1話 夏の風
夏風が青葉をなでる、柔らかな日の光がのんびりとした1日の始まりを連れてくる。
今日は世間的に休日の日曜日、小鳥たちのさえずる声の中に少年が一人
彼は世界を知らない
彼は幼い頃から学校にも通わず、大人たちの束縛を受けることなく自由奔放に育ってきた
自分がなにをしたら人が喜ぶのか、なにをしたら人を傷つけるのか
彼にはよくわかっていない
不意に吹いた温かい風が少年の髪を巻き込んで通り過ぎた
『今日はちょっと街まででてみよう』
少年はそう呟くと腰掛けていた木製のベンチを離れて街のある方へ向かって走っていった
私なんかいらない
私なんか誰にも必要とされていない
私なんかいてもいなくても同じ…
少女は賑わう街の中、別にどこに行こうともせずただ自分の居場所を探して歩いていた
家にいても親は仕事が恋人かのようにパソコンにべったりとくっついてまるで電子音と会話しているかのようにただひたすらにキーボードを打ち込んでいた。
学校に行っても親友と呼べるほど仲のいい友達はおらず、放課後も一人で過ごしていたためクラスメートの中ではあまり目立たない立ち位置に立っていた
ふと嫌な熱気を含んだ邪魔な風が彼女の枝毛だらけの髪を巻き上げる
彼女は軽く舌打ちすると髪を手で軽くといて
ペンキの剥がれかかった古臭い木製のベンチから腰を上げスカートを手で払って不機嫌に無気力にふらふらと歩き出した