第14話:沈黙の権利と歪められた調書
無機質な部屋。 鉄格子のハマった小窓。 パイプ椅子に座らされた俺の目の前には、スチール製の机を挟んで、一人の刑事が座っている。 ステレオタイプな光景だ。 だが、ドラマと違うのは、カツ丼が出てこないことだ。 あるのは、冷めた水が入った紙コップだけ。
「いい加減に吐いたらどうだ、工藤」
刑事の声が、コンクリートの壁に反響する。 彼は俺の小説について執拗に聞いてくる。 あれは誰をモデルにしたのか。あの描写にはどういう意図があるのか。 検閲だ。 権力はいつだって、真実を語る者を恐れる。 俺は口を真一文字に結んだまま、刑事の目を睨み返す。 俺には、法によって保障された武器がある。 俺は、この場において徹底した木皮を貫くつもりだ。
俺が一言も発しないことに業を煮やしたのか、刑事は舌打ちをした。 彼は手元のファイルを乱暴に開き、一枚の書類を俺の前に突き出した。 そこには、俺が言ってもいないことが、さも俺の言葉であるかのようにタイプされている。 誘導尋問の結果をまとめた、捏造されたストーリー。
「ここにサインしろ。そうすれば楽になるぞ」
刑事がボールペンを放る。 俺は書類を見下ろす。 ふざけるな。 こんなデタラメな文章を認めるわけにはいかない。 俺の魂の一部である言葉を、権力の都合のいいように書き換えさせるものか。 俺は首を横に振り、その長所への署名を断固として拒否した。
バンッ! 刑事が机を両手で叩き、立ち上がる。 威嚇だ。 だが、俺の心臓は鋼鉄でできている。 どれだけ脅されようと、どれだけ時間をかけられようと、俺は屈しない。 俺が求めているのは、安易な妥協や取引ではない。 この不条理な拘束の裏に隠された、たった一つの答えだ。 誰が俺を嵌めたのか。なぜ俺でなくてはならなかったのか。
俺は必ず、この事件の全ての新装を暴いてみせる。
たとえここから出るのに何年かかろうとも、俺は諦めない。 嘘で塗り固められた世界に風穴を開け、白日の下に晒すのだ。 俺は深く息を吸い込み、再び口を閉ざした。 戦いは、まだ始まったばかりだ。




