ありがとう
“「ありがとう」って、字だと、漢字より平仮名のほうが可愛くて 好きだな”
“有難う”
いつか送ったお礼のメールに、キミが返した言葉。
“意味が伝われば一緒だろ”
そっけなく返した俺。
少しの時間がかかって、返ってきた短いメール。
“うん、そうだね”
顔も声も分からないメールだったけど、キミが寂しそうにうつむい たのが見えた。
“まぁ、平仮名ってのは全体的に可愛いかもな”
なんとなく慌てて、取り繕うように送ったメール。
“でしょ! 漢字だとすっきりして見えるけど、やっぱり味気なくなるの”
すぐに機嫌を直したらしく、一瞬のうちに送られてきたメールを読み、笑う。短い時間に落ち込んだりはしゃいだり。そんな君を可愛いと思い、また笑みがこぼれた。
不思議だ。 こうやってメールしてるのに、それじゃ足りなくて。 姿が見たくて、声が聞きたくて仕方なくなる。 思いきって電話してみようか?
いや、今はまだ、やめておこう。
“今度の休みが合ったら、どっか行く?”
どうしようか少し迷って、何気なく、素っ気なくなるように削ったメールを、送信した。そのあとすぐにバイブが鳴ると、急いで携帯を開く。
“ホントにっ? うれしい! 絶対行こうね! 楽しみにしてる”
彼女の笑顔を思い浮かべる。 誰もが振り向くほど可愛いわけでもないし、特別な特徴もないけ ど。 俺にとっては誰よりも可愛くて愛しい彼女。 そこに居てくれるだけで特別な存在。
ありがとう俺の前に現れてくれて。
ありがとう 俺を選んでくれて。
“ありがとう”
誰よりも愛しい君へ。
END