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クローバーの約束
「きっとだよっ!」
「約束するから!」
握りしめたクローバー。
ありふれた三つ葉。
見つけられなかった四つ葉のクローバー。
少年は走る。 少女を乗せた電車は遠ざかる。
追いつけるはずのない、絶望的な距離。
会いに行く事はできない、絶望すら覚えない距離。
「ぜったい、よつばのクローバー、見つけて、会いに行くから……!」
両目に涙を溜めて、少年は力いっぱい叫ぶ。
少女は、泣きながら力いっぱい手を振る。
振り返す少年の手は土に汚れた擦り傷だらけ。
「約束……きっとだよ……大好き!」
少女の声はもう、少年に届かない。
少年は涙を溜めて、けれどけして零す事無く、手を振り続ける。 幼い頃の初恋。 幼いながらに本気だった恋。 今少年のとなりに少女はいないけれど、会える日を信じている。 あの後必死で見つけた四つ葉と、あの時の三つ葉のしおり。 今はそれが少年の思い出。
「きっと、きっと会いに行くよ」
青年は誓う。
「……ずっと、ずっと待ってるからね」
女性は願う。
いつかまた、会える日を信じ続けて。
END