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竜大帝バルトリオン

 

■ 竜大帝バルトリオン

 北米サーバーの管轄地域、〈ウェンの大地〉に登場する〈古来種〉のひとり。善の〈古来種〉による組織、〈全界十三騎士団〉には所属していないはぐれ〈古来種〉である。北米サーバーでは有名だが、他のサーバーではほとんど知られていない。


 〈エルダー・テイル〉というゲームにおける〈古来種〉の役割は、ストーリーの導入部分を担うことが大半である。〈古来種〉の英雄が、〈冒険者〉と協力して困難な試練に立ち向かう。しかし、真面目な性格の〈古来種〉が、〈冒険者〉に協力を依頼するばかりではストーリー展開に幅が作れない。そこで生み出されたのが、バルトリオンである。


 バルトリオンは〈冒険者〉の味方とは限らない。敵の時もあるし、味方の時もある。大勢を救うことに対しては無頓着だったりするが、一方で小さな善行のために全力で挑むこともある。大抵は〈冒険者〉を利用しようとして近づいてくる。それは自分の目的を達成するのが狙いだが、〈冒険者〉側にとっても悪くない話を持ってくることが多い。平気で裏切って笑い飛ばしたりするが、卑屈なところがない。堂々としていて、人間味の強いキャラクターとして人気がある。(もちろん嫌われてもいる)


 バルトリオンは複数のシナリオライターが便利に使って脚色したため、様々な能力を得ることになった。たとえば、シナリオの都合で何度か死んでいるが、その度に何事も無かったかのように復活している。タンク役やアタッカー役、スペルキャストなどの能力が追加されたことで、オールマイティな活躍が可能だ。そのなかでも強烈なのがドラゴンの力で、彼を特徴付ける最大の能力となっている。

 ほとんど1人で行動する彼は、かなり強力な〈古来種〉であり、他の〈古来種〉数人を簡単に蹴散らすことが出来る(その時のシナリオの都合に左右される)。ラスボス候補の1人と目されていた。

 

 バルトリオンは〈大地人〉の母マーシャ=ロウの子、レイモンド=ロウとして生を受けた。10歳になるかどうかの幼さで母を殺され、〈古来種〉として目覚めることになる。

 〈古来種〉として目ざめたレイモンドを引き取ったのは、バルタザール=トリリオンという〈古来種〉だった。バルタザールのもとで成人になるまで幸せに過ごしたレイモンドだったが、騎士団での初陣で師バルタザールを失うことになる。師バルタザールの名を受け継ぎ、バルタザール・R・トリリオンと名乗ることになる。バルトリオンの誕生だった。愛称はバルト。

 〈古来種〉バルトリオンは、騎士の1人としてウェンの各地に派遣して戦い続けたが、その中で自らの出自に秘密が隠されていたことに気が付き、古来種の騎士団を離脱する。


 ……ここまでがバルトリオンの表向きな説明となる。

 バルトリオンの設定やキャラクターにはブレがある。断片的な情報もフレーバーテキストの域を超えないものが多い。人気キャラクターであったため、プレイヤーによる推察や二次創作的な補完がなされた。これに反応した公式の悪ノリによって改変されたものが以下である。


 レイモンドの母、マーシャは狂信的な魔術結社によって殺されていた。

 当時の世界はハーフアルヴに対する強い偏見と差別が色濃く残っていた。血が濃かったためか、ハーフアルヴの魔力適性も現在よりも高かった。迷信を強く信じる村落では、魔女狩り同然にアルヴ狩りが行われ、アルヴ返りを示す舌を切り取られたり、殺される事件も頻繁に起こったという。

 こうした社会情勢への反動から、自分たちの身を守るべく魔術結社が誕生した。しかし、こうした集団は、必然的に反社会的・狂信的にならざるを得なかった。彼らは反抗するだけの力を持っていたこともあるだろう。


 当時の魔術結社は六傾姫の復活を目論んだ。アルヴの血が濃い男女を掛け合わせ、よりアルヴ真族に近い女児を産ませ、六傾姫の憑代(よりしろ)にしようとしたのである。この女児こそマーシャであった。


 だがマーシャは降霊の儀式の前に、結社の村から逃げ出すことを選ぶ。旅先で出会った男性と恋をして、身ごもることになった。この時のお腹にいた子がのちのレイモンドである。

 マーシャは小さな村に身を寄せ、魔法の力を隠し、懸命に働いてレイモンドを育てた。しかし、魔術結社はマーシャを見つけ出し、戻ってくるように命じた。さらにレイモンドを渡すようにと迫る。マーシャは強大な魔法の力で一度は結社の人間を撃退することに成功した。すると結社は暗殺者を送り込み、マーシャの命を奪ったのである。


 10歳にも満たないレイモンドは、母の死を目撃したことで〈古来種〉として覚醒。結社の暗殺者たちを皆殺しにしてしまう。村人はレイモンド少年の力を恐れた。ここに現れたのが、バルタザールだった。

 (しかし、もともとマーシャは〈古来種〉の騎士団に監視されていて、その監視者がバルタザールだったという説もある)


 〈古来種〉の孤児となった彼を引き取ることにしたバルタザールは、騎士にするべくレイモンドに武術と魔術を教えはじめた。

 ここで騎士団のリーダー、メルクリウス=ライトの娘、シャーリーンと出会う。兄弟子ならぬ姉弟子と研鑽の日々を送った。

 生来の強靱な肉体と、高度な魔術適性とを併せ持つレイモンドは、〈古来種〉として一流の実力を磨いていく。


 18歳で騎士の試練を突破したレイモンドは、美しい青年に成長していたという。シャーリーンと2人、初陣を飾ることになった。

 戦闘は大掛かりなもので、騎士団のほとんどが参加することになったという。飛び抜けた活躍をみせるレイモンド、それをよく支えるシャーリーン。しかし、父であり、師だった男、バルタザールが凶刃に倒れることになった。息絶える前に遺言の言葉を聞いたのはレイモンドだけだったと言われる。

 バルタザールの死にはメルクリウスが関わっているのだが、レイモンドはこの遺言でそれを知ったという説がある。しかし、レイモンドはメルクリウスを問いつめたりはしていない。なぜならば、当時すでに恋人でもあったシャーリーンの父親だからだ。

 バルタザールの名を受け継ぎ、レイモンドはバルトリオンとなった。騎士団での仕事は2年と続かなかったという。母親の死の理由と魔術結社の存在にたどり着いたからだ。


 騎士団にシャーリーンを残し、はぐれ〈古来種〉となる道を選ぶバルトリオン。狂信的な魔術結社に乗り込み、リーダーを殺すと、組織を自分のものにしてしまった。

 バルトリオンは情報の重要性を知悉していた。勢力を拡大させ、ウェンの大地を網羅させると、簡便な通信魔術を与えて、魔術結社を自分用の情報網して再構築したのだ。魔術結社の狂信性はなりを潜め、やがて忘れられていった。その裏でバルトリオンは誰よりも早く異変を察知し、誰よりも早く現地に向かうことができるようになった。権力を持つもの達と接触し、持っている情報を駆使して交渉で有利に立ち回るようになった。


 一方で彼が救うのは、現地の〈大地人〉ではなく、魔術結社に関わるメンバーだけだと言われている。結社のメンバーがピンチになれば、必ず駆けつけるとされる。……こうして、バルトリオンの帝国が誕生した。


 バルトリオンは〈大地人〉と共に暮らしている。あるシナリオでは、酒場で陽気に振る舞っていたレイモンドという〈大地人〉がバルトリオンだったことがある。(いかめ)しい鎧などを身につけていない時、彼は〈大地人〉と何も変わらない姿をしていた。


 バルトリオンが善人なのか、悪人なのかを論じることにはさほど意味がない。シナリオライターごとの表現の食い違いが原因ではあったが、それでも彼の人生には数々の陰謀があって、誰も信じることをできなくさせていた。たとえば、バルトリオンの出生の秘密は、母親の特殊性だけではなかった。父親はドラゴンであり、人に姿を変えてマーシャとの間にレイモンドをもうけていたのだ。父との出会いで、バルトリオンは大きな計画の存在を知った。自分が戦うべき敵の存在を知らないことを知った。


 境遇の離れてしまったシャーリーンとのエピソードも複雑である。

 バルトは育ての父バルタザールの死の秘密を彼女には語っていない。しかし、シャーリーン自身が知るように仕向けたという説がある。バルタザールはシャーリーンにとっても師である。父に詰め寄ったシャーリーンだったが、父殺しの大罪を犯してならないとバルトが止め、彼がシャーリーンの代わりにメルクリウスを討ち取っている。あまりにもタイミングが良く、バルト自身に都合の良いエピソードでもあって、プレイヤーには計略だろうと言われている。


 メルクリウスを殺した罪の意識を共有した2人はようやく結ばれ、一女をもうけている。バルトの母から名をもらい、マーシャ=ライトとした。シャーリーンもアルヴの血脈であるため、娘マーシャには高い魔術適性が受け継がれている。


 これもまた、バルトの計画だとする説が濃厚である。

 娘マーシャもそろそろ成人の時期であり、最新の拡張パックで登場すると予想されていた。……六傾姫復活をもくろむ陰謀が、再びマーシャを巡って動き出す時、バルトは敵の存在を知ることになるだろう、と。


 〈大災害〉以後、騎士団に参加していないバルトリオンの消息を知るものはいない。


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