隙が埋まりやすいことも利点の一つである。
<アストラが使用したもの>
【地術・土属性】世界騒霊の覚醒……初公開:199話
大地震を引き起こす魔術。凄まじい立て揺れを起こすその震度も壮絶だが、最も特筆すべきはその影響範囲である。ホウライの都を攻め込む入りに発動させたこの魔術は、広い都全体にまでその揺れを及ぼし、自分達の参戦を残存する味方に知らしめると同時に、傷つけられた都の建造物を倒壊させる効果まで及ぼした。大きな地震は戦闘時にも敵の足元を崩す効果をもたらし、一方で尋常でない体芯を持つアストラ自身の体の軸は乱れないため、白兵戦においても大きなアドバンテージを得ることが可能である。
術士としてより武人としての強さが本分であったアストラは、この魔術を含めても習得している魔術が少ない。手の届かない空中の敵を引き寄せる魔術や、この術のように多数の敵の足元を挫く魔術など、体一つでは難しい勝利を得るための魔術を、数少ないレパートリーとして得ている形である。炎を吐いていたのも実は名も無き魔術なのだが、それも複数の敵を相手取りやすいように習得したサブウェポンの一つである。
<カラザが使用したもの>
※原種・蛇族であるせいか、術の多くには蛇を連想させる単語が含まれている。切り札とする4つの魔術には、特別的に季節を意味する単語が含まれている。
【地術・火属性】炎天夏……初公開:192話
カラザの大魔術の一つ。火の魔力の超凝縮体であるものを空に放り投げ、天高くに到達させたのちその魔力を解放させて大爆発させる魔術である。
膨大なエネルギーを以って為す大爆発は、地上広範囲に爆弾をばらまくような勢いで火の手を広げさせ、たった一人の術士の手によってのこととは到底思えぬほどの火の海を作り出す。雨を浴びても消えぬ勢いで広がるその大火災は、ホウライの都全体が数回の発動でほぼ全壊状態になるほどだった。あまりに殲滅力が高すぎるため、戦争においての行使は味方の巻き添えも免れない側面があり、絶対的な破壊力を持ちすぎているゆえに、カラザも使用をためらう恐ろしい秘術である。
【地術・木土属性】飛びかかる土壌……初公開:193話
植物の生命エネルギーを内包させた土の塊を投げ、好みのタイミングでそこを起点に、敵を貫く先の尖った太い枝を急成長させる秘術。例えるならば、敵を突き刺す槍を発射してくれる特殊な弾をばらまくような術とでも言えるか。基本的には土の塊を上空に放ち、空の敵を貫く用途で使う魔術であり、術者カラザにとっては空の敵に対する基本攻撃手段の一つと言える。
【地術・火属性】空に這う炎……初公開:194話
渦巻く火炎、言うなれば炎の竜巻を生成する魔術。地表から火柱のように、高くまで届く火炎竜巻を生成する一方、その中心には術者カラザが悠々と立てるだけの小範囲があり、単なる火柱生成のような攻撃手段としても、あるいは自分の周囲を炎でいっぱいにして何者も近寄らせぬようにする防御手段としても活きる。さらには最後、火炎の渦の径を膨れ上がらせて拡散させることにより、広範囲を焼く形で締め括ることが多く、総合的な攻撃範囲もそれなりに大きい。
【地術・闇属性】闇の繋ぐ宿縁……初公開:199話
他者の魂を引力を司る闇の魔力で捕え、自らに取り込む魔術。霊魂奪取の残酷さはカラザも熟知しており、この魔術をカラザが使用することは、彼自身の価値観のせいもあって殆どない。作中においては死したアストラの魂を入手するために使用されたが、それは気心知れた友人が相手であったことと、加えてそれが事切れた後だったからの特別な例。術の名も、自らと魂を共にするだけの間柄だと信じられる相手にしか使わない、という意図を込めてつけられている。
【地術・土属性】栄華の秋落……初公開:219話
カラザの大魔術の一つ。
地面を切り出すかのように、四角形頭の岩石角柱を地表から乱立させるという、地形そのものを意のままに操って変えてしまう大技である。敵の立つ場所の形が変わることから戦況への影響力の大きさは当然として、高低自在に調整できる角柱は高所への到達手段としても有用であり、空の敵に地を足に着けたまま接近できる一因ともなる。角柱そのものが速度を持って上昇するだけでも、高所の敵を殴り上げる武器になり得るわけで、この術がもたらす術者への恩恵は、いかなる状況でも計り知れない。紛れもないカラザの切り札の一つと言える秘術である。
【地術・闇属性】時流冬結……初公開:254話
カラザの大魔術の一つ。引力を司る闇の魔力を我が身に纏い、擬似的に身体能力を超強化する魔術である。理屈は"体を動かすに際して体をその方向に闇の魔力で引っ張る"、"傷を負いそうになっても引力で以って筋肉の断裂や骨折などを認めない"など、引力という物理的な力をもたらす闇の魔力で、ふんだんに自らの肉体が強い攻撃力とタフネスを得ているようだ。
成功している限りは、擬似的にだが人智を超えたレベルの筋力を得た上で、いかなる攻撃を受けても壊れない体を実現できるが、闇の魔力で加えるべき力の方向が絶えず刹那単位で変わるため、それを維持することは極めて困難である。カラザですら、アストラの魂を得て二人ぶんの魂が生み出す魔力で以ってようやく叶えられた(つまりそれまでは考案しつつも理想論の中だけに留まっていた)魔術であり、これを見たファインがのちに模倣しようとしたこともあった(上記の崩呪纏い)が、彼女ですら完全には模倣しきれなかった。強くなる上に死ななくなるという、戦場においては理想を現実にする究極魔術の一つと言えるが、そのぶん実現は余程の力量がないと不可能なのである。
<サニーが使用したもの>
※実は殆どが自分で編み出した魔術であって、母が生前に使っていた魔術をそのまま頂いたような例はさほど無い。自分の素性を明かす前は、接近戦の得意な格闘家を装うような振る舞いだったサニーだが、実は術士としての力量も、生粋の術士ファインや天才術士ミスティに迫るほど高いのである。
【天地魔術・土風属性】宙界の旋者……初公開:第265話
自分の周囲広範囲を旋回する岩石を生み出し、常に飛び回る武器とする魔術。ミスティの使用した上記の魔術、風神様の石遊びとほぼ同じ術である。岩石を風に乗せる形で旋回飛行させる魔術なのだが、大気も重力もない特殊な環境下であったという側面もあり、本来あるはずのその二つに邪魔されることのない岩石が、本来以上の速度で宙空を駆けるさらに危険な術となった。宙空戦では速く小回りも利くファインが、回避できずに岩石のヒットを許してしまった一因もそこにある。
【地術・木火属性】焼き落つ枝……初公開:第265話
人を貫ける小槍サイズの形状なる枝を無数にばらまき、さらにそれを発火させた上で敵に迫らせる形で、炎の槍の雨を降らせるかのような攻撃を仕掛ける魔術。弾数が多い上に、一つ一つの燃え盛る枝が、当たれば敵の体を貫き、内からも外からも焼くという致命的な威力を持つ、極めて高い殺傷能力を持つ魔術である。
実は練達の術士であるサニーをしても、最近ようやく実戦で使用に耐えるよう制御が利くようになった難しい術なのだが、これを一度見たファインがあっさり真似してしまったのでレベルの高さがわかりにくい。模倣された際はサニーも驚愕していたが、それだけ天上界での戦いは最高峰のものだったのである。
【天魔・光雷属性】電光大閃……初公開:第265話
ファインもミスティもスノウも使う、特大の破壊光線を放つ魔術。速度も威力も高いこの手の魔術は、やはり高次の術士が独自で勝手に辿り着いて愛用するほど便利なようだ。
サニーの場合は雷の魔力も内包させることで、熱と破壊力をさらに向上させているが、普通の術士が相手ならそこまでせずとも、充分に敵の防御も突き破って死に至らしめられるだけの威力があるので、多くの場合はそれすら余計な付随である。相手がファインという化け物級の術士であったため、それだけの破壊力を孕ませていたことにも大きな意味があったが、普通は、俗な言い方をすればオーバーキルの無駄が多い術と分類されるべき。他者の使う魔術に形こそ似ていても、派手好きあるいは容赦なしのサニーの性格がよく出た術であり、同じような術でも根幹には個性の差があるということである。
【地術・闇属性】衛星捕え……初公開:第266話
周囲のあらゆるものを、自分に向けて引き寄せる強い引力を生じさせる魔術。近距離戦に自信を持つサニーは、距離を取って戦いたがる相手をこれにより引き寄せる戦法も選ぶことが出来る。作中において使用したのは天上界だったが、地上における戦いでも、地に足を着けたまま空の敵を討ち取る手段として有用である。
【地術・火属性】煉獄世界の召喚……初公開:第266話
発した炎を長々と伸ばし、宙に浮かぶ炎の空中迷路のように張り巡らせる魔術。地上戦が不可能な天上界、あるいは空中戦でのみその真価を発揮する術だろう。触れれば体を焼き切る凄まじい熱を持つ炎は、広大な範囲を立体的に敷き詰めていることもあり、敵の動きを大きく制限する。一度発動させれば据え置くことも可能なので、敵をその炎の迷宮に殴り飛ばすなどして放り込むことが出来るなら、それもまた攻撃手段の一つとなる。
【地術・土闇属性】魔人震拳……初公開:第266話
ベースとなるのは"地面を拳で殴って地震を起こす魔術"であるらしく、それを応用し、"拳で殴った相手にそのための魔力とエネルギーを叩き込む"必殺の一撃を叶える魔術に昇華されている。闇の魔力が添えられているのは、その魔力を凝縮させ、触れた相手に余さず伝えるためのサポートに近い。
地震を起こすほどのエネルギーを、直接人の体に叩き込むのだから、相手の体を内から破裂させて粉みじんにしてしまうだけの破壊力がある、まさしく一撃必殺の奥義と言える。これを真っ向から受けて、ダメージこそ受けつつも壊れず死なず、なおも戦い続けていたクラウドがおかしいだけである。ちょっと本当におかしい。
【地術・火属性】皇の落日……初公開:第266話
膨大なエネルギーを持つ火の魔力の凝縮体を一気に破裂させ、業火と凄まじい爆風を生み出す大爆発を起こす大魔術。作中では宙空に据え置いた煉獄世界の召喚の炎を、その起爆剤に据える形で再利用するという効率的手段を用いたが、単体でこの術を発動させることも勿論可能である。威力はどれだけの火の魔力を生み出せるかの術者の力量に比例するが、煉獄世界の召喚という大きな炎を生み出せる地力があるサニーならば、本気でこの術を行使した時に生み出せる最大火力も相当なものだと推測できる。彼女が全身全霊を注ぐなら、恐らくカラザの焦土級大魔術、炎天夏にも匹敵するほどの殲滅力を生み出すことも可能であろうと思われる。
【天地魔術・水風雷光火土木闇属性】新星航路……初公開:第266話
サニーが全属性の魔力を、自身最大の出力で合成して放つ最終奥義。天魔の水・風・雷・光の4属性魔力を合成させた赤い一筋の砲撃、地術の火・土・木・闇の4属性を合成させた青い一筋の砲撃、それを触れ合うすれすれの形で螺旋状に絡ませた特大集束一筋の砲撃として発射する大魔術である。この触れ合うかどうかの非接点が、二筋の魔力の及ぼし合う余波によって白く輝くことで、結果としてはトリコロールカラーの三色砲撃となる。
対象への着弾時点では、全属性が同時着弾する相乗効果によってその貫通力と殲滅力は壮絶なものとなり、あらゆる敵の魔術も本来ならば貫通し、人の体など当然のように跡形もなく消し去る破壊力を持つ。ファインを完全抹消し、過去とは全く違う世界を歩いていく悲壮な覚悟が術の名には秘められていた。最終的にはその秘奥義をも押し返す、ファインの渾身の魔力に屈したが、結果的に術者サニーがこの術で刻もうとした新時代が挫かれたことは、後のことを思えばきっとその方が良いことだったのだろう。三色を彩るその超砲撃の全容は、天人と地人と混血種という3つの血族が共存していくべき新時代を暗示している部分もあったのだが、それはサニーがファインを抹消しなくても追いかけられる未来である。
【天地魔術・水風雷光火土木闇属性】崩界……初公開:269話
泰平の世を目指す中で、存在そのものがあってはならぬとされた天界を、無きものにするためにサニーが発動させた大魔術。大気を含む空間そのものなど、天界を構成したあらゆるものに、彼女の絶大な全属性の魔力ははたらきかけ、打ち消し、文字通り天界そのものを、全く存在しないものへと変えてしまった。
超極論、この規模を何倍にも何倍にもすれば、世界そのものを抹消することも出来るのではないか、と理論的には考えることも出来る、ちょっと空恐ろしい魔術かもしれない。もっとも理論上の時点で、そんな魔力を生み出すことなどいくら術士を集めても到底足りないとわかるので、想像するだけに留めておいてよい。あくまでこの魔術を成功に導けたのは、広くはあるも有限の空間であるのは確かな天界が対象だからであり、一方で、小世界とはいえそれを一人で完全消滅まで導いたサニーの力量の高さがうかがえる程度の話である。




