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学校の管理人2

「一人のどこにでも居る、ちょっと話好きの男の子が体験した話だ。彼は、いつものように食堂でご飯を食べてたんだ。その日も何人かでぺちゃくちゃ喋りながらご飯を食べていたんだが、ふっと足を誰かが触った気がした。彼は隣に座っていた友人たちにお前らのうちの誰か、俺の足を触っただろと言ったんだが、その誰もが触っていないと言うんだ。彼は腑に落ちないものを感じながら、でも話好きの彼のことだ。すぐにその話を色んな人に話しまわったんだ。彼の話は段々と広まり、それにつれて自分も触られたと言う人が増えてきた。食堂に行くと謎の手に触られることがある」


鏡君は説明をし終えたようで、私の話を食い入るように聞いていた。

「七不思議の一つ、食堂の机の下の手」


私は光の中から現れた両手にポケットに入っていた紙とペンを渡す……が、彼は受け取れない。なぜなら、その両手には黄色のあやとり紐が複雑にかかっており、その紐は箒を形作っている。


「……えーっと、この方が今話してくれた手だよね?」

太郎君が戸惑っている。空ちゃんと鏡君も少しぽかんとしている。まぁ、彼らが抱いていたイメージと違うのだろう。

「先輩、この人ってこんなにおちゃめな感じの人だったんっすか?」


風ちゃんは鏡の中までは入れないが、それ以外であれば校舎のどの廊下でも移動できる。まぁ、何かの拍子に見たことがあるとしても不思議じゃない。

「もう箒はいいから、紙とペンを受け取れ」

私は強制的に彼の手からあやとり紐を奪い、紙とペンを握らせた。


『いきなり呼び出されて、あやとり紐を奪われて一体何なんだよ。クソ』

いつもの達筆。

「お口が悪い……口じゃなくて、文面が悪いと言ったほうがいいのかしら」

「文面……だな」

空ちゃんの言葉に鏡君が返す。


『大体だなぁ、お前には会いたくないって』

「じゃあ、次の話ね!」

手の言葉を無理矢理遮った。手は何やら言葉をガリガリと音をさせて書いているが、まぁ所詮は筆談だ。無視してもうるさくない。怒った彼が殴る可能性が無いわけではないが、何だかんだ言って暴力をふるわれたことは無いので大丈夫だろう。


「これはとある保健室の先生が体験した話。放課後、仕事をしていたその先生はカーテンで仕切っていたベッドの中から何やら話す声がするのを聞いた。不思議に思った先生は、バッとカーテンを開けたんだ。でも誰も居ない。ベッドの上も綺麗に整えたまま、でもまだ話す声が聞こえるんだ。気味が悪くなった先生は他の先生に相談した。しかし取り合ってもらえず、結局彼女は毎日聞こえるようになったその声のせいでノイローゼになって辞めたんだ」


いつの間にかガリガリという音は止んでいる。

「七不思議の一つ、保健室の声」


他のみんなと同じように光が現れ、そして消えるのだが、彼は如何(いかん)せん声なのだ。

「お、ここが例の校舎か?」

なんて、何も無いところから声だけが聞こえてくる。


「え、居るのですか?」

「居るって言うより……んー、何て言えばいいかなぁ。俺的には空気に溶け込んでるって感じ。聞いてるほうがどう聞こえるかまでは知らんが」

『まぁ俺に一番近い存在だと思ってくれればいいんじゃねぇか?』

手が補足する。


「お?

お前がいつも管理人を困らせてる手か。まぁ確かにそんな感じだな。こう、そこにあるけど触れないし見えないみたいな……この手だって、手以外の部分は見えないけど、人間に不可能なくらいに手を広げたりねじったりできないだろ?

つまり見えないし触れないけど手以外の部分もあるってことだ。俺はそれの声バージョンだと思ってくれたらいいかもな」


「なるほどっす! アタシは頭が悪いんで分からなかったけど!」

全然、なるほどではじゃないか。

風ちゃんに苦笑する声の気配が伝わる。


「これで七不思議全員が揃った……のか」

鏡君は嬉しそうな、悲しそうな、複雑な顔で言う。

「揃いましたね」

「今日初めて七不思議の話を聞いたけど、揃ったね」

と、空ちゃんと太郎君。


「あとは一つだけっすね」

『じゃあ、次は最後の話だな』

「そういやお前の話は聞いたことないな」

みんな、最後の話を求めて私の方を見る。……目がない人達も居るが。円で言うと丁度、私が円の中心で、他のみんなが私を囲むようにグルッと円周上に立っている感じだ。……声は姿が見えないからどこに居るか正確には分からないが。


「七不思議の七つ目は語られないのが普通なんだよ。七つ目は謎の七不思議として語られるんだ。みんなに話すのは初めてかな。少し長くなっちゃうけど……。話そうか、最後の七不思議を」


私は目をつぶって息を吐いた。そして、吸う。勘違いしている人も多いが、深呼吸は息を吐くのが先なのだ。

ゆっくり目を開き、そして口を開いた。


「昔、不思議なものが見える少女が居た。彼女は好奇心のままに色んなものを見て、聞いて、関わった。彼女はある時、自分が通っている中学校の七不思議を知りたくなった。六つ目までは噂で聞いたことがあるが、七つ目だけはどうしても分からない。そこで彼女は考えた。どうすれば七つ目に会えるか。彼女は考えた。それまでの六つは教室、屋上、玄関、廊下、食堂、保健室が舞台だ。ならば七つ目はこことは違う場所のものなのではないか。彼女は七つ目を探すため、校舎内を歩き回った。そして見つけたんだ、七つ目を。彼女は七つ目と話した。仲良くなった。しかし、七つ目はどうしても名前だけは教えてくれない。その理由も聞いたが好奇心故に、彼女は最悪の選択をしてしまう。彼女は先ほども言ったが、俗に言う霊力というものが非常に高かったんだ。それこそ、この学校全部を乗っ取れるほどに。彼女は七つ目を乗っ取った。名前だけ知って、その後に体を返そうと思ったんだ。悪戯心はあっても、悪意は無かった。しかし、彼女は七つ目の名前を知り、その名前を呟いてしまった。彼女より霊力が低かった七つ目は消え、彼女が新しい七つ目になった。彼女は混乱した。しかし、前の七つ目の記憶は彼女の中にちゃんとあった。すべきことは分かった。七つ目は、他の七不思議の面倒を見ること、七不思議を守ること、そして七不思議がもし終わる時、こうして語ることが仕事だった。彼女は一生懸命それをした。最初は償いだった。でも彼女は段々と楽しくなってきたんだ。学校の管理人とは、学校そのもの……学校を擬人化したようなもの。七不思議の面倒を見て良いが、親しくし過ぎてはいけない。ましてや名前も付いていない七不思議に名前を付けるだなんて、話されることで生まれた七不思議の存在を少しでも歪めるような事をしてはいけなかったんだ。彼女が気づいた時はもう遅かった。消滅は時間の問題だった。彼女は自ら七不思議を消す一因を作った。それが彼女の……私の大きな罪」


「……七不思議の一つ、学校の管理人」


空の闇がポロリ、と剥がれた。まるで剥げかけたペンキを剥がすようにポロリと。

みんなでそれを見つめる。

闇の向こうに見えるのは、光。きっと、頭上に広がる闇が全て剥がれた時、私達は消える。きっと、この鏡の世界ではない方の学校は明日も時を刻み続ける。


「正直まだ信じられないけどさ、毎日一緒にお弁当を食べてくれてありがとう」

「罪だなんて思わないで、名前は嬉しかったです」

「……風ちゃん、好きだ。付き合ってください」

「えっ!? 今、そんな場面じゃないっすよ!?」

『お? 若い奴はあついねぇ!』

「少年よ……このタイミングで言うのか」

……消滅寸前のタイミングでこのグダグダ感。でも。


「それでこそこの七不思議だよね! で、風ちゃん、返事は?」

「えっ……えーっと。……い、いいっすよ」

周りからヒューっと声が上がる。一人はヒューと書いた紙を空中に飛ばしている。

鏡君が風ちゃんに抱きついた。

「ありがとう……」


周りを見ると、もう空は黒い部分の方が少ない。

私達はまた空を見上げ、しかし今度は何も言わない。何も言わなくたって、お互いの言いたいことは大体分かる。

そして、空を覆っていた闇の最後が剥がれ。


闇は無くなった。


間 に 合 い ま し た

何とか今日中に完結しました。長らくお付き合いいただきましてありがとうございます! 執筆中のあれこれは活動報告で話すと思うのでそちらもよかったらどうぞ!

ちなみに完結したので夏ホラーに提出できます! 提出してきます!

誤字脱字、アドバイスなどありましたら、教えていただけると嬉しいです。

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