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VS サンタ 3

 ――12月23日 午後23時59分59秒



 ハッと気が付くと、謎の空間にいた。次第に記憶が戻り始め、見覚えのある(、、、、、、)謎の空間だな、と思い直していた。


シュウト:

(またクリスマスってことかな……?)


 すぐに自分を指名した人の姿を見つける。ジンさんはジッと剣を見ていた。近寄りたかったけれど、結界的なものの中にいて、僕は動くことが出来なかった。


シュウト:

「ジンさん」

ジン:

「おう、来てたか」

シュウト:

「その剣って……」

ジン:

「うむ。前に言ってた『未来兵器』とかいうヤツだな。もの凄い性能なんだが、銘もフレーバーテキストもボヤケてて読めねーんだよ」

血塗れのサンタ:

「フォッフォッフォ。未来の記憶は引き出せないからじゃな」

ジン:

「おっ、出たな」


 真っ赤なサンタが気合い十分で登場した。あの赤い色が全部、誰かの血かと思うと凄惨な気分になる。更にパンプアップした体は、タル型が少し崩れて来ていた。ウエスト付近が引き締まって見える。

 そういう変化に気付いているのか、いないのか、まるで無視してジンさんは話かけた。


ジン:

「なぁなぁ、俺にもプレゼントの1つぐらいあってしかるべきじゃねーの?」

血塗れのサンタ:

「どういうことじゃ?」

シュウト:

「ああ、そういえば……」


 シブヤからアキバに引っ越した際、ユフィリアの荷物からミニスカサンタ衣装が、ニキータさんの荷物からサンタ風ビキニが出てきたのだ。紛れ込ませた犯人はジンさんだろうってことにされてしまい、ちょっとした事件になった。まさか犯人が正真正銘のサンタさんだったとは思いもしない。ついでにこの記憶も、ここから戻った残っていないのだろう。


ジン:

「今回勝ったらでいいからさー、この剣、ちょうだい?」

血塗れのサンタ:

「フン。勝てたらの。……と言いたいトコロじゃが、それは未来でお主が手に入れるモノじゃ。ワシがどうこう出来るものではない」

ジン:

「そこを何とか!」

血塗れのサンタ:

「無理なものは無理じゃ。大体、今回は呼び出しておらんのだぞ?」

ジン:

「ん? 爺さんが出したんじゃねーの?」

シュウト:

「じゃあ、どうしてココに?」

血塗れのサンタ:

「その剣の力じゃろう。『時を超える存在』というヤツよ。前回呼び出したことで、この場所を知り、探り当て、自力で現れたとしかおもえん。お主とはよほどの絆、縁で結ばれておるのだろう」

ジン:

「ほえ~。確かにな、握ってると手が熱くなる。良い武器は手の延長みたいに感じるっていうけど、そんな中途半端な代物じゃない。手も足も、全身の全部、『俺』って存在が拡張されて感じる。幻想級でも、こうはいかないだろうなぁ」

シュウト:

「そこまで、ですか……!」

ジン:

「モビルスーツみたいな巨大ロボとまでは言わんが、さしずめ、剣の形をしたパワードスーツって感じだな」


シュウト:

(……そういうことか)


 剣の手元は広く、先端に向けて細くなっていく形状。重心バランス。長さもそうだ。片手・両手共に使い易い長さに違いない。デザインも『機能美が命!』と言わんばかりのシンプルさ。申し訳程度に施された装飾や宝珠にしても、機能に関連しているのだろう。それでいて、機能のみを突き詰めた果ての『余裕の無さ』はなく、むしろたっぷりとした余裕や余白が感じる。作り手の品格などの精神性の現れだろう。

 軽薄な小綺麗さはなく、ただ静かで、しっとりとした重みのような美を備えている。使い手に握られて完成する、あくまでも実用のための芸術品。


 創るのだろう、誰かが。たぶん僕たちが、僕たちの手で、幻想級をも超える『ジンさん専用の剣』を創り出すのだろう。


 唐突に、感慨深いような、それでいて悲しいような、とても複雑な感情に襲われる。何故だか懐かしさや、再会の喜びまで入り交じっている。どうやら僕は、あの剣のことを『未来で』知っているらしい。


ジン:

「ま、これを使っている限り、爺さんに負けるイメージが沸かないのは確かだね」

血塗れのサンタ:

「言ってくれるのぉ。フォッフォッフォ」



 高まる闘気。やがて正面から向かい合う両者。

 ジンが言葉を放った。


ジン:

「だから、なんかくれってば」


 ずるっと盛大にずっこけたい気持ちを、なんとか堪える。


血塗れのサンタ:

「剣はダメだといっておろうが。他に欲しいものを言え」

ジン:

「えーっ? じゃあ、可愛い嫁さん。……いや、まて。土地付きで家ってのも捨てがたいな。交通の便のいいトコで。……う、それだとやはり金って話になるのか?」

血塗れのサンタ:

「……お主はワシに何を期待しとるんじゃ」

ジン:

「いやぁ、靴下に嫁さんは入りきらないかなって?」


 確かに女の子の片足だけ入っていたらと想像すると、かなりのホラーだ。しかも後でユフィリアあたりの片足がなかったら、と思うとゾッとせずにはいられない。


ジン:

「やっぱり宝くじかな~? それでいっか。あ、キャリーオーバーしてるヤツね?」

血塗れのサンタ:

「……分かった。お主のカバンに入れておこう」

ジン:

「やっり! マジで!? ……あぇ? カバン? それってどーゆー?」

血塗れのサンタ:

「なんじゃ、もう始めるぞ」

ジン:

「いやー、そのー、なぜカバンに?」

血塗れのサンタ:

「お主達のカバンは異空間と接続しておるじゃろ。忍び込ませるのに都合がよい」

ジン:

「てことは、魔法のカバンのこと? いやいやいや、現実世界の、宝くじの、キャリーオーバーしてる、当たりクジだってば!」

血塗れのサンタ:

「何を言っておる。あそこはワシの管轄外じゃろ」

ジン:

「は?」

シュウト:

「えっ?」

血塗れのサンタ:

「そも、元いた世界の場合、お主の力ではワシと戦うことはできんぞ」

ジン:

「あっ、そうなの? いや、そうだろうけど……」

血塗れのサンタ:

「まぁ、よい。サービスしてやろう。当たりクジは入れておいてやる」

ジン:

「えっ、いやっ。現実世界に戻れても、たぶんそれは取り出せないような気が……」

血塗れのサンタ:

「では、そろそろ始めるぞ!」

ジン:

「だから、ちょっ、ちょっ待てよ!」

血塗れのサンタ:

「いい加減にしろ、話は終わりじゃ!」

ジン:

「だーっ、俺としたことが、なんて初歩的な……」


 ものスッゴいぶーたれて、下を向いてぶつぶつ言っているジンさんだった。あー、もうどうしようもないなー。


血塗れのサンタ:

「貴様ぁ、ちゃんと構えんか!」

ジン:

「べっつにー、構えなくても楽勝だし」

血塗れのサンタ:

「まさか、手を抜くつもりじゃあるまいな」

ジン:

「ん?  ああ、すまん。ふーっ。……気合い入れ直すわ」


 ああ、ああ。分かった。僕にも分かってしまった。サンタのお爺さんもジンさんと戦うのを楽しみにしていたのだ。1年なのだ。こっちにとっては1月かそこらでも、あちらは1年経過しているのかも。負けて悔しくて、徹底的に鍛え直して、早く戦いたくて、辛抱して、準備を整えて。それなのに、いい加減にされたらたまらないだろう。


ジン:

「ちょっとゴメンな」


 ジンさんは、剣に謝りながら、両手でそっと地面においた。

 首をパキポキ鳴らし、手をプラプラさせる。


ジン:

「なぁる。……かなり鍛えてきたな」

血塗れのサンタ:

「当然じゃ」

ジン:

「前回、楽に勝てたから油断してたよ」

血塗れのサンタ:

「言い訳はせん。負けは負けじゃ。しかし、もう同じようにはイカンぞ」

ジン:

「フン」


 そうして、再び剣を手に。


ジン:

「同じさ。……何度やってもな!」


 ジンさんがゆらめく。

 戦闘開始時のゆらめきには2種類ある。峰越えを誤魔化すためのものか、フルクラムシフトの発動によるものかで、「ほぼ前者しかいない」と教わっている。ジンさんが今やっているものが後者だ。まず滅多にいない、本当の強者による本物の『ゆらめき』だ。


血塗れのサンタ:

「フォッフォッフォ。……では、はじめようかのぉ。」

ジン:

「そうしよう。いくぞ、『XXxX』!」


 ジンさんは剣の名を呼んでいた。たぶん無意識に。正しい名前なのは分かったが、なんて呼んだのかは直後から思い出せなかった。未来の記憶はどうも変な感じにさせられる。扱いが難しい。


シュウト:

(これはアレだな。ドラゴンボールだな)


 オーバーライドで超サイヤ人に、未来兵器で超サイヤ人2的なことになっているらしい。圧倒的な気勢を上げるジンさんに対し、サンタクロースのお爺さんは落ち着いていた。

 どちらともなく戦闘開始。前回のようにエネルギー弾をまとめて叩き込むことはせず、散発的に用いて接近を拒否。サンタ自身も動きながらジンさんの隙を探っていた。当然、ジンさんは接近の一手。背後からのエネルギー弾を見もせずに避けつつ、更に自分の間合いへ。


ジン:

「どわっ!?」


 エネルギー弾を手元に集めると、某作品のライトセーバーのような棒状武器へと変化させ、かなりの速度で振り回してくる。


血塗れのサンタ:

「これこれ、避けるでない。ご自慢の武器で堂々と打ち合ったらどうじゃ?」

ジン:

「ヘッ、こちとら『ビームサーベルでチャンバラできるのはおかしい』とか散々聞かされて育ってんだよ!」


 何を言っているのかは分からなかったが、まだまだ余裕がありそうなのは伝わってくる。たぶんあちらのライトセーバーは、剣で防御しようとすると透過してそのまま切られてしまうタイプの武器なのだろう。

 剣も盾も使わずに連続回避。乱れ撃ちの表現がぴったりに感じるようなサンタクロースの連続攻撃を、それでも躱し続けるジンさん。


ジン:

「あー、ヤバかった~。……んじゃ、終わりにすんぞ」

血塗れのサンタ:

「貴様がな!」


 動きが速すぎるので結論だけ言うと、ジンさんが一瞬速く間を詰め、斬撃を見舞っていた。サンタクロースは咄嗟にライトセーバーで受けようとしていたが、当然のように透過してバッサリ斬られていた。


ジン:

「ケッ、実体剣を使わないからそうなる」

血塗れのサンタ:

「フォッフォ。強いのぉ、お主は強い」


 ちょっと満足そうなサンタさんだった。


ジン:

「時間か。……先に言っておくが。俺にロリコンの趣味はない」

血塗れのサンタ:

「むっ?」

ジン:

「ここでロリ状態の葵が出てこようものなら、お前はここまでだ。これは絶対で、議論の余地はない。ちなみに咲空・星奈が出てきてもお前は終わりだ。繰り返す。俺にロリコン属性はない!!」バッバーン

血塗れのサンタ:

「むむむっ?」


 なんだかとってもダメそうである。ユフィリア・ニキータと出てきてしまったので、次も別の誰かになる可能性は高い。葵さんが出てくるのを先回りして封じたのだろう。言葉の裏を読めば、ロリ状態じゃなきゃ葵さんでもいいってことらしい。


シュウト:

「あのー、クリスマス阻止が目的だったんじゃ?」

ジン:

「まぁ、そうなんだが。……そういえば、コイツさっき地球の担当じゃないみたいなこと言ってなかったか?」

シュウト:

「そういえば」

血塗れのサンタ:

「良いところに気がつきよる」

ジン:

「地球のクリスマスを阻止できなきゃ、あんま意味ないよなぁ」

シュウト:

「なんでそこまでクリスマスがイヤなんですか?」

ジン:

「あのなぁ、恋人同士がセックスする日になっちまったからに決まってんだろ。バブル期なんて12月の寒空に、ラブホの前で行列作って順番待ちしてたってんだから、世も末だろ」

シュウト:

「え~?」


 それは、これからそういうことをしますよ、と宣言しているのに等しい訳で、自分的にはちょっと考えられない。恥ずかしくて耐えられそうにない。『赤信号、みんなで渡れば~』、という心境なのだろうか。


ジン:

「その後、クリスマスにボッチだと恥ずかしいとかで、取りあえずクリスマスだけ恋人作ったりするような風潮ができてさ」

シュウト:

「はぁ」

ジン:

「……てことは、将来的に自分の恋人になるかもしれない子も、とりあえずクリスマスえっちしてる確率が非常に高くなるんだよ」

シュウト:

「あー、はいはい」

ジン:

「そういう悲劇を避けるべく、クリスマス死ね死ね団が生まれた。やがてクリスマスの元凶、サンタと戦う戦士団が結成され、っておい、まだ死ぬなよ!」

血塗れのサンタ:

「むぅ、意識が飛びかけたぞい」

ジン:

「大丈夫かよ、爺さん」

血塗れのサンタ:

「任せておけ、ワシを誰だと思っておる?」

ジン:

「管轄があるなら別のサンタもいるってことだろ。別にアンタじゃなくても……」

血塗れのサンタ:

「お主達に文句は言わせん。それではお待ちかね、『お楽しみた~いむ』じゃ!」


 ついに正式に『お楽しみタイム』になってしまった。もう色々とグダグダだ。


ジン:

「ぷっ」

アクア:

「ん? ……何よ、これは」

シュウト:

「えっ?」

ジン:

「ゲフンゲフン。いや、説明すると、長いんだけどさ……」


 今回はトナカイコスプレのアクアさんだったりした。笑うに笑えないし、どうにもリアクションに困る。アクアさんがこんな奇抜な格好をするとは思わなかった。しかも照れたり、恥ずかしがったりしないのだから凄い。堂々としたもので、逆になんというか、見事だなと思った。


血塗れのサンタ:

「どうじゃ、お主達も『文句』なかろ?」にやり


 どうやらお爺さんは策士だったらしい。


ジン:

「てんめぇ~、謀りやがったな?」

アクア:

「何よ、文句があるの?」ぴしゃり

ジン:

「……いや、ないです。はい」


 勝ち誇ったようなアクアの態度に微笑ましさを覚える。その背後というか頭上というべきかでは、高く響く哄笑がフェードアウトしていった。

 


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